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セックスレスの話①自覚編



【注意】
これは一人のレスられ女の過去日記みたいなものです。レス解消の参考になりません。


セックスレスとは、日本性科学会によれば、「病気など特別な事情がないのに、1ヶ月以上性交渉がないカップル」と定義されている。しかし、便宜上「カップルのうち、どちらかがセックスをしたいと望んでいるのに、長期間それができない状態」を総じて「セックスレス」と呼ぶのが一般的な解釈である。 (Wikipedia)





我々カップルはセックスレスで、私はレスられ(拒否されている)側である。
カップルと書くと若い二人のことに見えるが、十年以上生活を共にしておりお互いすっかり中年だ。
五、六年は結構な頻度でセックスをしていたはずだが、いつからか年単位でしないことが普通になってしまった。正確な時期は覚えていない。


なんか最近してないぞ?と焦り、私から誘ってセックスを試みた。最初はこれでできた。しかし向こうからは一向に誘われない。
しばらく経つと打率が下がってきた。

「今日は疲れてるから今度ね」
「なんか腰/頭/お腹が痛い」
「え〜眠いからまたにしよう…(寝落ち)」

「今度」が来るのは二週間先だったり、一ヶ月先になったり、三ヶ月、半年…どんどん間隔が空くようになった。
しばらくの間は当たって砕けろ精神で頻繁に誘っていたが、お誘いが成功する確率は1%もなかったように思う。定期預金の金利より悲惨な数字だ。いつのまにか断られるのが当たり前になってしまった。

そうか、うちはセックスレスなんだ。
自覚したことで地獄が始まった。自分がセックスを断られる側だなんてことに気付かず「まあもうしなくてもいいかな」と思える時期まで日々を重ねていけたら、どれだけ幸せだったのだろう。


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自覚してからは暇さえあればこんなことばかり検索するようになった。ほぼノイローゼである。


【セクシーな下着を着てみよう!】
そんなもんとっくに実践済みだ。こっちは誰でも考えつくようなことを全て試して結果がついてこなかったから「セックスレス」と必死に検索しているんだ。誰だこんなクソみてえなアドバイスを堂々と発信してるのは。
そもそもこういった記事の筆者は「セクシーな下着を着て断られた場合」を想定しているのだろうか。あれは死ぬほど恥ずかしいし惨めな気持ちになるものだ。失敗時の精神的ダメージが大きすぎることを安易に提案しないでほしい。
勇気を出して勝負下着姿を披露し、これで彼氏の息子もギンギンねと思いきや「ハハ  ウケる」と流された女の気持ちをもう少し考えるべきだ。


【場所を変えてみよう!】
旅行先でもしなかったんだけどどうすればいいですか?此岸から彼岸に場所を変えればいいですか?エッ死ねってこと?


【たまには女の子から積極的になってみよう♡】
積極的に誘って断られっぱなしだから今こうやって血眼になって解決策を探してるんですよ♡


【全てを見せたら男は飽きる!いつまでも恥じらいを忘れないように☆】
それは解消というより予防では?もしかして:手遅れ



夢中になれる趣味を持てだの自分を磨けだの、言いたいことはわからないでもないがレスられて悩み苦しみの真っ最中、他のことに目を向ける余裕がない状態の人間には酷である。
今最も夢中になれる(なってしまう)ことは「レス解消の糸口を探す」だし、そんな状態でどう自分を磨けと言うのだ。

内面なんてすぐに磨けるものではないしそもそも磨き方がよくわからない。では外見ならどうだ。別に彼氏のためではなく自分のためだもんねもんねと己に言い聞かせ、気合を入れて髪や肌の手入れをしたことは私にだってある。おそらくレスられた女性は皆似たような行動をとったのではないだろうか。

サプリだの筋トレだのパックだのスクラブだのトリートメントだの、別にこれは自分のためだしィと予防線を張りつつあれもこれもすればするほど「私今日こんなにスベスベなのにどうせセックスしないのよね」と乾いた笑いが出るだけだった。

