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[ドミニオン攻略]庭師論

この文章はC97で配布した「庭師論」をnote用に構成したものになります。この記事だけでも庭師のことは十分わかりますが、note版はレイアウトの都合上コラムなどの補足説明を省いています。全文が読みたい方や本の形にしたい方は記事の下にあるダウンロードリンクからPDFをダウンロードしてください。

今回予想外に多くの方に手に取っていただいた為、急遽このような形で配布することになりました。そのため会場に来ていただいた方はTwitter@urihari33 までにDMをいただければこの記事を全文見れるように手配いたします。ただしnoteの仕様上メールアドレスをお聞きいたしますので、その点だけ御了承下さい。

執筆者紹介
私、うりはり(twitter@urihari33)は主に東京でドミニオンをしています。四人戦に関してはドミニオン日本選手権2018でベスト4になる程度の実力があります。今回紹介する庭師というカードはお気に入りの一枚で、サプライに合ったら常に庭師を使って勝つことから考え始めます。最近は執筆活動も精力的に行っており、自身のブログ他ダブルボトム1/66様の「Overlord」や「陰謀を遊びつくす本」にも多数寄稿しています。

過去作に関しては以下をご覧ください。

商人ギルドステロの研究記事です。商人ギルドステロに対してデッキのシャッフルタイミングとゲーム終了を見据えながら適切な購入はなにかを考察しています。

TCGでは一般的な概念「メタゲーム」をドミニオンに持ち込んだ記事です。ドミニオンにもメタゲームが存在することを示し、その発生の仕方を紹介しています。

以下本文です。

なお画像はDominionStrategy DominionOnline 様よりお借りしています。

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■庭師とは

庭師はドミニオン:帝国に収録されているカードです。真珠採りにも満たないアクション効果に加えて、追加の点数獲得手段を持っています。しかし獲得できるVPトークンは勝利点1枚につき1VPで、普通に属州を購入するだけでは1VPしか増えません。アクションを消費するとはいえ、記念碑のほうがコストが低く仮想金を出すこともできるのであまり強そうには見えません。属州が6VPから7VPに増えたところで大差はないかもしれません。しかし、庭師の強さはその爆発力にあります。

庭師によって1ターン中に得られるVPトークンは以下のようになります。

庭師の枚数×獲得した勝利点の枚数

これがどういうことを意味するかを考えてみましょう。

まず第一に、庭師が場にあればあるほど、勝利点カード1枚の獲得価値が上がります。たとえば、場の庭師が1枚ならば属州の点数は精々1VPしか増えません。しかし庭師が6枚あれば、属州1枚で12VPと庭師がない場合に比べて、倍の点数を獲得することができます。

また、沢山の勝利点を獲得するほど、庭師1枚あたりの獲得点数が上がります。勝利点の獲得枚数が1枚なら、庭師1枚当たりの獲得VPトークンは1VPと記念碑と同じです。しかし、勝利点カードを6枚獲得すれば庭師1枚あたり6VPと属州に匹敵する点数をとることができます。1枚で属州と同じ点数を取れるカードはそうそうありません。

このように、庭師の有無で属州1枚相当の差がうまれることにもなり得ると、庭師の影響力の高さがわかると思います。さらに恐ろしいことはこの二つが掛け算である点です。そのため「庭師の枚数」「勝利点の獲得枚数」を増やすことで2乗のオーダーで獲得点数が増えていきます。もっと言ってしまえば庭師を使うことで、1ターンに100VP以上をとることも夢ではありません。

では庭師で点数を獲得するのにはどうしたらいいでしょうか。庭師を活用するためには大量の庭師を並べることが必要になります。そのためにまず庭師を集めることが必要です。庭師はコスト5とそこそこ高いので、集めるのは大変ですが頑張って集めましょう。そのあとはいよいよ集めた庭師を並べます。わかりやすいのはデッキを引ききってしまうことです。デッキを引ききってしまえば必然的にデッキ内の庭師は場に並ぶからです。引ききらなくとも倉庫のようなカードを利用してデッキの回転を早め、デッキ内の庭師へアクセスするのも良いでしょう。

また、1ターンに複数の勝利点カードを獲得する手段が必要になります。わかりやすいのは購入を増やすことです。庭師で戦うときは獲得する勝利点カードの点数よりも、庭師で得られるトークンの方が重要です。8金で1購入なら属州しか購入ができず、庭師1枚あたりのトークンは1VPですが、これが8金4購入なら屋敷を4枚購入できます。このとき庭師1枚あたり4VPを得ることができ、庭師が2枚以上あれば、屋敷と属州の点数差を埋められます。他にも庭師はならず者と違って購入以外の獲得にも反応するので、工房や改築のようなカード獲得手段に頼るのも良いでしょう。また庭師だけでなく購入を増やすためのアクションや勝利点カードの獲得手段をプレイする必要があります。複数勝利点を獲得するという観点からも庭師は引ききりデッキとの相性が良いでしょう。

これらの性質から、引ききり構築が頻発する二人戦において庭師は無視できないカードといわれています。それはただ庭師は二人戦での構築と相性が良いというだけでなく、自分が庭師を無視することは相手により多くの庭師の獲得を許し、より大きな点数を相手に与えることにつながるからです。


■四人戦の庭師

二人戦では強力な庭師ですが、四人戦では無視できないカードというわけではありません。それどころか庭師をとることで負けることのほうが多いのです。それはなぜでしょうか?

