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#44 若手社会人が大企業で働く最大のデメリット

20、30代の優秀な若手社員の大企業離れが止まりません。
大企業の社員としてのキャリアを見限り、一生安泰と言われていた会社からの転職を目指す人が増えてきています。

一方で、未だに新卒の就職活動では、日系大手企業は人気を博しています。

大企業への就職については、多くの反対意見がありますが、僕個人的には、
「若い期間の成長機会が奪われる上に、常識外れな常識が身についてしまう。」
という点が最も大きなデメリットだと感じています。

大企業を目指したい人や、今まさに大企業で働いている人への、1つの警鐘としてお伝えできたらなと思います。

「大企業の方が成長できる」という幻想

大企業を目指す人の動機の1つとして、
「教育制度が整っていて、成長できる」という話があります。

一方で、大企業を辞めようとする人が口を揃えて言うのが、
「自身の成長機会が少ない」という理由です。

二者の主張は矛盾しているようですが、
前者…会社にお膳立てされた教育制度が成長に繋がると思っている。
後者…自らが権限をもった実務経験が成長に繋がると思っている。

という違いがあります。

大企業へ入社した後の一般的な流れとしては、
・新入社員に長すぎる研修制度を設け(半年〜1年など!)、
・業務は基本的に前任の引き継ぎや、上司から与えられたもので、
・管理職としての業務も形ばかり(長年決まった仕事を部下に正しくやらせるだけ)。
・数年したら部署転換(原則ゼネラリストへの道)

という感じです。
(もちろん、全ての大企業がそうだというつもりはありません。)

このように、大企業では、若手の研修制度は手厚いですが、
その後の業務で任せられる裁量や変化のスピード感は圧倒的に低い傾向にあります。

同じ社会人3年間を過ごすにしても、

・大企業で、長い研修期間を経て上司や先輩から手取り足取り教えてもらいながら、決められた業務を失敗をしないように過ごす3年間
と、
・中小・ベンチャー企業で、小規模ながらも自分が主導するプロジェクトで、失敗をしつつ試行錯誤してきた3年間

とでは、どちらが自身の成長に繋がるか、違いは明らかです。

多くの人が経験的に知っているように、
「人に教えてもらう学び」と「自分の経験からの学び」とでは、雲泥の差がありますよね。

ロミンガーの法則(7:2:1の法則)を参照してみても、
「成長したいから大企業にいく」というのは合理的とは言いにくいことがわかります。

米国の調査機関・ロミンガー社の調査によれば、経営幹部としてリーダーシップを発揮している人たちに「どのような出来事が役立ったか」について聞いたところ、"70%が経験、20%が薫陶、10%が研修"という結果が明らかになりました。
つまり、人が成長する上で、もっとも影響を受けるのが「日々の仕事経験」を通じた学習であり、その次に「さまざまな人からの指導・助言」、そして研修や自己啓発を中心とした「能力開発」がそれに続くということなのです。
https://hrd.php.co.jp/hr-strategy/hrm/post-1262.php

社会人として重要な時期をどう過ごすか

社会人としての最初の数年間は、
ビジネスの進め方や考え方の基礎を叩き込まれる、非常に大事な数年間だと感じています。

僕自身も新卒入社した会社では、様々な無茶振りについて行くのが精一杯の中で、市場に合わせたスピード感やお客様目線での物の考え方を鍛えさせていただきました

皆さんご存知のように、
今、日本の大手企業の商習慣(決裁スピードやデジタル化など)は周回遅れだと言われ、世界に相手にされなくなりつつあります。

若手社員の立場としては、最初に大企業の感覚に慣れてしまうと、そこから抜け出すのは大きな苦労を伴います。

実際、大企業から中小企業やベンチャーに転職し、環境の違いについていけずに苦労する人も多くいらっしゃいます。

「この会社は何も教えてくれない!」「仕事のやり方が決まってなさすぎる!」と愚痴を言う人もいますが、
それって会社に非があるのか?と問われると結構微妙だったりします。

いずれにせよ、そうやって他責にして済ませようとしてしまう考え方は生きづらいよなあと感じます。

若いうちに整ってない環境に身を投げ出し、
「市場や経験から学べる人材」となるか?

不安だからと教育制度の整った大企業を選び、
「教わったことしか学べない人材」となるか?

大企業への入社を考えるときは、
後者を選ぶという大きなリスクを背負おうとしているんだということを認識しておきましょう。
(そのリスクを負ってまで、大企業を選ぶ理由を言語化できるでしょうか。)

認知バイアスとの戦い

こういう話を聞くと、「いやいや、でもなんだかんだいって、大企業の方が安定でしょ。」
と、感情論で大企業を肯定したい気持ちになる人もいます。

悲しいかな、いくらメディアで「大企業はもうヤバい!」と騒がれていても、
「自分は大丈夫だろう」と、どこか他人事に感じてしまうのが人間の性というものです。

処方箋として、認知バイアスの1つである、
正常性バイアスをご紹介しておきます。

正常性バイアスとは、災害心理学等において頻繁に用いられる用語で、人が危機や何かの異状に直面した際に現実を素直に受け止めることができず、物事を過小評価もしくは楽観視をして「まだ大丈夫」と思い込もうとする傾向を言います。
https://mitsucari.com/blog/normality_bias/

この状況を長い間放置しておくと、年功序列も相まって給与も上がっていくため、
「スキルに見合っていない高い給与」をもらうことになり、
生活水準は上がり、長すぎるローンを組んでしまうなどで、年収が下がる転職に対してますます躊躇いの気持ちが出てきてしまいます。

一度そうなるとなかなか身動きが取れません。「人生の損切り」を適切なタイミングで行うことは心理的困難が伴いますが、なるべく早めに立ち向かう必要があります。

日本経済が上向きだった一昔前であれば、大企業への入社は、働く個人にとって間違いない選択でした。

しかし世の中は確実に変わっていきます。
大企業は安泰だ!という幻想は早めに捨て、このあたりのデメリットをきちんと認識した上で、自らの判断でキャリアを選びとる必要があるなと強く思っています。

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