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「山のは」より - 2023/11/8 立冬

拝啓 お変わりありませんか。私は少し体調を崩していました。言うまでもなくこの突然の寒さ到来が原因の一つでしょう。そんな展開になるのだろうと覚悟はしていましたが、長すぎる夏が終わったとたん、堰を切ったように季節は進み、今朝は氷が張っている始末。体がついていかないのも、ひとつ多めに見てやってください。

寒くなってきたとはいえ、まだ秋のうち。紅葉は綺麗に色づいて日々の車の運転も気持ちよく。そして何より茨城県は食材の宝庫です。先日もお米の美味しさについて書きましたが、秋は柿に林檎に栗にさつまいもにきのこに…挙げればきりがありません。

近所で畑をしている方からいただいて魅力に気づいたのはマコモです。最近注目されている農作物のようで、田舎に移住して農家を始める若い世代でもマコモ栽培をする人がいるのは知っていましたが、実際に食してみたのはこちらに来てからです。

茎にあたる可食部分はマコモタケと呼ばれ、「タケノコのような」と形容されることが多いですが、もう少しほくほくした食感でえぐみもないし、なんとなくコクがあってだんだんクセになってきます。おまけに栄養も豊富。新鮮なものは生でも食べられるので、わさび醤油をつけてみたり、焼いたり、炒めたりしても美味しいです。

驚いたのはマコモのパウンドケーキなるもの。マコモの葉の粉末が練り込まれているのですが、抹茶のような風味と爽やかな甘さのバランスが良く、手が止まらないのです。売られているのはマコモを特産とする茨城の潮来市(いたこし)。「茨城マコモ」、これから来るかもしれません。

葉の中にある、白い茎の部分がマコモタケ [ 写真提供:本田真美(地域おこし協力隊)]
直径3~5cm、長さ15~20cmほどのロウソクのような形 [ 写真提供:本田真美(地域おこし協力隊)]

漆畑ももうすっかり秋の装いです。気温が下がるにつれて雑草の伸びは遅くなり、草刈りをしなくても自然に枯れます。が、そのまま放っておくと畑に入りにくいですし、枯れると草が硬くなって刈りにくくなってしまうので、10〜11月に最後の草刈りをしておきます。気候も良いので一年のうちでは一番快適な草刈りです。朝、まだひんやりとした空気の中、漆畑のある山へ登っていくと、周辺の山やまには低い雲がかかっていました。朝日が照らす山と雲海の広がる景色は、一夏の辛い草刈りを乗り越えたご褒美の様に美しいものでした。

そして、別日にもう1箇所。快適な季節なので少し余力もあり、いつもは管理を委託している畑の草刈りも手伝わせてもらいました。2年前に植栽して以来、地主さんが草刈りをしてくださっているので、私がここで草刈りするのは初めて。日当たりの良い南斜面で120本ほどの漆が植っている見事な畑で、苗木は皆元気そうでした。

草も伸びているとはいえ見通しも良いのでそんなに大変なこともないかな、と意気揚々と草刈りを始めたのですが、下の道路から見上げるのと、中に入ってみるとでは大違い。思いの外背の高い雑草が立ち塞がって、前へ進むのも一苦労。おまけに想像以上の急斜面で(植栽の時経験していたはずが忘れていました)、場所によっては立っているのがやっとという中、刈払機を振り回しなんとか道を切り開いていきました。酷暑の中、この急斜面の畑で御年70過ぎの地主さんが草刈りをしていてくれたのだと思うと、本当に頭が下がります。

そして、普段自分たちが管理している畑は、現地の先輩方の計らいで、日当たり良好・緩やかな斜面・肥沃な土地の三拍子揃った本当に扱いやすい畑を紹介していただいたんだということに改めて気付かされたのでした。

緩やかな斜面に整然と並んだ漆の木

漆の畑を管理するということは並大抵の努力ではなし得ない、本当に偉大な仕事です。この仕事をつないでくれている方々に少しでも光が当たる様に、何をすべきか、思考を巡らせている今日この頃です。敬具

宜しければ「工房 山のは」の活動にご支援をお願いいたします。いただいたサポートは、奥久慈漆の植栽、漆畑の管理等の活動に充てさせていただきます。