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「B'z presents UNITE #01 @ 大阪城ホール」 ライブレポート / ぼやき#2

はじめに

 コロナ禍に入り1年半ほどが経過した2021年9月18日、B'zは大阪城ホールにて2年ぶりの有観客ライブ「UNITE #01」を開催した。今回はMr.Childrenとの共演ということと、政府ガイドラインに乗っ取った観客数5,000人での開催ということで、相当な倍率でのチケット争奪戦となった。しかし、私はB'z公式ファンクラブでの抽選で幸運なことにチケットを入手することができた。SNSでは落選した方が多く見られ、自身の幸運な出来事に感謝するとともに、ライブが終わり数日経った今、現場の雰囲気をなるべくリアルに記録し、共有すべきなのではないか、という使命感に駆られ、本記事を執筆することにした。また私自身(後述するように)この素晴らしい1日を、人生のあらゆる場面で思い起こすことができるよう、記憶が薄まらないうちに記録しておきたいとも考える。

 形式上ライブレポートとは謳うが、アーティストがどんな動きをして何を歌って、などといったことには、あえてだらだらと書かないことにする。本公演の模様は来たる2021年10月4日より配信されることが決まっているからだ。詳細はB'z公式ホームページを参照。

(若干のネタバレを含むので、セトリを見ずに配信ライブに臨みたい、という方は観賞後にまた戻ってきてくれると嬉しいです。)

 B'z、Mr.Childrenのファンのみならず、本記事を読まれる方に現場の臨場感やコロナ禍におけるコンサートの実態、感染対策の現状などを伝えることができれば幸いに思う。

プロローグ

 私はその日、「まるで夢を見ているような感覚」というものを初めて味わった。幼い頃から不眠気味の私には、その日、その瞬間を迎えるまでの長い時間は、なかなか寝付くことのできない夜と似ていた気がする。そしてその夢が覚めたとき、また新しい日々が、新しい世界の見え方が、新しい人生が始まるかのような、そんな気がした。

夢の始まり

 その日はいつも以上に眠りが浅く、朝早くに目が覚めた。遠足前のような高揚感によるものだけでなく、台風14号の影響が気がかりであったためである。とは言え、幸い私が家を出発する正午すぎにはカラッと晴れており、ひとまず安堵した。私の家から大阪城ホールまではおよそ1時間ほどかかる。グッズの販売は11時からのようであったが、あまり早くついても仕方がないと思い、家を12:30に出発し、のんびりと、向かうことにした。

 道中で、いつもB'zのライブに向かう時とは異なっている点に気づいた。それは、私の家から会場に着くまで、ファンの姿が見られなかったことである。通常は、会場最寄り駅の通る線ではいわゆるバンドTシャツをきたファンが散見されるのだが、この日は一人として見かけることがなかった。私が手にしたチケットの価値を改めて実感し、有り難みを噛み締めた瞬間であった。そうして電車に揺られること1時間強、13:45に私は大阪城ホールへ到着した。

開演までの時間

 この日は16:00開場、17:30開演であった。14時ごろにグッズを購入し、ワクチン接種証明書の提示によってステッカーを入手した。その後ホールの近くにあったイタリアンで少し豪華な、遅めの昼食を終え、広場の噴水前に座り時間を潰すことにした。

 噴水前に座っていると、だんだんとライブに参加する人が集まってきた。今回はいつもに比べ、1人での参加が多かったように感じられる。これもコロナ禍の影響なのだろうか、などと考えているうちに、すぐに16時を迎えた。

 16時を迎えると、私を含む整理番号"A○○○○"のチケットを持つ人の入場が始まった。今回は感染対策を十分に講じての開催だったので、入場時には検温及び厳重な本人確認が行われた。その瞬間は緊張で体温が上がっていたら、などと考えもしたが、モニターを見ると36.1℃とあり、杞憂に終わった。

 いつも通り入場時に座席がわかるシステムで、私の座席はなんと最前ブロックの5列目であった。ただでさえ鬼畜な倍率のライブであるのに、とんでもない座席を引いてしまい、私はこんなことがあっていいのかと一瞬、正体不明の不安に苛まれた。しかし自身の寝付けなかった日々を振り返ると、その不安はすぐにかき消された。人より苦労して生きている、なんて豪語するつもりはないが、8月末にあった医学部の進級試験を乗り越えればこの日が待っている、と信じ勉学や臨床実習に勤しんでいたことを思い出したのである。まだ開演まで時間があるというのに、この瞬間から、私のアドレナリンは吹き止まることを忘れていた。落ち着くわけもなく、会場内を静かに散歩するなどして、開演の時間を待った。そして、その時は来た。

先手、Mr.Children

 いつも開演時間数分前になると、場内アナウンスが流れる。このアナウンスは「それでは、まもなく開演です。」と締められ、場内が沸く、というのが定番であり、今回もそのようなことが起きた。感染対策として歓声が禁止だったので観客は拍手で沸くのだが、正直この瞬間、この定番の流れが、この日初めて、ついに私の琴線に触れた。同じ目的を持つ者が2年ぶりに一堂に会し、アーティストを含め皆が待ち望んでいた瞬間がようやく訪れる。そのことを改めて実感したのである。あの瞬間の拍手は一番鮮明に覚えている。(というか開演してからはほぼ記憶がない。)

