20になった。ピアスを開けた。
私ごとではありますが、二十歳となりました。
とはいえ、お酒はうっかり飲んでしまうことがあったり、タバコはそもそも嫌いだったり、パチンコも嫌いだったり。大学もないのでサークルの飲み会などもなく。なので20歳になったという実感がまるでない。
とはいえ、二十歳。犯罪を犯せば、テレビで「20歳 男性」として紹介され、少年院ではなく刑務所に。こんな重い話ではなくても、学生証を忘れたら大人と同じお金を払うことになったりして、無自覚にできていた制約から二十歳を実感する。
しかし、さっきかいた「可動域の拡大」としての実感はないし、そこから実感を得ることも難しいだろう。
なので僕はピアスを開けた。ロジックは破綻しているが、まぁ聞いてくれ
ピアスを開けたのだ。これは僕史上なかなか勇気のある行動だっただろう。
遡ること1ヶ月前。僕の20の誕生日だ。その日は親が僕が生まれた時に買ったワインを飲み、思い出話などをし。大事に至らずこの生身で20年も生きたという変な誇らしさに浸っていた。
ピアスを開けたのは就寝する前。寝る直前にその日のバイト帰りに買ったピアッサーを思い出したのだ。
思い出してしまった、があってるかもしれない…
耳たぶを挟み、ギュッとすると耳に穴が開くヨ!と超丁寧な説明を安直に飲み込めるはずもなかったぼくは、恐る恐るパッケージの中から、ピアッサーの本体と対面した。
コの字形の上の方にある針と下の受け皿的なところの間に耳たぶを挟むのだが、やはり怖い。しかし僕は二十歳。その程度の痛みに悶え苦しむほどの体ではないのだ。
ビビりつつも鏡に向かい、耳に奴をセットした。後は力を入れるだけ。
怖い。
自分自身に傷をつけることを20年間したことなかったので、自分が一気に加害者と被害者の両方に立たされる感覚が奇妙だった。
力を込める。ギュッとする。
…硬い
力を入れたがまだ足りないのだろう。多分ここで込めた力はとっても弱かったはずだ。
なのに強く力を入れた気がしたのだ。
「これが20の壁なのか…っ」
と怖気づく。
しかしここで引いてなるものか。あと数分で誕生日が終わる。それまでにこの壁は。なんとしてでも。
もう一度挟む。
そして、力を込めた。
シュパーンっと音がした。
僕の体を金属が貫いたのだろう。
いつのまにか閉じていた目を開け、該当箇所を鏡で凝視する。
そこには銀色の針がたしかに刺さっていた。
ふぅっとひと安心。
なんか、もっと20代の重みッみたいな痛みを期待したが、現代の技術はすごくてなんの痛みも感じなかった。
1ヶ月経って、ホールも安定してきたので、HAREで新調した片耳ピアスを装着。
鏡を見ると少し大人っぽくなった自分になんか照れ臭く感じる。
こうして僕はピアスを開けたのだ。
さて、本題に入ろう。
…開けてから安定するまでの1ヶ月で考えたことがある。
読者に伝えたいのはこっちだ
「ピアスを開けたくて開けたわけではない」
ということ。
冒頭で書いた通り、僕は大学生の実感を、20の実感を得たかったのだ。
この混沌として、不自由な今、僕は自分がなんなのかがわからなかったのだ。
大学生なのだろう。20なのだろう。
それらを確認したい、感じたい一心だった。
酒を飲んだら大学生になれるだろうか
パチンコしたら大学生になれるだろうか
…ピアスを開けたら大学生になれるのだろうか
有象無象になってしまった、大学生活。鬱になっている人の名前もよく聞く。
学校を辞めて働いた方が、ものさしの成長を感じられるだろう。
しかしそう辞める決断もできない中途半端な僕ら学生は、世間に中指を立てるように、いつか終わるその時まで、思い思いの大学生活を送るのだ
…大学生が何かもわからずに。
そう思うと、僕たちが尊く思えてくるのだ。
夢見た“大学生”を感じようと、模範解答のない今各々のやり方で、自分たちの思う大学生を表現している。
そのやり方の一つに、たばこや、パチンコや、お酒や、ピアスなどがあるだけなのだ
…僕自身はそうだった。
とっくに破壊された大学生活を、もう消えてなくなっている大学生活を、
無いと知っていても、夢見て、憧れて、表現している。
これは社会が嫌いだから、就活が嫌だからとかそういう話ではない。「中指を立てる」のは、自分が大学生であることを感じたいから。青春の中にいると信じたいから。
社会人のみんな。あなた達から見たら僕ら大学生をどう思っているだろうか
どう思っていても構わない。
ただ僕たちは必死で大学生を感じようとしている姿を、少しでも理解して応援してくれたらいいな。
僕らは今、表現者だ。みんながみんな、自分たちの思う大学生を表現している。
僕はこんな彼らと一緒に作っていく社会が楽しみで仕方ない。
僕も時期が来るまで全力で、大学生を表現する。
あなたが何なのかは知らないが、あなたもあなたのやり方で、自分を表現して欲しいな
20になった。ピアスを開けた。
…変なタイトルだなぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?