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【GAME】ファッション時空【etc.】

 賢明なみなさんはご存知だと思うが、ぼくは『GIRLS MODE』シリーズが大好きである。

 ……少し飛ばしすぎたな。
『GIRLS MODE』、以下略して『ガルモ』は、初代DS時代の2008年に任天堂から発売された、たぶん女の子向けソフトである。単純にいうと、吉祥寺のブティックではたらく女子となって、ファッションアイテムを仕入れて客に売りつけるゲームである。
 DS本体の爆発的なヒットと、それまでゲーム機と縁遠かった低年齢層+女性層へうまくアピールできたことから、このソフトはなかなかのヒット作となり、その後、3DSに移行して、2017年発売の『ガルモ4』まで続くこととなった。基本的にはブティック店員としての仕入れや販売がメインなのだが、シリーズをかさねるごとに、メイクや髪型の変更、メンズアイテムの取りあつかい、最終的にはアイドルのプロデュースにまで手を出すことになるのだが、詳しいことは割愛。楽しいから中古で買って遊ぶがよろし。

 その『ガルモ』を開発したシン・ソフィアが、Switchで新作を発売することになった(販売はマーベラス)。その名も『Fashion Dreamer』。以下、『フシドマ』と略する。
『フシドマ』では、プレイヤーは新米ミューズ(このゲームにおけるアバターのこと)となって、イヴと呼ばれる仮想空間でほかのミューズたちと交流しながら、彼らにコーディネートしてあげたりアイテムを増やしたり、何だかんだでプラチナインフルエンサーを目指すことになる。
 他人のファッションセンスにケチをつけることで報酬を得るという基本システムは、まさに『ガルモ』の正当後継! ということで、一も二もなくぼくは飛びついた。この時は、まさか『迷探偵ピカニキ』に続いて、「前作のほうがよかったんじゃ……?」を味わうことになろうとは、神ならぬ身の嬉野くらら(ぼくのミューズ)には知る由もなかったのである。

見ての通り、XIII京サマのコスプレをしたクーラ・ダイアモンドである(強引)。

 これがぼくのミューズ、嬉野くらら。キャラクリは難しい数値調整などのない簡易的なものだが、テキトーにやっても可愛いモデルを簡単に用意できる。モデリングの方向性としては、『ガルモ』初代の頃から継承されている哲学というか、子供が敬遠しそうなリアル志向を捨て、女性層を敵に回しかねないオタクへの判りやすい媚び要素を弱め……ということを強く意識しているのだと思う。
 ちなみにこのキャラクリ、あとから変更できないのは、女性ボディ(Aタイプ)と男性ボディ(Bタイプ)の選択だけで、それ以外の要素はいつでも変更可能。ゲームを進めていくことで開放されるパーツなどもあるし、何ならセーブデータひとつで最大4人までのミューズを登録できる。

 そんなこんなで、発売日である11月2日になると同時にソフトをダウンロードし、ネットの海に飛び込んだ嬉野くららだったわけだが、その日の正午前にはプラチナインフルエンサーの称号を手に入れ、スタッフロールを見るはめになった

 ええ……? ぼくまだ10時間もプレイしてないよ……?

 実はこのゲーム、ストーリーがない。『ガルモ』シリーズにはさまざまな登場人物が登場し、彼らとかかわる中で自分自身が成長していくサクセスストーリーがベースにあったのだが、この『フシドマ』にはそうした要素がまったくないのである。また、時間経過という概念もないため、ファッションを語る上では重要なポイントともなる季節感も存在しない。ここが個人的に一番のガッカリポイントだった。
『ガルモ』では、かぎられた予算の中で売りたいアイテムを考え、展示会で買いつけ、店に並べて顧客にオススメしていく。どんなアイテムも売れ線だからといって無尽蔵に仕入れられるわけではなく、ものによっては問屋レベルで在庫切れになることもあるし、予算を超えて入荷することも不可能。そうやって買いつけたアイテムも、季節が変わる前に売り抜けなければ不良在庫と化す。それこそ店のスペースにはかぎりがあるため、在庫管理もしなければならない。時には旬を逃しそうな売れ残りアイテムを値下げし、赤字覚悟で倉庫に空きを作る必要に迫られることもある。
 そうしたブティック経営と並行して、自分自身がトップスタイリストへの道を進んだり、企業コラボアイテムを作ったり、友人知人の悩みを解決したり、アイドルをデビューさせたり……といったイベントをこなすのが『ガルモ』シリーズの面白みであった。ぼくにとっては、これは可愛い女の子を着飾るゲームというより、可愛い女の子を着飾るオマケがついた経営シミュレーションゲームだったといっていい。
 その、ぼくにとっての一番のメイン部分が、『フシドマ』にはない。では何がメインなのかというと、
 イヴにいるほかのミューズに声をかけ、

