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でくのぼうと鮮魚コーナーの女児とふわふわ

夏の夕方。スーパーの魚売り場で小学生低学年くらいの女の子がこちらをありえないくらいガン見してきた。

魚売り場に向かいがてら、なんだか女の子ふたりがディスプレイによりかかって駄弁ってるな〜とは思ったが、こちらに関心が向くとはまさか思っていなかった。

見てないようにチラ見するとか目線の端で見るなんて遠慮は一切なく、顔を上げてものすごくこちらを見てくる。

しかも身を乗り出してまでこちらをのぞきこんでくる。

視線の先に私以外のものはなさそうだから勘違いとかではないはず。なにか見透かされている?と不安になる。

魚売り場のおさしみコーナーは夕方で特に混んでるしこの先の品物も見たいからその場を少し移動してもらえたりする?と口に出さずに思う。

こちらをガン見してくるこの子はさっきお酒売り場ですれ違っている。

カートに別の同じ歳くらいの女の子を乗せ、ガラスビンがひしめくお酒売り場めがけて勢いよく蛇行しながら通路に突っ込んでいったのを見た。

あーあと思いながら目をそらし、その時は無事を祈っただけだった。

今こちらを見てる女の子はヒールのある冬用のブーツを履き、服は黒の上下。
もうひとりの子は真逆のピンク。
女児界に於いて黒の逆はピンク。
それぞれしたい格好してるんだな、というのが伝わってくる。

まだこちらを見ている。
ただただ無邪気なため、こちらを純粋すぎる好奇心で見ているのがわかる。親らしき姿は見えない。

さっきまで魚に興味なく駄弁っていたその女の子が、
前にも後ろにも進めずぼーっと突っ立っているだけのでくのぼうの自分をまじまじと見ている。
もう片方の子は飽きて親か誰かを探しはじめている。

このまま女の子のほうを見れば目が合ってなにか言われる可能性があり、対応に自信がなかったので、とにかく視線に全く気づいていないふりをした。
私はその日、女の子からすれば若干特徴的な格好をしていたので気になったのだろうか。

状況から逃れたいがどうすることもできないので被害妄想のようなものが頭を駆け巡る。


これあんた食べる気あるの?そもそも興味あったの?買い物する気ある?あんたみたいなのがこれ買う?歳いくつ?カートもかごも持ってないけど?何その格好?ここどいてほしいの?気づいてないのはフリでしょ!大人としてダサい。金ないの?どうやって生きてるの?


いい大人の足がすくむ。あはは…。
逃げたらより見下され嘲笑われる気がしたのでそこから動けなくなった。

するとお父さんらしき大人がふたりの名前を呼んでどこからかやって来た。勝手に厳つい見た目の親かなと思っていたが全く違った。

そのお父さんらしき大人はふわふわと来て、
見たことないくらいふわふわへにょへにょした口調でしゃべる。

そしてふたりのわがままな要望を聞きながら、
ふらふらとどこかへ連れていった。


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