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【GAME】結局のところ【etc.】

 ようやくストーリーモードをクリアしたので、あらためて『FOREVER BLUE LUMINOUS』、略して『FBL』について。一応、トータルで50時間以上は遊んだ。まだ図鑑コンプはしていないが。

 まずいってしまうと、このソフトは他人にはおすすめできない
 前の記事でも述べたように、海中探索以外の遊びが前作から8割減(ぼく調べ)となっている今作、その代わりになる何か面白い要素がなければ新作として世に送り出す意味がないと思うのだが、すべてのモードを少しずつ遊んでみた感じ、そういったものはない、といえる。

5月上旬にキャプチャしたスクショ。6月10日現在、別のイベントツアーが開催中。

 さて、上の画像がこのゲームのメインメニュー画面である。一番右にある「調査本部」というのがいわゆるストーリーモードで、「ひとりでダイビング」はストーリーとは関係なくただひたすら海の中を泳ぐソロプレイモードであり、「みんなでダイビング」がオンラインによる多人数プレイモード、「イベントツアー」というのは特定の珍しい生物に遭遇しやすい、みたいな期間限定イベント的なオンラインモードらしい。ちなみに、ふたつあるオンラインモードはどちらも潜水可能時間に制限がある。

 で、ぼくが期待していたストーリーモードなのだが、とにかく短い。おそらくトータルで1時間もかからず終わってしまうと思う。個人的には、ここが前作からもっともパワーダウンしたポイントといえよう。
 しかも、単に尺が短いだけでなく、話を進めるのが地味に面倒臭い。たとえばチャプター1-1は本当に泳ぎ方と魚に注目する方法を学ぶだけなので、3分もかからず完了する。次の1-2は世海樹の説明で、これもやはり数分で終わる。1-3以降は、古代文明の遺産ともいえる謎の石版(ツクモ盤と呼ばれる)の発見、ツクモ盤と世海樹の再生の関連性など、少しずつ話が進んでいくのだが、これまたどのチャプターも数分で終わるくらいの尺しかない。マーカーのところまでまっすぐ進んでください、くらいのちょっとした操作+イベントムービー合わせて数分である。
 で、これの何が面倒かといえば、序盤での新しいチャプターのアンロック条件が、魚のアンベール数なのである。

 このゲームでは、新しい海域に入ったばかりの段階では、そのへんを泳いでいる魚が何なのかはっきりとは判らない。その状態の魚に注目することで正確な情報が判るようになるのだが、この作業をアンベールという。そもそもゲームの舞台がベールド海(Veiled Sea=ベールに包まれた海)であり、そこに棲む生物や宝物をUnveilする、すなわち明らかにしていく、ということらしい。とにかく、アンベール=不確定状態の魚に注目することと思ってもらえば間違いない。
 で、ちょっとチャプターを進めようとすると、アンロックのためにアンベール数が〇〇必要、みたいになってくる。要は不確定な魚を注目しまくれということである。がしかし、このゲームのストーリーモードはマップ内を自由自在に動き回れない。当然、そこで発見できる魚の数はかぎられているため、アンベール数を大量に稼ぎたいのであれば、おのずとストーリーモードを抜け、「ひとりでダイビング」を遊ぶことになる(オンラインモードでは、その海域に入った時点でほかのプレイヤーによって多くの魚がアンベールされてしまっている可能性があるため、効率という点ではよろしくない)。
 というわけでひとり黙々と魚に注目し続けてアンベール数を稼ぎ、ふたたび「調査本部」に戻ってチャプターを進めるわけだが、前述の通り、そのプレイ時間はほんの数分。こちらはどんどん先に進みたいのに、そのたびにアンロックのために大量のアンベール数が必要だといわれるのである。
 アンロック条件にアンベール数が関係するチャプター1-1から4-2までは、とにかくひとつ進めてはソロに移動して魚群に注目し、数を稼いだら「調査本部」に戻って数分ストーリーを進めたらまたソロで魚群に注目――みたいなことを繰り返すはめになる。体感では、ストーリーを1進めるためにソロプレイを5くらいやる感じ。
 でまあ、それを繰り返してチャプター5-1まで行くと、アンロック条件がようやくアンベール数ではなくなる。では何でアンロックするかというと、ツクモ盤である。

必死こいて全開放したあとのツクモ盤。古代海洋民族オアンネスが残した遺産である!

