酒の歌に酔いしれる ~歌詞に出てくる酒の効果~

 このnoteは歌詞の『解説』や『考察』ではなく『感想文』ですので、軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。歌詞を読んだとき(聴いたとき)に受ける印象や、感じることは千差万別です。このnoteでは基本的に私が感じたことを紹介するため、少しずれたことを言うかもしれませんのでご了承ください。
 もし特集する曲を聴いたことがない方がいらっしゃったならば、是非一度聴いてからお読みいただけたら幸いです。詞の世界を自分で想像して、色々と思いを馳せる時間こそが一番の幸せだと思います。また、あなたがその歌詞に触れたとき、どう感じたのか、なにを思ったのか、もし良ければ教えてくださると非常に嬉しいです。
 色々な人の『視点』、『ものの切り取り方』、『感想』を知ることを楽しんでくれる人が一定数いらっしゃるとのことですので、そういう方々に楽しんでいただければと思います。
(敬称は略させていただきます)

【はじめに】
 そろそろ忘年会シーズンに入り、お酒を飲む機会が増えてきます。昔から、人が集まるところにはお酒がありました。親戚の集まり、祭り、イベント事など、生活のあらゆる場面にお酒はスッと入り込んできます。お酒が入ると、アルコールによって抑制が緩くなり、普段よりも感情の起伏が大きくなります。怒りっぽくなったり、泣き上戸だったり、笑い上戸だったり。ちなみに私は笑い上戸に泣き上戸です、ひとりで映画を見ながら飲んでいると、笑ったり泣いたりで、もう大変です。今回は、歌詞に登場する歌を聴いていきましょう。

【楽しい時も、悲しい時も】

 オリオンビール美味しいですね、私は大好きです。同じお酒を同じ時に同じ場所で飲む、これは「同じ釜の飯を食う」と等しく連帯感や一体感を強めると思います。フェスや居酒屋、立ち飲み屋で、全然知らない人とビールを一緒に飲みながら、いつの間にか友達になっていたなんてことあるのではないでしょうか。お酒は人と人とを繋げるという役割を担っているのですね。この曲では特に、ビールをテーマにして沖縄の風、人との触れ合い、そして地元への愛を感じることが出来ます。非常にハッピーな曲調で、みんなで踊りながら聴き飲みたい曲です。

 飲み会と聞くと大抵楽しいものです、気分も晴れます。それは、お酒を飲むことで気分が大きくなり、辛いことや面倒なことを一時的にでも忘れることが出来、また本音で話すことが出来るようになることが大きく影響しています。森高千里の『気分爽快』ですが、好きだった人を友達に取られてしまった話で友達をお祝いする一方、そんなショックを忘れようとして、また友達と腹を割って話そうとしているように見えます。お酒が主人公の悲しいエピソードを薄れさせて、ハッピーな曲調になっています。ただ友達は明日デートなんだから、「今日はとことん付き合うわよ」はなかなか陰湿な気も…(笑)。

 しかしお酒を飲むのは、仲間と盛り上がりたい時だけではありません。河島英五の名曲を聴いてみましょう。先ほどの『気分爽快』と同じく、お酒を飲むことで辛いことを忘れてしまいたい、寂しさを紛らわしたい、そんな時にお酒が寄り添ってくれるような景色が描かれています。サビの部分では、辛さを紛らわすために何度も浴びるように「飲んで」しまう男の弱さや、寂しさが浮き彫りになっているように感じます。「辛いことを忘れさせてくれる」というお酒の作用自体は変わりませんが、飲む相手がいる場合とひとりで飲む場合で、ここまで酒の印象が変わってくるのか!と、個人的にはかなり驚きました。
 複数人でお酒を飲む場合、お酒はそのコミュニケーションを円滑にしたり本音を言い合うことが出来るようにしたりするツールとなり「お酒は楽しみの象徴」という印象がありますが、ひとりで飲む場合、自分自身の心が開いていくことや辛さを忘れることに着目され、心情の吐露を誘い「お酒は悲しみの象徴」という印象に変わっています。

【なぜ演歌に酒の歌が多いのか】

 今回お酒をテーマにnoteを書き始めて色々と調べていると、お酒に関連した曲は演歌において非常に多いということを感じました。演歌は19世紀末の自由民権運動時代、藩閥政府に反発する公開演説に対する当局の監視が強くなった時、圧力をかわすために政治を風刺するために歌われた「演説歌」が起源であると言われています(Wikipediaより)。その後、第2次世界大戦後にアメリカの音楽が日本に流れるようになり洋風な歌謡曲が流行する一方、戦後の地方出身者の都会への進出を背景とした「望郷」がテーマの田舎調の歌も広く生み出され、それらが演歌の原型となっていくそうです。
 起源からも分かる通り、演歌は「メッセージ性」を非常に重んじる音楽であると私は感じます。特に、男女の切ない心情や、相手を慕う気持ち、自然(海が多いですね)に対する憧れなど、メッセージが強い印象があります。この「メッセージ」を伝えるという時に、お酒は非常に相性が良いように私は感じました。メッセージが聴いている人の心に届く際、それはより「本心」に近い正直な気持ちだと考えられます。聴き手は語られたメッセージに対して「それが本心である」ということを感じると、メッセージを受け止めることができます。つまり、お酒を飲んだ登場人物が語る歌詞は、よりメッセージが心に響き、染みやすいのかもしれません。
 ひとつ明らかにしておかなければならないのは、「メッセージを届けたいから、酒をテーマにして歌詞を書く」という短絡的で一方的な流れではないということです。お酒はひとつの要因でしかなく、歌詞やメロディ、歌唱など総合した上で曲に含まれる魅力やメッセージが聴き手に届くのです。それに、歌詞の中にお酒がスッと自然に入り込んできて、結果的にメッセンジャーとしてのエフォートを担うということも考えられます。このnoteでは「歌詞の中で、お酒がどのような効果を持っているのか」の話であり、歌詞の書き方講座ではありません。歌詞を書くときは、どうぞあらゆるものや出来事、人々に関心を持ち、自分のスタイルで書いていただけたらと思います。

【内なる自分を明らかにしてくれるお酒】
 さて、今回もだらだらと感想を述べてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。一個人の感想として受け止めていただければ幸いです。「お酒を飲むと人が変わる」と言いますが、変わるのではなく明らかになるという方がベターでしょうね。お酒を飲むことで、他人に自分を知ってもらい、また自分自身の気持ちに気づくきっかけになればいいですね。

【次回】
クリスマスソングの歌詞について

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