なんでもかんでもレスに結びつける癖ができてしまうと、外見を磨く努力は全て「こんだけやってもどうせしないのに」に帰結してしまい、彼氏がいようがいまいが関係なく行っていたムダ毛の処理ですら「どうせ…」と落ち込む材料にしてしまう。

いっそ「激太りしたから抱かれない」くらいわかりやすい理由があれば、こちらも納得できるかもしれない。
ああわからない…もうなんでもいいから納得したい…そうか20kgくらい太ればいいのか…?とわけのわからん考えに陥ったこともあるが、いくらなんでも馬鹿馬鹿しすぎて実行しなかった。
現在私は病的に痩せているわけでも膝に負担がかかるほど太っているわけでもないし、そもそもセックスのあった時期と比べて体型が変化したわけでもないのだ。わざわざ進んで健康を害する必要はない。



セックスレス「解消法」だなんて大層なことを謳っている記事にありがちなことだが、最後まで読むと「進むべき道をお教えします」と謎の占いサイトに誘導される。離婚に強い弁護士のサイトに飛ばされることも多い。その都度「ま〜たこれかい!」と捻りのないツッコミを入れ、スマホをベッドにぶん投げていた。
宣伝に誘導するための呼び水として綴られた中身のない文章。それでもいい、ヒントになることが一つでもあれば…と願いながら、あれもこれもと読み漁った。


そもそもセクシーな下着だの場所を変えろだのたまには誘ってみようだの、それらで解決するのは深刻なセックスレスではなくただのマンネリ(倦怠期)なのだ。
こちとら倦怠期なんぞとっくに過ぎた。むしろ倦怠期でもセックスはしていた。惰性でのセックスすらなくなったからセックス「レス」なのだ。
こうなりゃマンネリ打破でもなんでもいい、ヒントはどこだ、どこにあるんだ。藁にもすがる思いとはまさにこの状態を指すのだろう。

残念ながら願いは届かなかった。藁すら見当たらなかった。レスについての記事をあれこれ読んだが、私にとって収穫と呼べるものはなかったのだ。
サガミオリジナルより薄〜いアドバイスの最後に添えられた「いかがでしたか?」に「いかがでしたかじゃねンだわ!バーカ!」と頭の悪そうな暴言を吐くことしかできなかった。



「セックスレス」で検索してうっかり「私はもうなくていいのに旦那がしつこくて」といった妻側レスの意見を目にしてしまい、そうだよな普通レスって言ったらこっちだよな…男性はしたがるものなんだよな…と落ち込んだことも多々ある。
しつこい旦那をお持ちの方もそれはそれで大変なのだろう。しかし「男性はしたがるのが普通」という事例や風潮を目の当たりにすること、レスられている私にとってはこれがかなりキツい。

求められず迫っては断られる状態が続くと、もう女としてのプライドはズタズタである。
そもそもセックスレスを自覚するまで「女としてのプライド」なんて意識したことがなかった。悲しいかな女だからとチヤホヤされてきたタイプでもなかったのだ。ズタズタになったことで初めて「女としてのプライド」とやらが自分にもあるらしいことに気付いた。

私は生まれもったこの体や性的な欲求を、他の誰でもなく「パートナーに」受け入れてもらいたい。男女差はなく人間としての欲求だと思っている。
こちらの要求を無視されている状態は辛いものだ。
「あなたは私の望みを叶えようとは思わないのね。じゃあ私はあなたにとって『そこまでしてやる価値はない人間』てことなのね…」と自尊心が傷つく。
自分が他人に、ましてやパートナーに軽んじられていると実感してしまったら、自己評価は下がるに決まっている。
そこに「男はセックスしたがる生き物」という一般的な価値観が合わさって「普通男は断らないものなんじゃないの?エッじゃあ断られてる私って何?相当ダメってこと?マジかよ」と、自分の女性の部分に対してものすごいダメ出しをされているように感じるのだ。

