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閃の軌跡NW1~2話感想~2つの視点から楽しみたい軌跡考察~

「この国には、新たな《革命》が必要だ!」
「私は負けない……誰にも」
「私らが頑張ったところで……なんにも変わらないのに」

 本稿は軌跡ファンとして楽しみにしていた《閃の軌跡NW》の視聴感想、その1~2話編になります。
 またそれだけでなく、「①軌跡未プレイの人が『?』な部分を補足できるように」「②軌跡プレイヤーが単に『軌跡だからじゃなくて閃の軌跡NW』だから面白いと思える」の両方が叶えるような世界観解説もできればいいな、と思う今日この頃です。

1話前半:過酷な冬の世界を歩く《北の猟兵》

 記念すべき閃の軌跡NWは静かな雰囲気の中から始まりました。
 雪道を行く軍人と装甲車。彼らは真冬の中、白い息を吐きながらただただ歩いている。どうやら物資の移動のようです。
 そんな中、被ったメットを外すさずに愚痴をこぼすタックとイバーノ。アニメにして顔を見せないという荒業を果たす二人ですが、なるほど『作品に登場するモブキャラのほとんどに固有名詞と生まれとストーリーがある』軌跡シリーズにおいて、アニメにおけるモブとしての物語を果たす二人なのかもしれません。

 彼らが話す《北の猟兵》《ノーザンブリア自治州》は、彼らがいる国をや所属している組織を指すものとなっています。
 猟兵とは、金で雇われて非人道的な任務も容赦なくこなす、独特な死生観を持つ戦闘集団のこと。
 北の猟兵とは、彼らの故郷ノーザンブリア二おいて、旧軍人がそのまま国軍を母体にして立ち上げた猟兵集団です。
 季節は冬……明文はされてないと思うのですが恐らく3月頃。なのにこれだけ雪が積もっているのは、軌跡シリーズの舞台であるゼムリア大陸の中でも最北の地に位置するから。彼らは自然環境の厳しい地域にいるのです。

 ファンタジー世界なので魔獣という存在もいて、既プレイヤーには懐かしい存在。ある程度の技術革新も起きている世界なので、銃やら装甲車などは電気・火力とは別系統のエネルギーで動いています。

1話に出た軟体動物は、少し違いはありますがこんな感じの奴ら。

 ただ、ここまで説明だけだと物語は動かない。出現した強力な魔獣を前に、それらを容易く始末してみせた本作の主人公ラヴィ。
 ここから、閃の軌跡NWが始動しそうです。


1話後半:《首都》とは思えない大地と《猟兵》を取り巻く市民感情

 吹雪の大地と魔獣の襲撃から一転。村民を保護した彼らは《首都ハリアスク》へ到着しました。
 そこでラヴィたちが、というより視聴者が目撃したのは《首都》としてはやや味気のない──貧民街の闇市馬といっても通じるような露店市場。
 ここで、ノーザンブリアが最貧国であるという描写がまざまざと入ってきました。
 このあと出てくるラヴィたちが助けたお婆さんの話もまた、ノーザンブリアの歴史を語る上で外せないもの。
 およそ四半世紀前、この国を襲った『その杭に触れたもの全てが塩になるという大災厄』です。

 ところで、最初の説明の通り。猟兵って本来人々から恐れられる存在だったりします。なぜなら、猟兵は人を守る軍人や戦士とは違って、「お金次第では人道も気にせず村を焼き払うような所業もする死神のような存在」だから。
 ところが、北の猟兵は、

  1. 大災厄によって国家体制・経済が破綻

  2. 旧軍部が革命を起こし北の猟兵になる

  3. 貧しくなった国を救うため、国を守る以外に外国で猟兵家業をするようになる

  4. それでも、未だ国は貧しい

 といった経緯があるため、ノーザンブリアの人々にとってはむしろ北の猟兵はまさにみんなを守る英雄のような存在だったりします。
 内では英雄、外では死神。現実においても当たり前で、例えば某進撃の巨人の終盤にも現れたテーゼ。
 「軌跡だなんだ」と言われる閃の軌跡NWですが(当たり前だ)、シリーズ特有の要素を外すと、『苦難な国の一兵士である少女と、それを取り巻く国や《英雄》たちに主題を置いた物語』なのではないかと思います。

1話総括

 そして、最後に登場した北の猟兵の幹部ローガンにより「クロスベルが併合された」と言われる遥か外国の話。
 総じて、世界観の説明、特にラヴィの故郷とは何かに視点を据えた第1話。
 公式サイトにも書かれる、物語の骨子である「ラヴィの帝国潜入」の必然性は、外国との関係も含めて第2話で語られていきます。

