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星の王子様

ちょっと前の話ですが、星の王子様の舞台を観てきました。

https://www.toricot-little-prince.com/

星の王子様ミュージアムで手に入れたフライヤーを見て、神奈川県内だから観に行きやすそうということで、あまり深く考えずに行ったのですが――、オープニングアクトで、なんだかちょっと不思議なことに気づきました。地元で活動されている方のバトンのパフォーマンスがあり、バトンと星の王子様とどう関係あるの……? と思ってよく見てみると、「プロアスリート」という文字が。アスリートって、スポーツ選手のこと? なぜに?
そうこうしているかちに、舞台が始まりました。
今回の舞台は単なる演劇ではなくて、新体操やバトンなどの、さまざまな競技の第一線で活躍されていた方、あるいは現役で活躍されている方々が、パフォーマンスをしつつストーリーが展開されていく、というものだったのでした。

私にとって星の王子様は難解な話で、三田誠広さんという方が書いた『星の王子様の恋愛学』という本を介して、ようやく「よい話だ」と思えた、という経験があります。三田誠広さんは、高校生のときに星の王子様を愛読されたとのことで、そのことを知った上で作品を読むと、ところどころに、星の王子様の影響を受けたのではないかという箇所が見受けられます。そうして今回思い出したのは、『エロイカ変奏曲』に出てくる、ベートーヴェンの手稿から引用した言葉でした。

「おまえは、もう自分のための人間ではありえない。ただ、他人のための人間でしかありえない。おまえの幸福はおまえ自身の裡と、おれえの芸術のなかのほかにはない――」

「音楽ノート」小松雄一郎訳・岩波文庫より

その作品には、ピアニストが出てきます。ピアニストとして活躍するような人は、人生の大半をピアノの訓練に費やしているわけです。最終的には自分がやりたいからやっている、ということになるのでしょうが、それだけではなく、それまでの先人たちのやってきたことを引き継ぐために、もはや自分の自己満足のためにやっているのではないのだ、という話になるのです。
舞台を観ながら、絶対に失敗できないアクロバティックな演技や、バトンを宙に投げて軽々と受け取ってしまうさまや、人が二人乗った跳び箱を軽々と越えてしまうような、そんな人たちを見て、軽々となんのこともないようにやってのけているけれども、ここに来るまでにどれだけ気が遠くなるような日々があったのかと、あの言葉を思い出しました。


また、今回の舞台を観てとても印象に残ったのは、王子様がいつも笑っていたことでした。確かに本には、しばしば笑っている様子が書かれていたのですが、挿絵では、特に笑顔の場面がなかったせいか、私の頭の中の王子様は、特に笑ってはいませんでした。
また、バラの可愛いらしさについても、あまり意識していませんでした。本を読み、王子様がバラを大事にしていたことは知っていたのですが、やはり挿絵の印象なのか、それほど可愛い花だという印象はなかったのですが、今回の舞台のバラ役の方は、本当に可愛らしかったです。表情や、動き、可憐にリボンを回す様子が、本当に、あのバラは華やかで可憐で、守っていてあげないとあっという間に散ってしまうような、儚さも感じられました。


今回チケットを取ったのか数日前だったのですが、なんと席が一番前で、演者の方の表情までもがはっきり見えました。ものすごく迫力があり、得難い体験でした。
またこうして、知らない世界を少しずつ知っていけたらうれしいです。


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