ベテランの感性はどのように引き継げるか?

ベテランさんの能力を2つに分けると①思考回路、②5感による認知でした。今回は5感による認知力をどのように若手が引き継ぐことができるか?というところに焦点を絞って書いていきたいと思います。

いきなり身も蓋もない話なのですが、普通の事業会社、上場企業で働かれている場合はまずそのベテランの技術をそっくりそのまま引き継ぐのは無理だと思っています。

長時間労働、年功序列、終身雇用システムがうまく機能していた時代であればよかったのですが、これはもうだいぶ崩壊していますね。そうなってくると、仕事の習得の仕方として、ベテランさんが身に着けた手法が有効に機能しないわけです。

今はもう上司も同僚もどんどん転職しますし、むしろ転職しないやつのほうが頭おかしいんじゃないかという雰囲気さえ実際出てきているわけです。こんな中で、さらに会社の方もぶっちゃけ終身雇用で責任を負うようなことはしたくないし、心のどこかでダメな奴は早めにやめてくんないかな…と思っているかもしれません。こうなってくると一人の人が同じ業務をずっと続けるという前提がもう成立しません。おまけに長時間労働も見直され始めてきています。

結果的に、引継ぎを受ける人がベテランさんが習得したのと同じくらいの時間をかけることはもはや現実的ではないわけです。

リゲインのCMでおなじみ、「24時間働けますか!」状態の中で遭遇したトラブル、それを乗り越える体験が人間の技術に内面化され、無意識に”触ってみて”、”雰囲気で”、”ニオイで”、”独自の眼力で”何かを認知したりする技術を身に着けた先人たちに敬意を表しながら、それを現代的な文脈でいかに塗り変えていくかということが必要です。

そのベテランさんと同じようなスキルの人間を人材育成によって、コピーのようにつくることは無理であっても、その人の担ってきた役割をどうにかして再現することはある程度できるのではないかと思っています。

たとえば設備の運転状態をベテランの方が見守っていて、運転データを見つめているとしましょう。「あれ、なんかおかしいなこのセンサーが下がってきてる」とか気づいたりしますよね。こういう感覚が非常にわかりやすいのですが、基本的には”いつもと違う”という状況を察知しているんですよね。察知した後は、「こういう時は〇〇だ」なんて思考回路を回しながら次の行動を決めていくわけですよね。

要はこの‘’いつもと違う‘’を認知する能力がどのようなもので再現できるかということなんですが、私はデータに落とし込まれた時点である程度再現することができるだろうと思います。たとえば、設備から出てくるセンサーデータ、音の周波数データ、設備の振動データ、監視カメラの画像データ、日報などのテキストデータといったものです。データに落としてしまえば、「いつもとこれぐらい違います」程度であれば今の技術でもすぐに実装できるわけです。

ということで結局大事なのは、ベテランの方が認知している対象は何だろうか?と思いをはせることだと思います。運転データの場合もあるし、画像データの場合もあるかもしれません。目の動きだとか、今はデータ化されていないようなものも含まれているかもしれませんね。認知している対象が特定できたら、それをどうにかしてデータ化できないだろうかと考えると良いと思います。

以上でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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