米国富裕層の税金からくり(不動産 前編)
久々にNote書きます。Twitter側でよく節税について話していますが、文字数制限がない中、実際の法文書や、図解などの実例を元に、お話ししていきたいと思います。
以上のツイート通り、人によっては以下を実践するだけで、数千万円と資産に差が出てくるので、有益だと思っていただけると嬉しいです。
私は今年本業のためにRegistered Investment Advisorの資格試験に合格をし、登録もしていますが、私自身税務弁護士ではないので、税務のアドバイスではなく、あくまでこう言った手法が使われているという一例であり、実際執行する際には米国税務弁護士もしくはCPAにご相談ください(紹介はできます)。
米国では所得税への課税は累進課税が採用され、一見平等に見える課税システムですが、所得課税以外の部分で大幅に優遇されている税制があるのです。税務システムをよく知らないと使えないため、抜け穴(Loophole)と称される事もありますが、米国の議員の多くもこのような抜け穴を利用し、資産を増やしており「塞ぐインセンティブがない抜け穴」です。
最初のステップの王道が実は不動産投資であり、税制的に圧倒的に優遇されている資産クラスでもあります。
米国の不動産は値段も右肩上がりですが、それ以上に重要な点が税制の優遇です。なので、リターンが低くても上がり続ける理由が存在するのです。
1) Real Estate Professionalという税務ステータス
米国にはReal estate professionalという税務ステータスがあります。このステータスは不動産を保有している方々にはメリットがとても大きいのですが、もしReal estate professionalでない場合はどういう控除が受けられるか?から見ていきましょう。
米国の税制ではActive incomeとPassive incomeに分けられていて、相互の収支の相殺ができないようになっています。
Active incomeはMaterial participation(詳細条件はこちらのMaterial participationの項目: https://www.irs.gov/publications/p925#en_US_2020_publink1000104582) の条件を満たす必要があり、
以下がActive incomeとPassive incomeの例となります。
Active income例:
- 給与収入
- パートナーシップ収入
- チップ
Passive income例:
- 家賃収入
- ロイヤルティ収入
- 株の配当
- 利子収入
一般的にはPassive incomeの収支の損金をActive incomeの収支で相殺することができず、不動産から出る赤字などはPassive incomeに対しての相殺のみとなります。
一般的に
現在はそれでも例外的に賃貸用の物件を保有し賃貸業務などをおこなっている場合(Rental activityの条件詳細はこちらのRental Activitiesの項目: https://www.irs.gov/publications/p925#en_US_2020_publink1000104573)
賃貸業務がPassive incomeであれど、収入が$100,000以下である場合$25,000(~280万円ほど)までは控除ができるようになっています。
$150,000まではフェーズアウトが年収が$100,000超える部分が$1毎に$25,000から50%分減らされていきます。
この控除に当てはまるケースを以下に記載します。
例:サラリーマン年収(W2)のAdjusted gross incomeが$120,000で、賃貸不動産の赤字(減価償却含む)が$31,000あった場合は以下の計算方式で年内控除分は$15,000まで減ります。なので、控除分に当たらない部分は来年以降に持ち越しとなります。
(参照元: IRS)
ただ不動産の控除を受ける人で一番恩恵を受けるのは高所得者です。
理由としては累進課税率が高ければ高いほど、控除した部分の給与所得と資産売却時のCapital gainの税率の差が大きくなるからです。ただ上記の特別控除は収入が$150,000の場合までしか恩恵を受けれません。
なのでそこで有用になるのがReal estate professional statusです。
これは不動産にMaterial participationで従事している方が選択できるステータスであり、このReal estate professionalにはどのようになれるか?という点です。
以下IRSのサイトより抜粋。
以下の二条のどちらも満たしている必要があります。
1) 税務年度中にすべての取引または事業で行った個人的なサービスの半分以上が、自分がMaterial participationに該当する不動産関連の取引または事業で行われたものである。
2) 課税年度中に750時間以上のサービスを、自分がMaterial participationした不動産関連の業務または事業を行った。
ここで気をつけたいのが、W2 employeeとして不動産業に費やした時間はカウントされません(5%以上シェアを持っていない限り)。ただ自身で会社を作り、他の会社に契約社員(Contractor)として会社を雇ってもらった場合はあくまで自分の会社のオーナーシップが5%以上である場合は業務の内容によってカウントされます。なので雇用体系に気をつけてください。これは不動産ブローカーなどでも同様ですので不動産ブローカーになればよいというものではありません。