その理由が四人戦のゲーム終了の早さにあります。二人戦では属州の枚数は8枚。普通に考えれば一人当たりの枚数は4枚です。しかし、自分が属州をとらなければ、ゲームを終わらせるためには相手が属州を8枚とらなければなりません。それは非常に難しいのでその間に大量の庭師を集め、属州8枚を返すのに十分な点数を確保できます。

しかし四人戦ではそうはいきません。まず属州は12枚しかないので一人当たりの枚数は3枚です。この時点で二人戦より少ないのですが、さらに自分が属州をとらなかった場合でも、対戦相手は3人もいるので一人当たり4枚の属州をとればゲームが終わってしまいます。こうなると庭師を集めて並べるのに十分なデッキ構築が間に合わないのです。

さらに、二人戦と四人戦では王国カードの枚数が変わりません。そのため単純に考えてもサプライの減る速度は2倍早く、3山切れも二人戦より起きやすいのです。また、先ほど庭師は引ききりデッキと相性がいいと書きました。しかし、引ききりデッキというのはデッキ内の構成カード数が多く、引ききりデッキが容易なサプライほど3山切れが起きやすくなります。さらにデッキの構築に加えて、デッキに庭師を組み込もうとすると、引ききるためのデッキパーツ+庭師+点数を得るための勝利点カード(大抵は屋敷)が切れやすくなります。こうなると、普通の引ききり構築場よりはるかにサプライが切れやすく、庭師を集める暇など無いに等しいのです。

そんなわけで四人戦で庭師を使うのは困難です。しかし、それでも庭師を使って勝ちたい、サプライをどう見ても庭師が弱くても、それでも庭師を使いたい。そんな稀有な人のためにこの本はあります。次章からどうしても四人戦で庭師を使いたいあなたへの戦略を提案していきます。


庭師を使うためには

四人戦で庭師を使ううえでの問題点は「庭師を並べる暇がない」ことに尽きます。ですからゲームが終わる前に庭師を並べるためのアプローチを考えてみましょう。


■遅延する

真っ当にゲームが進んだら間に合わないのでゲーム自体を遅延しましょう。ゲームの遅延というと民兵を打つとか呪いを撒くといったアタックによるアプローチが一般的かと思います。確かにそれも間違ってはいません。ステロに対して海の妖婆から構築するなんて話は昔からある話です。ですが自分の構築も遅れてしまうかもしれませんし、そもそもアタックをする猶予があるかどうかも疑問ですし、サプライにアタックがあると決まっているわけでもありません。

ですからここでは他の方法でゲームを遅延させていきましょう。


◇特殊勝利点性

通常のドミニオンにおいて点数は属州と公領がメインになります。属州がなくなるとゲームが終了してしまうため、まず属州の枚数で勝つことが大事です。そのときの考え方に「属州ノルマ」があります。属州ノルマとは勝つために必要な属州の枚数を指し、「属州の枚数÷プレイヤーの人数」で与えられます。四人戦なら12÷4=3ですね。これより多くとることができれば勝っていることが多く、逆に少ないなら負けているということになります。

しかし、特殊勝利点が入ってくると話は変わってきます。特殊勝利点はサプライにおける属州以外の有力な点数源になり、属州と違ってゲーム終了に直接影響しません。そのため、特殊勝利点に行く人がいると、その時点で属州の分割の仕方が変わります。例えば、一人が特殊勝利点を主軸にした場合、他の三人で属州を分けることになります。このとき一人当たりの属州ノルマが3枚から4枚に上がります。一人当たりが取る属州の枚数が増えたので、少しだけゲーム終了が遅くなりました。二人特殊勝利点にいけば一人当たりの属州ノルマは6枚にまで上がります。こうなると属州枯れでゲームが終わるのが遅くなるどころか、3山枯れでゲームが終わる可能性のほうが高くなってきます。

ゲーム終了に影響しないことは勝ち手段の追加という意味も持ちます。特殊勝利点のない場で属州を先行された場合、安易に属州をとると逆転できないままゲームが終了する恐れがあります。逆転するためには公領の枚数を確保する必要がありますが、これが難しいのです。公領は2枚でようやく属州1枚分で、購入に必要な金額も高く、デッキの劣化も早くなってしまいます。ただでさえ遅れているのにより効率の悪い点数手段をとる必要があるのです。しかし特殊勝利点があると構築に遅れた場合でもゲーム終了を早めることなく点数を獲得することができます。特殊勝利点の点数効率はおおむね公領よりは良いので属州で先行している側に勝つことも十分に可能です。サプライによっては特殊勝利点が強すぎて、構築で先行している側が勝ち手段を潰すために特殊勝利点に入ることも珍しくはありません。

これを庭師に当てはめてみましょう。庭師は追加の点数獲得手段なので特殊勝利点カードと見ることができます。私たちは今庭師が強くない場を考えているので庭師に行くのはあなた一人です。このとき他の人の属州ノルマは3枚から4枚に増えました。本当にわずかですがゲーム終了が遠のきました。しかし庭師を使ううえではこの少しの差が非常に重要です。


■多人数戦の理論

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