 ツクモ盤というのは主人公が序盤で発見する謎の石版で、失われた古代文明に関係があるらしい。11✕9にマス目が切られていて、計99個のマスのひとつひとつに、そのマスの解放条件が設定されている。特定の重要アイテムを発見するとか、稀少な生物を発見するとか、海底に沈んでいる謎の円盤に記されたミッションをクリアするとか……解放条件はさまざまなのだが、チャプター5-1のアンロック条件は、このツクモ盤のマスをすべて開放すること――99マスのうちのどれか10マスとかではなく、最初から全開放を求められるのである!
 こういうのって、ふつうはストーリーを進めていくのに合わせてマスが開放されていって、エンディング直前あたりですべて開放、それによって隠されていたすべての謎が明らかになるとかじゃないの? ……え? もしかしてもうクリア目前とか? ストーリーモード、トータルで1時間も遊んでないよ、ぼく?

 結局、このツクモ盤全開放がチャプター進行のための最後のアンロック条件となっており、そのあとは無条件で進めることができる。まあ、案の定この直後にエンディングになるんだけどね。
 わりと誇張抜きに、ぼくがプレイした50時間のうち、49時間はアンベール数稼ぎとツクモ盤開放のための時間だったといっていいと思う。なので、ストーリーに期待して買うのは絶対におすすめできない
美しい海の中を散歩して癒やされたいの〜」みたいな頭の悪そうなことをいう人(失礼)にはおすすめしてもいいかもしれないが、ストーリー自体が薄くて短い上に、さくっと進めることもできないから癒やされる以上にストレスが溜まる。というか、癒やしを求めるなら前作のほうがいい。前作は花火とか犬とかケルティックウーマンとかあったし。

 あと、こうなるともはや些細なことに思えてきてしまうのだが、登場する生物のチョイスにも大きな疑問が残る。
 前作では、真っ暗な深海に潜った果てにシーラカンスを発見し、「すごいものを見たな……」みたいな演出があったはずなのに、今作はストーリーモードの初っ端から超巨大なシーラカンスが高速で泳ぎ去っていく上に、シーラカンスどころか本来なら絶滅しているはずのダンクルオステウスだのモササウルスだのプレシオサウルスだのまで登場する。「どうしてこれほど大量の古代生物が生き延びているのか?」という至極まっとうな疑問に対する説明もいっさいない。
 これが、何やらいわくありげな細くて暗い海底洞窟を抜けた先の閉鎖された海域でひっそりと生き延びていた――とかなら、まあ、「あくまでフィクションだからね」で納得はいったかもしれないが、実際には、そのへんをスズキだかマグロだかがふつうに群れをなして泳いでいた場所からほんの10メートルとか20メートルとか落ち込んだくぼみ? みたいなところに、ふっつうに古代生物がうようよいる。アノマロカリスだのオパビニアだのが通常出現する今作、シーラカンスはむしろ若造の部類といえよう。
 何だろうな、ザクを掘り出して「我がボルジャーノン!」とかイキってたところに∀を見せつけられる感じ? 登場する生物は570種ほどなのだが、実はこのうち100種類程度は古代の絶滅種となっている。この手の生物で図鑑を水増しするくらいなら、たとえばスケーリーフットのような近年になって発見された現代の稀少生物を追加してほしかった気がする。
 また、前作では、サンゴ礁にはサンゴ礁に棲む生物、氷の海には氷の海に棲む生物、淡水の川には淡水の川に棲む生物、みたいなところがちゃんと守られていたのに、今作はそこがもう滅茶苦茶。海の中を調査しているはずなのにピラニアとかアロワナが泳いでいる。そしてその周囲にはニシキゴイやニゴイも泳いでいる。何かもう……ねえ?

 もはや永久にダメ出しできる気さえしてくる今作、もし何もないところから第1作目としてこれが出てきたのなら、まあまあ許せたかもしれない。ゲームとしての遊びの部分が少なくても、「おお、海の生き物がこんなに!」みたいな驚きでカモフラージュできた可能性はある。
 だが、こっちはもう15年前にもっと遊べる前作をプレイしている。主菜のストーリー面ではもっと厚みがあり、やり応えがあり、水族館運営やらイルカの調教やら、副菜も充実していた『FOREVER BLUE 海の呼び声』のあとでこれでは、どう贔屓目に見ても高く評価できない。『帰ってきた名探偵ピカチュウ』『フシドマ』でたびたび感じてきた、前作をプレイしているからこその落胆が最高級にでかい作品といえる。

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