そして、ここで重要なポイントが、配偶者と共同申告の場合、上記の条件を満たしているかどうかを判断するために、配偶者の全体の個人サービス業に費やした時間をカウントする必要はありません。ただし、あなたのMaterial participationを判断するために、配偶者の不動産関連活動への参加時間をカウントことはできます。
ややこしい言い回しですが、夫婦のうち片方がReal estate professionalの条件を満たしている場合、夫婦間のActive incomeとPassive lossを合算することが可能となります。なので、現在配偶者が仕事をしていない場合などは750時間の不動産関連活動に従事する時間を設ければ、共にFilingをしている限りは、Real estate professionalとして夫婦で合算することができます。
ではどう言った行為が不動産関連活動になるのかという例ではIRSは以下をReal estate trades or businessと定義しています。ただ、Material participationルールで事業を開き50%以上が不動産収入に由来する場合は、
とても細かく何がMaterial participationに準ずるのかという点は分別されていますので、こちらはCPA、もしくは税務弁護士までお問い合わせください。
たとえですが、不動産のリサーチの時間(Zillowなどでのブラウジング)はカウントはされないが、賃貸物件を訪問するための旅行の時間はカウントされる、などがあります。
こちらのページが一番わかりやすく何がカウントされる、されないかを書いていますので、ご参照ください。こちらには過去の判例なども掲載されていて、CPAのブログの中では最も詳細なうちの一つです。
https://wcginc.com/kb/what-activities-count-and-don-t-count/
ではめでたく、賃貸物件のマネジメントをしているので、Real estate professionalになれそう!という場合、次のステップは何を持ってPassive収支から赤字をだすのか、という点になります。そこで役に立つのが不動産の減価償却です。
2) Bonus Depreciation(ボーナス償却)
一般的に米国では建物の償却期間は27.5年(居住用)もしくは39年(商用)で直線償却されます。しかしそれにも例外があります。
Bonus Depreciation(ボーナス償却)という制度は2017年のthe Tax Cuts and Jobs Actの内で改訂された原価償却にまつわる税制です。この方改訂以前は減価償却はこれによってビジネスや賃貸物件の20年以下の償却年数の設備などは一年目で100%償却できるようになりました。この方改訂以前はビジネスで購入した設備などは50%の償却率でした。そしてこれも2023年から2026年にかけては100%一年目で償却できていたものが段々とフェーズアウト(80% 60% 40%, 20%と一年目に償却できる額が年々下がっていく)
この償却の条件としては、
- 納税者またはその前任者が、その不動産を取得する前に一度も使用していない。
- 納税者が関連当事者から取得したものではない。
- 納税者が支配されている企業グループの構成員から取得したものではない。
- 納税者の中古資産のコストベースは、売主または譲渡人が所有していた資産の調整後のコストベースの全部または一部を参照して計算されていない。
- 納税者の中古資産の基礎は、被相続人から取得した資産の基礎を決定する規定に基づいて計算されていない。
- また、ボーナス減価償却の対象となる中古資産の原価には、納税者がいつでも保有している他の資産の原価を参照して決定された資産の原価は含まれない(例えば、同種交換や非自発的転換などの場合)。
端的に言えば、グループ会社内での売買や家族間での売買はカウントされないということです。
このボーナス減価償却が特に賃貸不動産にものすごいインパクトがあるのです。20年以下で償却できるものは例えば
- 冷蔵庫などの電化製品
- 窓
- カーペットやフロアリング
- 家具(家具付き賃貸などに出している場合)
これに関しては、何が償却できるかはCost segregation studyという専門機関を招いて、自分の賃貸物件の設備を一つ一つレポートし、算出する必要が出てきます。
こちらにかかるコストはまちまちですが、今回私行なったCost segregationは6室の物件で$3,200でした。SFRでしたらもっと少ないはずですが、コストに見合うかどうかは償却額によりけりですので、こちらは必要に応じてこちらのCost segregation studyを行うのが良いと思います。
こちらの減価償却をとりに行く場合は、各家庭の事情によって割に合うかはそれぞれ違ってくるのでCPAを通じて試算をお勧めいたします。一般的には建物価値の1/3~1/4と言われます。なので、米国で価格に占める土地の割合が低い不動産を買いたがるのはこのためです。
うちのリターンですと、今年はコストは$3,200かけて、どれくらいのBonus Depreciationができたかというと、一年目で$240kほどのDepreciationとなりました。この部分を全て最高税率(37%)の部分にあてられるのであれば、連邦税だけで$88,800の節税!
なんとリターンは28倍!
こんなにリターンの高い投資があるでしょうか?これぞ節税の威力!
「でもちょっと待って?これはあくまで減価償却だから後で払い戻さなきゃいけないんだよね?」
その通りです。
なので後半に続きますが、後編では1031 ExchangeとStep Up Basisについて書きます。
1031 Exchangeは以前書いたことがありますが、今度はIRSの原文を比べながら解説していきます。
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