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投資家の目線で米国不動産を買おう 戸建て編

今日レノべして価値を上げるための居住用の不動産を見てきました。

ずっと私商業用が欲しいと言ってきて、なぜ今さらSingle Family Residence(いわゆる戸建て)物件、見に行ったのかを物件の内容と一緒に詳細に説明していきたいと思います。

物件概要

今日見た物件はこちらの物件、まだマーケットにあります。
https://www.redfin.com/WA/Bothell/20107-96th-Ave-NE-98011/home/287284

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はっきり言いましょう、相当醜い家です(笑
内装もほとんどアップデートされておらず、1968年の建築です。
なぜこんな家がいいの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こういう家こそ、価値を上げやすいのです。

Redfinが英語なので、簡単にスペックを説明します。
✅ 1968年築建築スタイルはSplit Entry
✅ ベッドルーム5部屋、1.75Bath (0.75Bathはシャワーはついているが、バスタブがついていない)広さは200平米強
✅ 学区良し、Bothell High Schoolはかなり人気の学校
✅ ロットが広い(1000平米ほどの土地)、そして静かな通りのコーナーロット
✅ リスティングプライス$649,950
✅ 屋根の一部で水漏れがあったが、売り手がClosingの前に屋根を修理するとのこと(まだ使える屋根なので、一部交換なのか、全て交換なのかはまだ決めていないらしい)
✅ 明日Inspection Reportが出る(売り手の負担)

さて投資の観点からこの家の良いところを伝えていこうと思います。
学区やロケーションなどは明らかに良いので、もう少し物件特有の話をしていきます。

良い点1. 築年数と建築スタイル

1968年というと、築52年と日本ではおそらくあり得ないレベルの築年数かと思います。ですがアメリカでは築52年なんて新しい方です。私の現在住んでいる家なんて築89年です。ここの地区の家はほとんど60年代〜70年代に建てられた家が多いので、割と新しい地区です。
そして1960~1970年代のフロアプランはSplit Entryがとても多いです。
アメリカは建てられた年代によって家のスタイルが変わってきます。
(参照: https://www.thisoldhouse.com/21018307/american-house-styles )
Split Entryはこういう形です。(Google検索結果)
特徴としては入る時に階段を上り、キッチンなどが2階にあるという点です。

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そしてフロアプランはこんな感じ、今日見た家はまさにこれでした。(バスルームが一つ少ないくらい)
そして下の階も同じような感じですが、リビングの下はガレージであることが多いです。

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私はこのSplit Entryが大好きです。なぜなら上の階も下の階も十分な天井の高さと窓の大きさがあり、部分的に貸し出しやすいから。
入った瞬間に上に上がる階段と下に下がる階段で分かれており、下にはドアも設置されています。なので上下のプライバシーが保てる。下の階から直接庭にアクセスすることも可能なので、地下にいるという感じではなく、一階にいるので賃貸にも出しやすい。
もしレノべをするとしたら、まず地下を整えて、簡易キッチンを設置すると、数ヶ月で丸ごと地下が貸し出せるようになりますので、一部コストがカバーできます。そしてその間に上の階の工事が行える。

良い点2. ローンの最大活用が可能

アメリカでの居住用の住宅を買うときは最低頭金3.5%から購入できます。ただこの場合はFHAローンと言って、クレジットスコアが低い人でも初めて家を購入するためのプログラムなので審査が面倒なのと、アップフロントでPrivate Mortgage Insurance(PMI - ローンが不履行になった場合銀行を守るための保険)を払わなくてはいけないのと、月にも数百ドルのMortgage Insuranceがかかってきます。私自身これでローンを組んだことがないので、割愛させていただきます。

そこで多少お金に余裕があってCredit Scoreが高めの人は5%を頭金としてはらうConventional Mortgage(一般の住宅ローン)を組みます。

この5%頭金の仕組みですが、一般的にアメリカで自身の居住用住宅を購入する場合は20%の頭金を必要とします。
頭金が5%でもローンを組めますが、上記のPMIを月々捻出する必要があります。
ではこの物件を5%の頭金で購入する際どのくらいのPMIを支払うことになるでしょうか。

これはその人のクレジットスコアとDebt-to-Incomeに関係してきます。
Debt-to-Income Ratioは月々のローンの支払い(クレジットカード、学生ローンなど)を課税前の収支で割った数字です。
そして支払うべきPMIはこちらで計算できます。
https://www.hsh.com/calc-pmi.html

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このように高いクレジットスコア(760+)あって、DTIが45%以下であれば月々$195のPMIがかかります。そして元本の支払いが20%に到達した時点でPMIがかからなくなるので、右側に7.5年がPMIの支払い期間と書いてあります。

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そして次に大事なのが金額です。
ローンの金額にはConformingとNon-conformingがあります。

