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ドミニオンはいかに拡大再生産を克服したのか

みなさま初めましての方は初めまして、うりはりです。かれこれ7年以上ドミニオンばかり遊び、今では記事を書いたり大会を開いたりしています。

今回はせっかくなのでただドミニオンの戦術等を書くのではなく、ドミニオンに代表されるゲームジャンル、拡大再生産についてドミニオンの視点から考えていこうと思います。


そもそも拡大再生産って?

拡大再生産とは「ゲーム中で得た資源を使って、更に資源を得られる仕組みを得、自身の資産を増やしていく」ゲームです。ドミニオンにおいてはカードがこの資源に対応しています。はじめは銅貨と屋敷しか持っていませんが銀貨や鍛冶屋などのカードを購入してデッキが強くなります。それを繰り返すことで金貨や衛兵のようなより強いカード購入したり、属州のような勝利点を購入することができます。

この拡大再生産性はドミニオンの面白いところでもあります。はじめ買えなかったものが買えるようになる、はじめはできなかった動きができるようになるのは楽しいことです。しかもドミニオンには膨大な種類のカードがありゲームごとに異なるデッキを構築することができます。

勿論ドミニオンに限らず、拡大再生産にはこうしたはじめはできなかった動きができるようになっていく楽しさ、自分だけのデッキを構築していく楽しさがあります。


拡大再生産は対戦に向かない

では拡大再生産は万能なギミックなのかといわれるとそうではありません。

ここまであげてきた「はじめ出来なかったことができるようになる」「自分だけのデッキを構築する」といった要素は自分一人で完結する楽しさでしかありません。言ってしまえば一人回しだとしても同じ楽しさは味わえてしまうのです。

その一方で対戦要素を付け加えようとすると一つ問題があります。それは一度ついた格差を縮めるのが非常に困難であるということです。

拡大再生産とは資産が大きいほどより大きい資産にアクセスし、より効率で気に成長させていけるギミックです。ということは序盤で戦力差がついた場合、ゲームが進むほどその格差は広がっていってしまいます。そうなると一度格差がついたゲームは逆転が不可能になってしまい、中盤以降は負けが分かっているゲームを消化するのみになってしまいます。


一つドミニオンで例を挙げてみましょう。1,2ターン目で対戦相手は魔女-パスと購入してきたのに対し、自分は地下貯蔵庫-銀貨と購入しました(これは弱い初手なので実践しないように!)。続く3ターン目、対戦相手は魔女をプレイして金貨を購入しましたが、自分は地下貯蔵庫をプレイして3金しか出ず、銀貨しか購入できませんでした。

こうなってしまうと相手は金貨の力で強力なカードを買いつつ魔女であなたに呪いを配ってくるのに、あなたは呪いのせいで魔女を買うことすらできずデッキを思うように強くすることができません。正直に申しますとこの状況から勝つことはほぼ不可能です。あなたはこの先の長いターン負けるとわかっていながらゲームを続けることになるでしょう。

以上は極端な例ですが、拡大再生産ゲームにおいてそのような状況は十分に発生しえます。特に自分で拡大再生産ゲームを作ろうとするとまずこの問題にぶつかることになるでしょう。本質的に拡大再生産の対戦ゲームはクソゲーを生みやすいのです。


いかにしてクソゲーを回避するか

しかし、ドミニオンを含めて世に出回っているゲームで上記のような理不尽を感じることはそれほど多くないはずです。それはゲームデザインによって、プレイヤーがクソゲーと感じないように工夫されているからです。

ではドミニオンではどのようにしてゲームを面白くしているのでしょうか?


勝利点"カード"

ドミニオンにおいて多くの場合、勝利点はカードでありデッキに入ることで自身の得点になります。大事なのは属州のような勝利点カードはゲーム中は何もしない、邪魔なカードであるという点です。

邪魔なカードがあれば当然デッキは弱くなります。それも急激に弱くなるので、はじめは問題なく購入できた属州も次第に買えなくなってきます。そうなれば劣勢側のデッキの強さは次第に先行側を追い抜くことができます。そしてゲームの勝敗は勝利点によってしか決まらないので、デッキの強さは関係ありません。必ずしも早くデッキを強くしたほうが勝つわけではないので、序盤の格差が勝敗とイコールではないのがポイントです。


ランダム性

ドミニオンはデッキによってランダム化されており、毎ターン同じように行動することはできません。これは序盤の格差を作ることにもなりますが、終盤でもそのランダム性から逃れることはできません。序盤どんなに強くても終盤7金を連打したり、鍛冶屋と村が分離していては勝てません。こういった相手が事故るかもしれないという要素は、最後までゲームをあきらめない理由になりえます


多様なルート

ドミニオンではサプライと呼ばれる10種類の王国カード(と基本カード)を用いてゲームをします。このサプライでとれる戦術は一つではありません。銀貨や金貨といった財宝で属州を狙っていくこともできますし、村や鍛冶屋といったアクションカードを中心に属州を狙っていくこともできます。その上、それぞれの戦術でもどのカードを使うのか選択することができます。そのため、自分と相手では全く違うデッキを組んでいるなんてことは日常茶飯事です。

自分と相手のデッキが異なると単純に強さを比較することは困難になります。するとゲーム終盤までどちらが勝っているかはわからず、最後まで緊張感を持続させることができるでしょう。


複雑性

現在ドミニオンには460種類以上の王国カードがあり、イベントなどのカード以外の要素も含めるとサプライの組み合わせは無限といっても差し支えありません。そうなるともはや人間に考えられる範疇を超えてしまい、サプライを見てもどの戦術が強いのか、どう組むのが最適なのか誰にもわかりません

サプライの最適解が分からないことはプレイヤーごとの選択にばらつきを生みます。それにより各々のデッキに多様性が生まれます。また最適解が分からないプレイヤーは大なり小なり最適でない手を取り続けるため、有利な側が有利になり続けるわけではなくなります。


最後に

上記の理由によってドミニオンはクソゲーにならず、ボードゲームを代表する拡大再生産ゲームとして君臨し続けていると私は考えています。それらは拡大再生産を補助するものではないかもしれませんが、適切なバランスで取り入れることで拡大再生産の楽しさを維持しつつも、ゲームとしての面白さを格段に引き上げることに成功しています

別のゲームを遊ぶとき、あるいは自分でゲームを作るときにこうした点に着目してみると、よりそのゲームをたのしむことができるのではないでしょうか?


本記事は以下のアドベントカレンダーに参加しています。それぞれ面白い記事が盛りだくさんなのでよろしければ見てください。

https://adventar.org/calendars/8028


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