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科学コミュニケーション 記事まとめ

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科学コミュニケーションに関する記事をまとめています。
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#科学

知識のアップデートの必要性、どれくらい理解されている?

新型コロナウイルス感染拡大が止まりません。 第5波の特徴は大きく二つ。一つは新型コロナウイルスの中でもデルタ株と呼ばれる種類の感染力が、これまでの種類よりも大きいということ。もう一つはより若い世代でも感染するということ。 後者については、18歳未満の子どもの間でも感染が広がっていることが、ワクチン接種の進んでいるイスラエルやアメリカといった国で報告されています。マスク着用義務の緩和など示していた国が、もう一度着用を促すなど、これまでの政策からの転換が見られます。 先にあ

科学の「先端」は「すみっこ」と紙一重

「先端科学」「先端技術」「最先端の研究」って、どんなイメージでしょうか? 未来的? すごい? 逆に、先端を行ってない科学技術の価値はなんでしょうか。 今回は「先端」という語を切り口で、科学や技術をどう語ることができるのか、考えてみたいと思います。 戦後、経済が急成長する中で、日本は最先端の研究を行い、最先端の技術を多く生み出してきました。けれど、当時最先端ではない技術を集めて作られた「iPhone」は、残念ながら日本からは生まれませんでした。 日本に足りないのは、イ

科学教育と科学コミュニケーションの違い #3 マーケティングと広報

このnoteでは「科学教育と科学コミュニケーションの違い」について、方向性と文脈という観点からこれまで私が考えてきたことを整理してきました。 今回は、科学教育の理念とは全く異なるところから科学コミュニケーションを捉えてみます。その一つが今回紹介する「マーケティングと広報」という観点です。 マーケティングと広報が科学コミュニケーション?まず素朴な疑問として、マーケティングや広報が科学コミュニケーションとなりうるかという点について触れておきます。 結論から言うと、なります。

科学教育と科学コミュニケーションの違い #2 文脈

同タイトルで、前回は方向性の違いについて書きました。 その中で1番最後に次のようなことを書きました。 科学教育と科学コミュニケーションの違いを考える別の論点も考慮する必要があります。それは、フォーマルとノンフォーマルの違いです。 今回はその続き。フォーマルとノンファーマルに関係する「文脈」の違いについて整理します。 フォーマルとノンフォーマルの違い教育学の世界では、教育環境の違いから「フォーマルな教育」「ノンフォーマルな教育」「インフォーマルな教育」という3つの概念を

科学教育と科学コミュニケーションの違い #1 方向性

これまで考えてきたことを少し言葉で整理してみようと思います。今回は、科学教育と科学コミュニケーションの違いについてです。 前提として、この違いは大多数の人にとってはどうでも良い話だと私は認識しています。多かれ少なかれ誰かがこのどちらかに出会う機会があったとして、それがどちらかであるかは重要ではありません。これはあくまで出会いをつくる側の都合の問題です。 しかし、科学の出会いをつくる人間が勘違いをしていると、伝えたいものが伝わらず、浅い学びしか提供しないといったことは起こり

私が「科学エデュケーター」を名乗るワケ

私は最近自分のことを「科学エデュケーター」と名乗っています。 別にこういう肩書きがあるわけではなく、ただ名乗っているだけ。この記事を書いている時点では「科学コミュニケーター」という別の肩書きを持っていながら、敢えてこの肩書きを名乗っているのには理由があります。 教師(ティーチャー)ではない現職の前は、理科の教師をしていました。その時は「教師」とか「教員」と名乗っていればよかったのですが(もっと正確に言えば「教諭」)、現在は科学館に勤めているので、その肩書きを使うのは誤解を

不登校生に学んだコミュニケーション

科学コミュニケーターという仕事に就く前は、地方の理科教員でした。 主に中学校と高等学校を7年。うち2年は大学院に通いながらの非常勤講師。学級担任を受け持ったのは3回、副担任を加えると4年。経験豊富とは言えませんね(苦笑)。ただ、コミュニケーションスキルという意味では、今役に立っている私の技術の大部分は、この期間に身についたと言えるでしょう。 なかでも、不登校になった子どもたちや保護者と付き合ったことが大きく影響しています。 数えてみたら、担任を受け持った3年間の間に約3