「表現される側」と「接しない自由」から見る「東京都男女平等参画推進総合計画の 改定に当たっての基本的考え方について 中間のまとめ」を読んだ感想

どうも、最近ようやく絵を描くときに歪みを調整できるようになった筆者です。うぅっ……世の中には半年で上手くなる人もいるっていうのによお……身体や見え方が歪んでるとつらいぜ……

 それはそれとして。昨晩日課の「それ以上いけない」リスト(Twitterのリスト機能のやつ)を巡回していたところ以下のツイートを見つけました。

 千葉県松戸市のVtuberの件や選挙前の共産党の件に引き続き面白いことが起きてるなあと思いつつ、善良な1都民かつ過去に社会情報学(社会学じゃないからな! 決して!)の学徒だった者としては多少考えていかないといけないと思い、最初から読んでみた次第とその感想です。以下のURLは本文(以下「当まとめ」と呼称)。

https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/danjo/shingikai/files/0000001644/03haibou.pdf

 感想はTwitterにも放流してあるんで、リアルタイムで呟いたのはこちらでどうぞ。

https://twitter.com/i/events/1457389178933563392

1.前まとめ

 それじゃ結論から言いますと、元ツイートで問題となっていた部分は最後の2ページ分にも満たない箇所で、配偶者暴力対策を主題とする当まとめの中では枝葉末節もいいところでした。配偶者暴力対策が35ページくらい、その他性暴力については10ページほど。比率からすると無理矢理ねじ込んだ感ありますね。

 全体の感想は「こんなことやってきたアピール+これからの方針はいいけど出典元の記載が不充分で、レポート課題でももう少しマシなもの書くと思うよ」だけど、問題の部分は「矛盾の塊の造語出して主張しかしていない」みたいなものでした。その部分だけ深夜テンションで書き足した気がします。

 とはいえ、女性だけの数を出したり加害者ケアについては男性に対してしか記述が無かったり、全体的に女性を主題にしていきたい、と感じる部分は多いですね。男女共同参画の理念に反してない? と首を捻る部分は多々あります。

 あと比率と数値を使い分けるのも多かったですね。とはいえ、これは元となる調査の時点でそうなので、当まとめだけを一概に責めるのもどうかとは思います。ただ、元となる調査へのリンクやページが当まとめ内に貼られてないので、このnoteの最後にまとめて貼っておきます。

 あ、当まとめの後半に参考資料と銘打って40ページ近くを占拠してるのは、関連する法律や方針の羅列で、一般的に資料と呼ばれているものではないです。

 まあ性犯罪に関連する調査が女性被害者を主体とした書き方になるのはいまに始まったことじゃないし、まとめる側が都の職員みたいな専門的な教育を受けてない人なら恣意的なまとめになるのも理解できるかなあ。それはいいことではないんだけど。都もこういうところには少しは統計データを扱ったことのある専門的な人材を使ってほしいですよね。

 それはさておき。

 配偶者暴力対策については男性側の視点が少ない点や出典元の記載が不充分な点を強引に無視すれば一般的なものでした。後ろの2ページとの温度差で風邪引かないでね。

 あと面白かった記述がいくつか。

 まずはP.28から始まる「自立生活再建のための総合的な支援体制の整備」の内項目について。

P.32より引用
「都実態調査によると、都の配偶者暴力相談支援センターで面接相談を受けた被害者の半数近くが無職(主婦)であり、被害者の約8割は子供がいると回答しています。」

 この前段では特に性別を規定していないけど、ここで明確に男性を置いてけぼりにしてるのね。いや、無職の男性に彼女がいることはほとんど無いから、被害者に男性がいない可能性もあるけどさ。

 ただ、少し怪しいのは、この「都の配偶者暴力相談支援センター」ってのは「東京ウィメンズプラザ」及び「東京都女性相談センター」っていう女性向けの支援施設のこと。前の「東京ウィメンズプラザ」は男性向けの相談も受け付けているそうだし実際は両方への支援もあるだろうけど。

