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【Poke】ネタバレーヌ【名ピカ】

 唐突に『帰ってきた名探偵ピカチュウ』の話。というか、愚痴?

 そもそもこのシリーズ(?)は、かれこれもう7年前、2016年に第1作がリリースされている。タイトルは『名探偵ピカチュウ〜新コンビ誕生〜』。プラットフォームは3DSで、当初はダウンロード専用ソフトという形で販売されていた。
 ただしこの作品は、やや乱暴にいってしまうと、全9章構成となっている『名探偵ピカチュウ』の第3章までを遊べる形で先行して発表した、いわばアーリーアクセス版のようなものである。『〜新コンビ誕生〜』を購入したユーザーは、2018年に正式リリースとなった『名探偵ピカチュウ』を割引価格で購入でき、なおかつセーブデータも引き継ぐことができたので、ちょっとお金を払って2年早く遊べる長めの体験版? みたいな感じか。

 そしてさらにその翌年の2019年、ふさふさプリンだのしわくちゃピカチュウだので世間の耳目を集めた劇場版『名探偵ピカチュウ』が公開される。この映画はゲーム版をベースにしており、主人公のティムくんが行方不明になった父親を捜すため、田舎からライムシティという都会へやってきて、そこでなぜか自分とだけ言葉の通じるピカチュウと出会い、街で起こる事件を解決していく――という感じのストーリーなのだが、おそらくゲームをやったことのある人より映画版を観たことのある人のほうがはるかに多いと思われるので、これ以上は解説しない。

 ゲーム版『名探偵ピカチュウ』は、最後までクリアしても肝心の部分は謎のまま終わってしまう。要するに、ティムの父ハリーはどこへ行ったのか? なぜティムだけがピカチュウと会話できるのか? みたいな根幹の部分の謎は放置で、「ポケモンを苦しめる悪党たちをやっつけました! めでたしめでたし!」で終わる。
 だが、劇場版を観ると、ゲーム版がぼかして終わらせていたそのへんの謎が、すべてクリアになってしまう。ハリウッドという予想外な方面から盛大なネタバレをかまされているのである
 まあ、ゲームを進めている間に、うすうすこっちも、これはこういうことなんだろうなあ、と感づくような作りになっているため、劇場版を観たからといって、「ええっ⁉ あれはこういうことだったのかい⁉」みたいな衝撃はまったくない

 そして2023年、みんながもう忘れかけていた頃(たぶんコロナで開発が遅れたのだと思う)、シリーズ最新作『帰ってきた名探偵ピカチュウ』がリリースされた。プラットフォームがSwitchに変更されているのは当然として、驚きなのはそのストーリーで、前作の後日譚だという。
 え……? こっちはもう行方不明になった父親の謎とかほぼほぼ全部判ってるのに、あらためてまたティムくんの、
「とうさんはいったいどこにいるんだ……?」
 みたいな茶番(失礼)につき合わなきゃならんのか⁉

ティムくん、きみの隣にいる中性脂肪多めのピカチュウがきみのパパだぞ(容赦ないネタバレ)。

 だがしかし、前作で描かれなかった(劇場版で描かれてしまった)父と子の再会をきちんとゲームでも見届けておきたいぼくは、ちょっと迷いながらも購入し、さっそくプレイ。
 おお、ポケモンたちが可愛い……! ストーリーに合わせた演技をさせなければならないためか、本編最新作の『SV』とはまた違うモデルを使用しているらしく、グラフィック的な表現でどちらがいいかは一概にいえないが、参考までに、近年また可愛いと評価を上げつつあるオオタチさんで比較するとこんな感じ。

こっちが『帰ってきた』のオオタチ。つるっとして長くて可愛い。推定体長約180センチ。
こっちが『SV』。よく見ると体毛のふぁさふぁさ具合が表現されている。可愛い。

