カルアミルク〜音と歌詞の関係性〜


このnoteは歌詞の『解説』や『考察』ではありません。ただの『感想文』ですので、軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。歌詞を読んだとき(聴いたとき)に受ける印象や、感じることは千差万別です。このnoteでは基本的に私が感じたことを紹介するため、少しずれたことを言うかもしれませんのでご了承ください。
もし特集する曲を聴いたことがない方がいらっしゃったならば、是非一度聴いてからお読みいただけたら幸いです。詞の世界を自分で想像して、色々と思いを馳せる時間こそが一番の幸せだと思います。また、あなたがその歌詞に触れたとき、どう感じたのか、なにを思ったのか、もし良ければ教えてくださると非常に嬉しいです。
色々な人の『視点』、『ものの切り取り方』、『感想』を知ることを楽しんでくれる人が一定数いらっしゃるとのことですので、そういう方々に楽しんでいただければと思います。(敬称は略させていただきます)

【はじめに】
私が岡村ちゃんに出会ったのは高校生の頃でした。知り合いから借りた『OH! ベスト』をCDプレーヤーにセッティングし再生ボタンを雑に押し込んだ時から、私は岡村ちゃんに首っ丈になりました。唯一無二、まさに岡村ちゃんにピッタリな言葉ではないでしょうか。
1990年11月16日、4枚目のオリジナルアルバム『家庭教師』がリリースされ、翌月『カルアミルク』はシングルとしてリリースされました。2021年11月16日、31年の時を経てLP盤が発売されまして、早速購入して聴いてみました。
またOKAMOTO'SのオカモトレイジがLP盤について語っている動画がYouTubeに上がっておりましたので、そちらも是非!

【音と歌詞の関係性】
皆さまはカルアミルクを飲んだことがありますか?コーヒーリキュールのカルーアを牛乳で割ったカクテルで、非常に甘くて飲みやすいお酒です。まるでカフェオレを飲んでいるような気分です。しかし度数は7〜8度と意外に高く(割り方にもよりますが)、ガブガブ飲んでいるとすぐに酔っ払ってしまいます。この歌はそんなカクテルの名を冠した名曲です。
ライムスターの宇多丸がラジオでサビ部分の『電話なんかやめてさ』のリズム感、4部音符の中に2文字(厳密にいうと8部音符が2つなのかもしれません)という印象について語っていたの思い出しました。全体を通してこの曲の歌詞の『音のはめ方』はとてもリズミカルに聴こえます。緩急が見事に表現されていて、より歌詞の内容がリアルに聴こえてくるように感じました。恐らく撥音や促音を8分音符にして組み込まれていることから、歌詞が忙しくなりすぎることなくリズミカルな印象を生み出しているのではないかと私は思っています。また『電話』の『で』という力強い子音から入ることでサビ全体がふわふわせずに強固なものとなっています。
私が好きな歌詞の譜割りは他にも色々ありまして、『ちっちゃな根性身につけたい』の部分とか面白いなって感じます。3拍目の裏の裏に引っ掛かりがあり、その後の『はーいはーい…』の部分も1拍目の裏の裏に引っ掛かりがあり、リズム的な重なりによりグルーヴがさらに気持ちのいいものになっています。またこの『根性』の部分も短めに譜割されてて、『ちっちゃな』感じが出てたり力強さみたいな感じもあります。
音(メロディ)と歌詞との間には絶妙な関係性が成り立つべきだと私は考えています。話し言葉のイントネーションが崩れないようにメロディを書く場合もあれば、わざと崩してフックをつける場合もあるような気がします。多分時と場合によると思うのですが、私の場合、最終的に仕上がった曲を聴いた時に『歌詞が素直に入ってくる』という部分と『歌詞にグルーヴがある』という部分を大切にしたいなと思っています。発音が速くアタック感の強い子音のタイミングは特に細かく調整する場合が多いような気がします。調整する場合も全体の歌詞の流れや雰囲気を考えながら、世界観に合わせた言葉を選んでいくことは本当難しいなぁと思いながらいつも苦戦しています。まぁ、なんだかんだメロディと一緒に歌詞も出てくる時は最初からバチッとハマったりするのですが。

【時代を映し出す歌詞】
ここまで歌詞と音の関係性について語ってきましたが、歌詞の内容についても本当素晴らしいと言いますか、素敵ですね。私はこの曲がリリースされた時点ではまだ生まれていないため、この時代背景を実際に知っているわけではありません。私はスーパーファミコン、64世代でしたし、ディスコはいつの間にかクラブと呼ばれるようになりました。しかし、この歌詞を聴くことで、その当時を感じることが出来ます。そしてそれは懐かしいようであり、その歌が歌われた『今』を感じるのです。
私の話になってしまいますが、その時代に固有のもの、その時代を色濃く反映した言葉を歌詞に入れるかどうか、かなり悩んだ時期があります。「この言葉、今は一般的に使われているけど、あと30年したら古臭く感じないかな」とか、はたまた「古く感じるだろうけど、これは絶対に歌詞に入れたい」など、時代背景を曲の中に色濃く反映させるかさせないか、これは難しい問題なのかなと色々と考えておりました。
そんな時に、古く感じる音楽と感じない音楽の差はなんなのだろうか、そして『時代を色濃く反映した言葉を入れ込むことで、曲は数十年後に古臭くなるのか』を考えました。色々考えた挙句、結局はリスナー次第なんだと感じました。多分ビートルズを聴いて『古い』と感じる人もいれば『新しい』と感じる人もいるのでしょうね。
また一方で、『古いと感じられるかもしれないけど、今の時代を強く反映した言葉が適しているのであれば歌詞に入れる』という考えに至りました。数十年後、私の音楽がもし色んな人に聴いてもらえるならば、私たちがどんな時代に生きていたのかを感じとって、その時代に想いを馳せることで楽しみや喜び、はたまた悲しみや嘆きなどを共有できるような曲が良いなと思ったからです。「いつ聴いても古さを感じない」という曲ももちろん素晴らしいのですが、古臭いことは悪いことではなくメリットになるかもしれないという視点を見つけることが出来ました。この岡村ちゃんの歌詞も曲も、古い感じはあまり感じませんが当時の流行りが歌詞の中に含まれています。当時の風景を私に共有してくれて、『こんなんでいいのか』な生活感を共有してくれているのかもしれません。

【最後に】
こういう印象って、多分私たちが曲を聴いている時は無意識的に感じているのだと思いますが、いざ言葉にするとなんだか言葉足らずになってしまっているような気がしています。
この曲を聴いた時、お読みくださっているあなたが感じた思いをぜひ聞かせてほしいですね。

その時は、チャットもSNSも電話もやめて、六本木で会って、カルアミルクを飲みながら、お話したいですね。
そんな時代がまた戻ってくることを祈りながら。

次回:まちぶせ
(次回の更新は3月になります)

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