 それでも、性別を明らかにせず「被害者」で記述してきた「自立生活再建のための総合的な支援体制の整備」についての項目は実際は女性への支援の話だった、って可能性も出てくる。ここは子供づれの被害者について話を持っていっているから、「子供連れの被害者はほとんどが女性である」っていう自分の偏見に惑わされている部分もあるかなあ。実際はひとり親家庭でも父子家庭もあるし。

 ついでにP.35より引用
「都では、配偶者暴力のある家庭の子供とその母親を対象に、心の傷の回復を側面から支援するため、遊びなども採り入れて友達とのコミュニケーションの取り方などを継続的に学習する講座を実施しています。」

 ここでも父親が対象となっていないですね。ちょいちょい男親に対する仕打ちが酷いのは、都の対応にも問題があるんじゃないなか、とも思います。女性が加害者の場合どうするのよ。

 それと関連するのはP.27で「「配偶者暴力被害者支援基本プログラム」に、加害者対応の項目を加えるなど改定を行ってきました。」「 男性の悩み相談の中で、男性加害者からの相談を受けてきました。」とある箇所。女性加害者についての相談を受けてないってことは、一部の加害者へのケアができてないんじゃない? 女性へのケアを怠るのはらしくないですよね。数値を引っ張って来ている資料にも、女性加害者は存在するってデータもあるんだし。

 次はP.46以降の「性暴力被害者に対する支援」の項目。「〇」で箇条書きにされているのに接頭語が多くて連続した文章になってる感じがすごい。早口でTwitterに書き込んでそうな熱量を感じる。

 その流れでP.49の「ストーカー被害者に対する支援」の項目だけど。

 初っ端から「ストーカー行為は重大な人権侵害であり、社会的にも許されない行為です。」ですって。「社会的」使っちゃうかー。ストーカー規制法云々も記述しているのに「社会的」を使った時点で胡散臭くなるのなんだろうね。東京都、ならびに当まとめを企画した主催者が「社会」を規定しようとしている雰囲気を感じるからかな。というかストーカーが社会的に許されていた時代なんて無いのに、それを書いちゃうところが活動家っぽい。

 ついでに以下のようにインターネットにも言及してるのよね。

「コミュニティサイト(同じ趣味や興味を持つ人が集まるウェブサイト。掲示板やチャットルーム等が設けられており、情報交換や交流が行われる。)やオンラインゲームなどで知り合ったことから、ストーカー行為につながる例もみられます。」
「若年層に対して、ストーカー行為に遭った時の対応方法とともに、例えばSNSに掲載した情報や写真から個人情報が漏れることがあるため安易に掲載してはいけないなど、電子メールやインターネット、SNS等の利用に関する正しい理解を促す必要があります。」
「また、ストーカー行為の危険性や、インターネット利用等に関する正しい理解を促すための啓発を行う必要があります。」

 確かに真ではあるけど、ちょっとした伏線に思えてくるのさ。穿った見方かもしれないけど。

 そんでセクハラについての話題はインターネットに触れずに進んで、ようやく問題の箇所に到達ですよ。

2.「性・暴力表現等への対応」の項目について

 さーて本丸です。P.53の問題の箇所を丸々引っ張ってくるわね。

○ 表現の自由を十分に尊重しつつ、表現される側の人権や性・暴力表現に接しない自由、マスメディアや公共空間において不快な表現に接しない自由にも十分な配慮を払う必要があります。 

 とりあえず、上段が意味不明なのは分かるかしら。まず見慣れない言葉が2つ、「表現される側」と「接しない自由」があるよね。中々矛盾した造語だけど、もやもやを晴らすためにちょっと解説しましょか。

 まずは「表現される側」。そもそも表現は、基本的には能動的な立場に立って行われるもので、される側は受動が基本です。それを「表現する側」と同じ立場にあるような書き方はミスリードを誘うものですね。

 「表現する側」には内心を表に出す自由があり、「表現される側」には内心に従って表現を受け取るか受け取らないか判断する自由がある。ただし、表に出た表現を内心に閉じ込める自由はない。

