平凡な家庭

小学生の頃、よく橋の下でブルーシートで暮らしてこいと言われた。いらないカラーボックスに服を入れられて、追い出されそうになった。

両親はいつもお金のことで喧嘩をしていた。毎回怒鳴り合い。うんざり。お酒を飲んだ父はいつもキレていた。私は父に反抗してしまうから、結局口を押さえられたりヘッドロックされたり逆さ吊りにされたりした。正直怖かった。
両親で大喧嘩になった時、姉が「警察呼ぶよ!!!」と叫んだの、忘れられない。
家のチャイムが鳴って、母が「児童相談所かもしれない、連れてかれちゃうよ」と脅してきたの、その頃の私は本当に近所の人が通報して児童相談所の人が来るかもしれないと、ものすごく恐怖だった。

旅行先では、ビールを飲みたい父とビールが嫌いな母で喧嘩をして、母が道端に小銭を投げつけた。そんなに飲みたいなら買ってこいよって。外だから恥ずかしかった。ホテルに戻って、母と姉と3人で、ルームサービスを食べた。部屋の窓から花火が見えた。

中学生の頃、父に首を絞められた。息が荒くなって、過呼吸になりかけた。父と2人でお留守番した時も、激しい喧嘩をして、「死ぬ」と思った。何があったかは忘れてしまったけれど、とにかく命の危険を感じたということだけは覚えている。

私は、家族みんな揃っている時、誰も喧嘩していない場面なんてあったかなと思ってしまうくらい、喧嘩の記憶が残りすぎている。

私が生まれる前、父はパチンコで借金をしていた。その話を小さい頃から何度も母に聞かされていたし、私は父が大嫌いだった。キレた時の父は最悪で、母の髪にガムをつけたり、カビキラーを顔面に向かって噴射したり、物を投げたり壁を蹴ったり。そういうところが大嫌いだった。
それでも、機嫌のいい時はすごく優しい人なのだ。だから私は父のことが大好きでもあった。

時間が経って、私は父に似ている部分に苦しめられている。今の私は、父のことが嫌いという気持ちが大きい。全てが父のせいというわけではない。けれど、私はどうしても父を憎んでしまう。

昔のことなど、思い返しても何も意味はないとはわかっている。親のせいではない。自分が全て悪いことはわかったうえで、それでも少しは影響しているのではないか。私が怒りでどうしようもなくなってしまうこと。何をしでかすかわからない自分が怖いこと。不登校になったこと。そこから悲観的になったこと。定期的にしにたい気持ちになること。私の父が父でなければ。もっと温厚な人だったら、私もすぐにキレるような人間ではなかったかもしれない。私の親が仲良しだったら、不登校にもなっていないかもしれない。喧嘩ばかりする激しい家族ではなければ、私はこうやって親のせいにすることもなかったかもしれない。

親不孝者だとわかっている。本当にごめんなさい。こんな娘で、私は本当に最低だ。でも、どうにもできない時、幸せな家庭を目にした時、誰かの親の話を聞いた時、嫌な思い出ばかり考えてしまう。どうしても、父のことを許せない。許せないと思ってしまう自分も気持ち悪い。

よくわからない。ただ、時々こういうことを思い出して、どうしようもない感情に襲われるというだけだ。

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