右上にあるのがそのキャラの要望。これをかなえてやると高ポイントとなる。

 彼らの要望を聞いてコーディネートし、

こいつにかぶせた帽子はレア度7くらいなので要望はクリアできている。色味も問題なし。

 そして代価を手に入れる。基本的にはこの繰り返し。これだけ!

正直♡3ゲットはチョロい。『ガルモ』だと、客が失望して何も買わないなんてこともあるのに。

 また、ミューズをコーディネートすると、それが自動的にネット上にSNS投稿という形で拡散され、「いいね」を集めることができる。ここは現実と同じく、そうやってフォロワーを数多く集め、プラチナインフルエンサーとなることがひとつの目標となるわけだが、少なくともぼくの場合は、1万フォロワーを突破した時点でプラチナトロフィーがアンロックされ、スタッフロールが流れ始めた。つまり、そこまで遊ぶのに10時間もかからないということである。
 ……もちろん、『迷探偵ピカニキ』と違い、こちらはスタッフロールのあともやり込みを続ける意味はある。10時間程度のプレイではアイテムはほとんど集まっていないし、アンロックされていないキャラクリ用のパーツも多い。捜せばやれることはまだある。あるのだが――ぐぬぬ。 
 これが、まったく別のメーカーが開発したものならまだいい。いや、よくはないのだが、唇を噛み締めて自分を納得させられただろう。だが、『フシドマ』は『ガルモ』スタッフが開発している。にもかかわらず、ゲームとしての濃度、楽しさは、完全に『ガルモ』のほうが上だった。『フシドマ』が明確にガルモよりまさっている点といえば、グラフィック面とモデリングも含めたキャラクリエイト部分くらいのものだが、3DSとSwitchというハードの性能差を考えれば、それをアドバンテージと呼ぶのははばかられるだろう。何しろ、両者に共通している「相手の希望を聞いてコーディネートする」というメインになる部分だけを見ても、『ガルモ4』のほうが『フシドマ』よりユーザビリティが上なのである。面白さだけでなく遊びやすさでも完敗。単純なアイテム数でも完敗。これはもう、ふつうにSwitchで『ガルモ4』をリメイクしたほうが明らかに面白いものができたはずである。
 もちろん、『ガルモ』は任天堂のソフトであり、開発会社が同じだからといって、『ガルモ』とゲーム性が酷似したものをマーベラスのソフトとして発売するわけにはいかなかったのは判る。また、『フシドマ』はオンラインモード(ほかのプレイヤーとの交流)がメインと考える人もいるかも知れないが、『ガルモ』はすでに15年前の初代の時点で、ネット上に自分のブティックのオンライン支店をオープンさせ、ほかのプレイヤーに買い物をしてもらうという双方向コミュニケーションが可能だったのである。
 ストーリーなし、ブティック経営なし、ファッションアイテムごとのブランド設定もなし、季節感もなし、そして単純なアイテムラインナップも大幅に少ない――ここまでいろんなものを削ったからには、何かもっと、この作品独自の楽しませる要素を盛り込むべきだったのではないか?
 見そこなったぞ、シン・ソフィアくん!

 ……とかいいつつ、ぼくはまだこのゲームをちまちまと続けている。アイテムを大量に揃え、キャラクリパーツも増やし、ぼくのミューズにSNKキャラのコスプレをさせるためである。もはや目的が変わってきている気がするがどうでもいい。
 実際、『ガルモ』の時もそうだったしな!

『ガルモ5』で作った『KOF14』参戦時の制服ナコルル。再現度かなり高し。

 今後も継続的にアプデが入るらしいので、もうちょっとがんばる!

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