 Mr.Childrenを生で観るのは初めてだった。日本の音楽シーンを牽引してきたバンドの一つであることは承知していたのだが、HARD ROCK好みの私はこうした機会で初めて、その偉大さに触れることができるのである。1曲目の「Tomorrow never knows」のイントロとともに桜井氏が登場し、場内は沸き上がる。自分の座席の周りの人たちはB'zのファンが多かったのか、心なしか最初はノリ方に戸惑っていたように見えた。しかしミスチルが数曲演奏するうちに(この表現があっているかは微妙だが)徐々に馴染んでいき、これがPOP界の頂点に立つバンドの力なのか、と感じた。

 途中、B'zの2人を迎え入れる形で「Everything (It's you)」のセッションが始まった。2人の不意打ちの登場に場内は微妙な沸き方を見せており、個人的にツボだった。2年ぶりに聴く稲葉氏の魂の歌声と松本氏の魂のギターはやはり健在で、ミスチルの楽曲を完全に我が物にしていた。(詳細は配信ライブをご覧あれ。)

 B'zの出番が終わるとミスチルはラストスパートへ突入した。最後の誰もが知る「innocent world」では、おそらく定番であろう手拍子を、私を含むB'zファンがミスチルファンを真似るように行っていた。まさに、"会場が団結(=UNITE)し、一つになった瞬間"であった。私の涙腺はついに崩壊した。

 そしてミスチルの出番が終わり、30分の転換作業の後、19:00、B'zの出番がやってきた。

後手、B'z

 B'zは10/1に配信リリースされることがライブ前日に発表された、未リリースの新曲「UNITE」で開幕。場内でその情報を目にした人が何割占めていたのかはわからないが、私にはすでに周りをみる余裕などなかった。B'zが開幕に未発表の新曲を持ってくることは珍しくはない。それが新曲だと認知できない人にとって、その瞬間に盛り上がるのは難しい、と未だに思うが、私のようなほぼ全曲網羅しているファンにこのサプライズはたまらない。そして2曲目、「イチブトゼンブ」のシンセイントロで再び、会場は一つになった。

 MCで稲葉氏が「本当に会いたかった、感無量」という旨のことを話していた。言うまでもなく「お、俺も〜〜〜〜〜〜(泣)!」状態であったのは私だけではないようで、歓声が禁止の中、すすり泣く音をちらほら耳にした。そして「B'z presents UNITEにようこそ!」という新鮮、かつ懐かしい合図とともに会場内のボルテージは上がっていった。

 本編最後にすっかり定番になった「兵、走る」を演奏したB'zは、ステージ裏に帰っていった。それと同時に場内はアンコールを意図する手拍子で一体となり、B'zの再登場を待った。

 B'zは5分ほどで戻ってきた。そして桜井氏も同時に戻ってきて、本人がリクエストしたという「さまよえる蒼い弾丸」のイントロとともにアンコールステージが開幕した。良いチョイス、の一言に尽きる。

 そしてライブ最後は安定に「ultra soul」で締められる。あの付点8分ディレイの特徴的なイントロの最中に稲葉氏が「あの部分は(叫ばずに)ジャンプで!!」と2,3回促していた。そして迎える無言のジャンプは、皆心なしかいつもより高く跳んでいて、上へ上へと上り詰めようという気迫が感じられた。会場はまたしても一つになり、ついに最後を迎える。

 B'zのステージが終わるとミスチルが再びステージに登場し、記念撮影を行った。B'z公式Instagram参照。私もこの1枚に映ることができ感無量である。B'zのLIVEの最後は「せーの、おつかれー!」と皆で締めるのだが、今回は無言でそれが行われた。寂しいものではあったが、新鮮で、あれはあれでよかった。とは言え次回のLIVEでは思い切り叫べることを切に願う。

 最後に松本氏の「みんなに会えてマジで嬉しかったです。」というリアルな一言を聴き、その時間を共有できたことに改めて感動し、いつもは喪失感を少なからず抱くLIVEの最後を、100%、思い残すことなく迎えることができた。(執筆している今も思い出して泣きそうである。)

最後に

 電車での帰路で、B'zのステージの途中、稲葉氏が「夢のよう」と言っていたのを思い出し、私はようやく夢の最中にいたことに気づいた。幸福感で満たされたその日が終われば、また明日という新たな1日が始まる。そして次の夢まで、寝付けない日々をまた、送り始めるのである。しかし同時に、これからの日々は今までとは異なるものであると確信する。それは稲葉氏の「また会いましょう」という言葉のおかげであり、これからの夜にはいつか終わりが来て、また夢を見ることができる、と約束されたのである。

 新たな夢を見る日まで、この日をいつでも取り出せるように胸にしまっておいて、また、生きる。今回のLIVEでは、心の在り処を教えられたような気がする。

 改めて参加できたことに心から感謝し、今までとは全く異なる、新たな1日を始めようと思う。


(ちなみにこの後自宅で深酒してべろべろで寝た)

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