 次に「接しない自由」。いや、接するのは能動的な行為だし「自由」も能動的な行為だからそんなの当たり前では。不快なものが目に入ったら目を背けることができる、それが「接しない自由」でしょう。

 だから、ここに「配慮」なんてできやしない。相手が「目を逸らす」行為に配慮するのは不可能です。

 この受動的と能動的な行為の2つを繋げているから、この文章には矛盾が生じています。そこに「不快」を挟めば個人の心象を基準にモノを語ることとなる。つまり、こう言い換えることができます。

「表現を受ける側である者が不快と思うだろう事物が目に入らないように、表現する側は努力しろ。不快だと思われる表現は出てくるな」
(ここの「思われる」は「(相手から)不快だと認識される」と「不快だと推測される」のダブルミーニングです)

 端的に言えば「表現する側は自主規制しろ」です。はい、いつものやつ。こんな簡単なことを言いたいがために長々と書いたの「表現される側」や「接しない自由」なんて造語を生み出したのは、さすがにそのまま書くのはマズいからでしょう。

 ああいや、実際に表現規制だと思ってない可能性も無くはないです。「不快なものを目に入れたくない」と思うのはだいたい普遍の心理ですから。ただ、相手に「配慮」を求めるのは「おうオマエんとこのアレ、表に出すと傷つく人がいるんだよ」と迫るヤのつく職業と同じことしてますよね、って話です。「接しない自由」があるんだから無視すりゃいいのに、と思うんですが。

 でもまあ、P.54で取組の方向性に「メディア事業者自身による暴力や性表現の自粛等、自主的な取組を促すことが必要です。」って書いてあるんだし表現規制と考えてるんでしょう。さすがにそこまで厚顔無恥ではなかったです。共産党のように「売れなくなれば作る人もいなくなるから、そうなるように社会的に圧力をかけましょう」よりはまだマシな部類です。だって直接「自主規制して」って言ってるんですから。

 さて、石原慎太郎の怨念でも宿っているのかと思われる2ページでしたが、一番大きな問題があります。それは東京都が表現規制に乗り出した問題じゃないの、と思った人もいるでしょう。それ以上に大きなものは、これが「性・暴力表現への対応」の項目にあるというだけで、これを実施する意義や意味、その結果への予測が記載されていないことです。

 文だけを見れば「性・暴力表現を無くそう」としか見えないです。すると文脈や行間を読まないといけません。多分、言いたいのはこうでしょう。「表現規制で性・暴力犯罪を減らそう」。

 暴力や性表現が無くなることで実際の犯罪が減るのか、データも出さずに論じられるそれがどれだけ的外れかはTwitterの「それ以上いけない」ことばかり言うロジハラ集団に任せておいて。そんなこと以前に配偶者暴力対策ではデータ出してたのにここでは何も無いのが色々物語ってる気もしますが。

 しかし曲がりなりにも行政が提出したものに対し文脈や行間を読むなどという不届きなことは行えないです。なので書いてあることだけを読みます。すると、この項目に書かれていることだけでは理念にすらなり得ません。ただ「不快なものは自主規制して」しか残りません。

 しかも「性・暴力表現」の項目で述べており、「性・暴力表現」に限定しているのが姑息ですね。そこを通したら直接関係無いものでも規制の幅を広げられるじゃないですか。ダムに蟻の穴を開けたい、と言われて頷く者はいないでしょう。

3.後ろまとめ

 長々と書いて来ましたが、言いたいことがあればパブコメ送りましょう。提出方法等詳細のURLは以下です。

https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/danjo/shingikai/0000001644.html


出典元のURL記載がないから、多分これだろうと探してきたもの

・令和2年度の内閣府「男女間における暴力に関する調査」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h11_top.html

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/r02danjokan-gaiyo.pdf


・配偶者暴力被害の実態と関係機関の支援の現状に関する調査

https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/danjo/dv/0000000646.html

https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/danjo/dv/files/0000000646/dv-c-houkoku.pdf

・東京都総務局が実施した性犯罪・性暴力被害者に対する調査

https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/base/upload/pdf/CV_investigationAbstract.pdf


 

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