2話ラヴィ視点:明らかになるラヴィたち4人

 ところ変わって、命令違反を起こしたラヴィは教官として軍人キャンプへ左遷。そこで、事前に紹介されていた内偵メンバーが登場しました。
 昼行灯なマーティ。
 生真面目なタリオン。
 おちゃらけたイセリア。
 キャンプでの一幕を通して彼らの人間性が少なからずクローズアップされていく。

 真面目なタリオンは、ラヴィ教官に対しても誠実に意見を言う。
 イセリアは「何も変わらない」と言う一方、狙撃を通して仲間たちを援護した。
 マーティは普段は昼行灯な一方、有事には的確に支援をして味方を救った。
 そしてラヴィは、「誰かを助ける」ために命令違反をしてでも暴走車を沈黙させた。

 性格と行動がそれぞれ特徴的ですが、「誰かを助ける」根幹の信念には迷いがなかった。物語の主人公グループとしての方向性が見えた気がします。
 主人公たちが動く「守るための行動」と、度々囁かれている《英雄》と、そして自分たちの常識が通じなくなる外国に行くという物語としての動乱。それぞれが交差するときが楽しみです。

2話官僚視点:武官文官の凌ぎ合いへと

 ラヴィたちが一応は親睦を深めている一方、ノーザンブリア自治州の中枢による会議は緊迫している様子。
 登場する彼らを、モブらしき人をまとめつつ話すと、以下のようになると思います。

  • 北の猟兵の首領:グラーク

  • 北の猟兵No2:ジェイナ

  • 北の猟兵幹部:ローガン

  • ノーザンブリアの官僚たち

 彼らはそれぞれの立場と思惑がありつつ、関心が向けられているのは第1話でローガンが話した「クロスベルが帝国に占領された」という事実についてです。

 クロスベルは自然環境と経済的な貧富はまったく違うのですが、「帝国の周辺に存在する《自治州》」という意味ではノーザンブリアと同じ地政条件を持っていました。
 ノーザンブリアの南に存在する《エレボニア帝国》は、十数年前には帝国の南国に武力侵攻したり、クロスベルを挟んだ東の共和国とバチバチに争っていたりと、典型的な覇権主義を見せています。そんな帝国のあらましは以下のようになっています。

 そんなわけで、周辺国は帝国の増長や、対抗している共和国との緊張を感じているし、帝国の覇権主義に貧国のノーザンブリアはおびえているというわけです。
 どこかで「この国って帝国と戦争してるの?」という感想を見たような気がするのですが、そうではなくて「帝国の武力侵攻を警戒している」といえます。そして、その認識についてはノーザンブリアのお偉方は共有している。

 そしてローガンは「武力で帝国に打ち勝て!」という強硬派、官僚たちは「私の卓越した交渉術で戦争を回避する!(苦笑するジェイナ)」とやや押され気味な道を選択している。
 そしてグラークは「静観だ」とまだ腹の底を見せない回答を、そしてジェイナはラヴィたちに「クロスベル併合で活躍した中心人物を調べてこい」という対処をしたのです。
 そうして、ラヴィたち内偵メンバーは帝国の地へ足を踏み入れることになります。

クロスベルを舞台にした物語を知りたい人は《零の軌跡》《碧の軌跡》をチェック!
アニメ直前のエレボニア帝国に興味がある人は、《閃の軌跡》《閃の軌跡Ⅱ》をチェック!

2話総括

 第1話が「ノーザンブリアとは何か」「ラヴィとは誰か」を描いたなら、第2話は「ノーザンブリアを取り巻く外国勢力の要点」「内偵メンバーとは誰か」を描いた、と言えるかもしれません。
 一方で不穏な動きもありました。明らかに様子がおかしく、意図的に(指パッチンで)暴走した戦車と、ED後に姿を見せた道化師の少年(少女?)と密談するジェイナ。
 ラヴィたちの内偵には、どこか仕組まれたような匂いも感じられる。

 軌跡要素を度外視すれば「敵対がほぼ確定している大国の英雄を調査するために潜入する」という戦記ものな閃の軌跡NW。こういう物語だと、盛り上がりどころで敵の英雄とニアミスしたり、あるいはマジで戦争が起こっちゃったりとか、一筋縄ではいかない出来事が起こりそうなものですが……。

 いずれにせよ、3話から物語も進みそうな予感。引き続き楽しみにしていきたいと思います。


記事を最後までお読みいただきありがとうございます。 創作分析や経験談を問わず、何か誰かの糧とできるような「生きた物語」を話せればと思います。これからも、読んでいただけると嬉しいです。