ちょうどいい人

彼はちょうどいい人だと思う。

背は178cm。細くて脚が長いけど程よく筋肉がついていて、お腹はちょっとぷにぷにしてる。

髪型は黒髪マッシュ。最近流行りの韓流アイドルみたいな顔立ちで、笑うと目が線になる。

関西出身で、有名な大学を出ていて、きっとすごく頭が良いのだろうけどそれを見せないように上手く力を抜いて私に接してくれる。

キッチンに立って一緒に作った肉じゃがも、お互い仕事終わりでクタクタになって頼んだ宅配ピザも同じくらい美味しくて、彼の家で観るドラマはどれも面白くて、なんとなくで観た洋画はよく分からなくて気付いたら2人とも寝てしまっていた。

そういう一つ一つの日常のピースがカチッとハマるような感覚があって、彼といる時間はとても居心地が良くて、ちょうどいい。

そうやって週に1度会うか会わないかの関係も、ちょうどいい。

彼とのセックスは楽しい。彼は果てそうになると「もう死にそうやわ、死んでもええ?」と律儀に聞いてくる。毎回射精することを"死ぬ"と表現する彼が面白くて、事後二人でベッドに倒れ込んで「あー死んだ、もう無理死んだわ」と息も絶え絶えになって呟く時間も好きで、このくらくらするような熱がずっと続けばいいのに、と思う。

ふと何気なく「明日急に死んじゃうかもしれませんよ」と笑って言った私に対して「死にたくないなぁ、」と呟いた彼を見て、"私と彼は違う人なんだ"と悟った。

彼はきっといつかいなくなる。私が手を伸ばしても到底届かないような、もっと凄いところに行ってしまう。そんなことわかってる。

でもそれまでは、このぬるくて幸せでちょうどいい恋人ごっこみたいな関係がいい。



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