 大雑把にいえば、『SV』のほうが毛並みや金属光沢のテカりなんかをリアル寄りに表現しているのに対し、『帰ってきた』ではそのへんをアニメチックに割り切って仕上げている気がする。
 それはボイス関連でも同様で、たとえばヘラクロスは、本編ではカタカナで表現しづらい8ビットテイストの電子音で鳴くのだが、このゲームのヘラクロスはアニポケよろしく「ヘラクロッ!」と鳴く。エネコロロは「エネエネ〜!」だしニンフィアは「フィア〜♪」。最後まで登場しなかったが、もし出ていれば、ミカルゲは「おんみょ〜ん」ではなく「ミカルッ!」とでも鳴いていたに違いない
 これはおそらく、ふだん山寺宏一ボイスでしゃべっているピカチュウが、シーンによっては大谷育江ボイスで「ピカピカ!」と鳴くため、そこに合わせてアニメっぽくしたのではないかと思う。ここは人間キャラのモデリングも含めて、雰囲気や世界観にマッチしていたといえるだろう。

 ただ、グラフィックやサウンドはそれでいいとして、肝心のゲーム部分はどうかというと、7年前の『新コンビ誕生』からほとんど変わっていないというか、むしろやれることが減っているというか――。
 一応今回は、前作にはなかった新要素として、ほかのポケモンたちの能力を借りて先に進む『ポケモンレンジャー』的な要素がウリだったのだが、本当に新要素がそれしかないとは思わなかった。しかも、それがゲームとして抜群に面白くなる新要素なのかといえばそうでもない。そして代わりに削られた要素もある。オークションとか。
 ぶっちゃけ、これは前作からそうだったのだが、謎解きがどうのという部分は本当に子供騙しレベルで推理も何もあったものではないし、前述の通り新要素がさほど面白くもなく、使える場面も非常に限定的なため、だったらむしろ完全にストーリーだけを追うビジュアルノベルでもよかったのではないかと思ってしまう。

 もちろん、演出でそれなりに盛り上げてくれるし、ストーリー的にまったく面白くないわけでもないのだが、登場ポケモンも登場人物も前作よりかなり少ないし、そもそも前作の登場人物の多くをなぜかカットしていて、シリーズものとしての広がりをみずから捨てている気がする。毎朝テレビ画面でしか見ることのできない前作ヒロイン、あんなに世話になったのに出番がない探偵事務所の人もだ。
 また、わりといろいろなことが早い段階から透けて見えてしまうので、プレイが単なる答え合わせ作業に思えてくるのも何だかな〜、という印象。

 ボイスがツダケンなので、初対面時に「こいつラスボス?」って笑ってたらラスボスだった。
 物語のキーとなる、宇宙から降ってきたとされる宝石「オーロラの雫」。判りやすいデオね

 しかもゲームの尺が短い。短すぎる。参考までに、ぼくは『名探偵ピカチュウ』のクリアまでに約12時間かけたが、今作は約13時間半でクリアした。ムービー部分が前作より増えている(はず)なので、自分で操作しているという意味でのプレイ時間が前作より増えているという気はしない。
 そして、クリア後にやり込むような要素は皆無だった。ギャラリー的なものの開放もないし、ポケモン図鑑的なものもなし。このご時世、買ってきたその日に遊び尽くせてしまうというのは、コスト的にはちょっと……うん、人さまにはおすすめはできない。13時間もあれば、色違い厳選を26セットもこなせるんだぞ?
 もし小さなお子さまがたが「『ポケモン』がほしいよう!」とサンタにお願いして今年のクリスマスにこれをプレゼントされたら、きっとサンタを呪うと思う。イブの夜にもらっても翌日の夜にはクリアしてそれで終わりなんだから。とにかくこのゲームの最大のダメポイントはボリュームの圧倒的な貧弱さ
 クリスマスに何をあげるか迷み始めている全国のサンタさんは、最新作っぽいという理由だけでこれを選んだりしないように。『SV』は2022年11月、『アルセウス』は2022年1月発売のソフトだが、明らかに『帰ってきた』より面白くて長く遊べる。極論、持っていないなら『剣盾』でもよし。もしこれを買いあたえたら呪われるレベル。
 例外は、『ポケモン』本編をまだ遊べないくらいのお子ちゃまに読み聞かせる感じで親がいっしょにプレイする場合くらいで……いや、その年齢だとストーリーを理解できないか。やっぱり万人におすすめできないかも。

 というわけで、ひさびさにパッケージでソフトを買ったら大ハズレ(失礼)だったので愚痴を力説。
 はっきりいうぞ、『ポケモン』に強い思い入れがないなら買うな!

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