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詩|カニクリームコロッケ

いたたまれなさを持て余して
何とか症状を軽くしてもらおうと
それは駆け込み寺の要領で
私はことばを書き出した
自分の中に少しでも早く
再び平穏を齎すために

だって 
一度言語化して それを更に包装し
自分以外の人のもとへ放り投げてしまえば
感情は私のもとから離れるのだもの
熱病も 激痛も 孤独も 後悔も

  限界まで空気を入れこまれた風船のように
  あんなに割けんばかりに主張していたのに
  今はこんなにがらんどうだね がらんどうだ

私の書き物はごみ捨てで
私の作品は排泄物だろうか
世の中には きちんと作品を
贈り物として作れる人がたくさんいるのに

それは  痛みを受けたときにこらえきれなかった叫び声で
それは 「助けてほしい」を言う先がなかった時の最後の手段で
それは  自分の感情・感覚に意味はあるのだと思いたい自己愛で
それは  偶然他者と繋がることのできた唯一の経験だから

深呼吸の呼気 瀉血の幻視
自分の中の苦しいものをどうにか外に出そうとする

一応 作品としてみてもらえるように工夫して
でもそれはむしろ
排泄物にリボンを巻いて手渡すような
醜悪さを放ってはいないだろうか

「贈り物」にするための 技術と知識と時間と体力を
つけるために今足掻いているから
現在 せいぜい茹でジャガの腕
五年以内にカニクリームコロッケを作ってみせる


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