一般的に男性にとって価値の高いものであるとばかり思っていた女性性の否定。これにより今まで気にもしなかった「女としてのプライド」なんてややこしいものが自分の中で浮き彫りになってしまった。

男はどうこう女はどうこうと、性別で決めつけるのは今の時代ナンセンスではないか?私が古い人間で、古い価値観に縛られて余計な苦しみを増やしているだけなのでは?と、己の価値観が間違っている・偏見である可能性を考えたこともある。
考えてみた結果、やはり一般的に「男はセックスしたがる側」なのだ。

戦いやめなきゃヤラせないわよと女性がセックスストライキを起こし、みごと平和を取り戻す…なんて喜劇だって存在する。アリストパネスによる戯曲『女の平和』である。紀元前から「男はセックスしたがる生き物」という共通認識があったことがよくわかる。
風俗店も女性向けより男性向けの方が圧倒的に多い。金を払ってでも女と性的な接触を試みたい男はとんでもない数いる。やはり世間一般の風潮として、男は「セックスをしたがる側」の性別なのだ。
セックスレスは二人の間の問題なので「普通はこうなんだよ」なんて言うのは無意味、そんなことはわかっていても普遍的とも言える「男はセックスをしたがる側」なんて刷り込みは消えないし、これがあるから余計に苦しむハメになる。

そういえば「♪男はオオカミなのよ  気をつけなさい」なんて歌もあった。どれだけ男はセックスしたがる生き物なんだろう。ニホンオオカミは20世紀初頭に絶滅したらしいが何か関係はあるのだろうか。


「性的な魅力がない=価値がない」なんて思いたくないし、彼氏以外からいくら「全然いけるよ(失礼)」と言われたところで嬉しくもなんともない。
「誰でもいいからタダでやりたいです!」みたいな男性にとっては穴さえあってタダでやれそうなら「価値ある存在」かもしれないが、それは穴に価値があるだけだ。穴も私の一部だが、私は穴ではないのだ。女としてのプライド以前に人間としてのプライドってもんがあるだろう。
…と偉そうなことを言ってはみたものの、まずパートナーから軽んじられている時点で人間としてのプライドはわりとズタボロだ。加えて女としてのプライドとやらも前述の通り浮き彫りにされ、おまけに叩き壊されてしまった。



セックスレスにはさまざまなパターンがあるだろう。私たちカップルの原因はほぼ確実に「飽き」なのだ。私だって同じAVを何年もオカズにはできない。
でもそれならいろんなことを二人で試せばいいじゃないか。女優が同じでもシチュエーションが違えば抜けるじゃないか。そんな気すら起こらないほど私に飽きたのか。こちらは彼氏の腹が出ようが白髪が増えようが「あなたとセックスがしたい」と健気に思い続けているのだ。お前だけ勝手に飽きるんじゃない。経年変化は当たり前だしお互い様だ。バカタレめ。


お互いが選んで一緒にいる異性に自分の体が必要とされていない不安感は、ここまで長々書いておいてアレだが本当に筆舌に尽くし難い。書いても書いても表現しきれない。
私は「とにかくセックスがしたい!」のではない。
「とにかく『私とセックスがしたい!』と彼氏に思われたい!」のだ…



かなりとっちらかってしまった。キリがないためここまでを自覚編とし一旦切る。

②では誘って撃沈する様子と「私としたくないの?」なんて質問をした結果どういった言い訳が返ってきたか、その辺りについて書いた。赤っ恥もいいところだが、書くことで消化&昇華したいのだ。
これまたなんの参考にもならないが「ここまで恥ずかしい思いをした人がいるのね。言っちゃ悪いけど自分の方がまだマシだわ」と安心してくれる人が一人でもいてくれれば幸いである。

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