Conforming Loan:アメリカのFannie Mae(連邦住宅抵当公庫)やFreddie Mac(連邦住宅金融抵当公庫)のローン買取基準を満たしているのでConformingと呼びます。このConformingになるには、ローンの総額に上限があります。そして地域によって差がありますが、ほとんどの貸し手(銀行もノンバンクも)このConforming Loanはオファーできるので、ローン総額がこの上限以下であれば、金利が比較的安いです。(差は0.5%ほど)その上限以上のローンだとJumboと呼ばれて、扱える金融機関が圧倒的に少なくなります。

この当該エリアでのConforming loanの上限は一区分だと$776,250、 4区分だと$1,492,800です。
この物件は$650,000リスティングプライスなので、5%の頭金でも、ローンの総額は$617,500。そのため、上限以下に収まるためローンが安く組みやすいです。
この家の場合修繕費が必要となるので、ローンの頭金はなるべく低く抑えておくのが良いと思います。

そしてたまに聞かれるのがビザでアメリカで働いていてもローンは組めるのか?という点ですが、ローンはCredit ScoreとSocial Security Numberさえあれば基本ローン組めます。
Credit Scoreは最低でも3つのCredit Line(カードや車のローン)があり、うち最低でも1つのCredit Lineに1年以上の履歴が必要となってきます。

良い点3. 表面的なレノべ+居住エリアが少しの投資で拡大できそう

この物件ですが、売り手が屋根を変えると言って私はありかも、と思いました。修繕費にかかる中で、売却時の不動産価値はそこまで上がらない割に、圧倒的にコストが大きいのがこれらです。

金額が大きい割に価値が上がらない修繕リスト
- 屋根(このサイズの家だったら$10000+)
- ファウンデーション(基盤)
- 電気回線
- 水道インフラ
- 下水道

一方で、金額は大きいが価値が上がるリストは以下
金額が大きいが価値が上がる修繕リスト
- アルミ窓をビニール窓へ交換
- 外壁のペイント(この年次であれば、外壁交換は特に必要ない)
- キッチン
- バスルーム

この物件の場合、屋根は売り手が交換してくれる場合であれば、それだけで$10k以上の節約になります。
そして金額が大きい割に価値が上がらない修繕リストの中では他のものは年次がそこまで経っていないのでそんなに心配する必要はないです。
大体1950年以前だったらどれも心配した方がいいので、目安にしてください。

ただ安く済むというわけではなくて、それでも合計で$100k~150kの修繕費は必要となってきます。

さらにこの家土地がとても広いので、既存のガレージを居住エリアに改造し、外付けで屋根付きのガレージを建てることが可能。バルコニーもすで屋根が半分ほどついていて、上の階も$75/sqftくらいで拡大できそうです。その場合1000sqftほど拡大できる見込みです。
なのでトータルの修繕費は$175k~225k程になると予想されます。

最後に. 肝心な修繕後の価値は?

では肝心な修繕後の価値はどうでしょう。
もしいい状態までアップグレードできるのであれば、この家$1Mを超える価値は生み出せると思っています。
この家のある付近は新しく、さらにとても豪華な家が陳列しているところで、平均価格は$402/sqftです。この家が$302/sqftなのでいかに安いかわかるでしょう。

こちら近郊で売れた家ですが、最近はこのようなMid century modernなデザインがとても人気です。この物件はこの地域にしては破格な$546/sqftで売れました。
https://www.redfin.com/WA/Lake-Forest-Park/19212-46th-Ave-NE-98155/home/93971

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では、この家を$650kで購入して、修繕費を$200kかけて1000sqft拡大するとしたらどれくらいの価値になるか。
この周囲は新築の家も多い中、コンサバ目に見て、一年後も値段は変わらず、さらに少しディスカウントして$380/sqftとしましょう。
(2150sqft+1000sqft)*$380/sqft = $1.2Mほどのお値段がつきます。

実際支払う現金は
頭金: 5%*$650k=$32,500
買う際のクロージングコスト: $6,000
修繕費: $200,000(金利8%~12%くらいでローンも組めますが、ここでは現金で払ったことにします。)
1年間のローン支払いと諸費用(固定資産税や保険)の支払い: $45,000
売る際のクロージングコスト: 売却価格の4.5%(最近はブローカーのコストが下がってきているので、4.5%も多い方ですがこれで見積もります)
が発生します。

これらを全て足すと~$340kくらいになります。
そして売却益を計算すると、$1.2M-340k-650k=$210,000。

想定では居住用の住宅として購入し、そこに1年間住みながら改築をしていくので、Primary Residence扱いです。(これ何度も使えないのが注意点、毎年行うとIRSから注意されます)
Primary Residenceの売却益は未婚・もしくは結婚してても別々に確定申告している場合であれば、$250,000非課税、なので一年住んで綺麗に改装していけば、まるまる$210,000(2200万円)の収支に。

悪い話ではないと思いますが、いかがでしょうか?

投資家としてはこういう計算を物件を見る度に数分で頭の中で行っています。もちろんもっと大きな物件であれば、ちゃんとスプレッドシートも作っていますが、戸建ては基本中の基本なので、こういう見方をすれば、家に対する価値観が変わると思います。


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