塔 2019年3月号

こんにやくの真中に入れし切れ目より引つ繰り返す単純ぞよき
幼年のわれが住みゐし大阪の二度漬け禁止の串カツのたれ
昨夜降りし雨の名残が庇より滴りて吾が頬を打ちたり
忘れたくないこと書けど安物の付箋ぽろぽろ剥がれてしまふ
あらひざらひ話して楽になるならば、なるならば冬の線香花火
コーヒーの苦みを飲めりブラインドカーテン重く垂れゐる部屋に
方向を変へながら押すスクラムのごとき作歌と思へど作る

永山 凌平

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