【Poke】タイミング【SV】
よりによって前回のこの記事をアップした日の夜に、公式からさらなるストーリーの追加が発表された。我ながらタイミングの悪さに驚く。
来年1月配信の「番外編」と銘打たれた追加ストーリーでは、主人公+ネモ、ペパー、ボタンというエリアゼロ突入チーム、いわゆるホームウェイ組が、あらためてキタカミの里にカチコミをかける展開になるらしい。
『SV』と『剣盾』以前の歴代作をくらべた場合の違いは、システム面における全編オープンワールド化がもっとも大きなものではあるが、個人的にはもうひとつ、キャラクターやストーリーの描き方が地味に、しかしかなり変わってきていると感じている。
前回でも述べたが、ゲーフリはこれまでわりと、さまざまな謎や疑問、重要なキャラのその後などを描かずに放置する、ということをやってきた。それは携帯機メインで開発してきたこのシリーズの、スペック的な枷によって細かい演出ができなかったこともあっただろうし、あえてそういう部分を描かないことで、ユーザーたちに想像の余地を残すという制作陣のスタンスもあったのだろう。
ただ、現在ではもはやスペックうんぬんは問題にならない。実際、キャラクターがドットではなくポリゴンモデルで表示され始めた『XY』以降、徐々にではあるが、キャラクターたちが細かな演技を始め、それによって描けるストーリーの幅も増えてきていた。しかし、それでも世のJRPGとくらべれば、『ポケモン』シリーズは、特にキャラクターの掘り下げという点では非常に薄味な作りになっていた。
それが『SV』では、一部のキャラの内面にかなり深く踏み込むようになっている。実質主人公といわれるペパーやいじめ問題で苦悩していたボタンをはじめとするスター団の面々、強すぎるがゆえの疎外感、飢餓感をつねにかかえていたネモなど、ホームウェイ組の3人は、それぞれ重いものをかかえていたが、本編での冒険、主人公との旅やバトルを通して、彼らはそうしたものを少しずつ昇華し、それをはっきりと言葉に出してプレイヤーたちにしめした。
もちろん歴代作にも、主人公の旅と成長にかかわってくるような、さまざまな背景を持つキャラは登場していた。ただ、彼らはそれをあまり主張しない。周囲のモブたちのセリフ、断片的なメッセージなどからプレイヤー側が推測することが多く、自身が心情を吐露するキャラはほとんどいなかった。
たとえば、兄へのあこがれと劣等感をかかえつつも、最終的には闇落ちせずに踏みとどまったことでスグリとよく対比される(そしてやたらとコラ画像に多用される)ホップなどは、手持ちの変遷から彼の苦悩と迷いなどをプレイヤーが読み取るくらいで、彼自身はそうしたことをいっさい口にしなかったのである。
そういう作品群を見てきたからこそ、『SV』の主要キャラたちが自分の言葉を持った意味は大きな変化に思える。それは今作において、単純な勧善懲悪や子供の成長物語ではなく、いびつな親子関係や学校でのいじめ問題といった生々しいテーマがクローズアップされていることにも関係しているのかもしれない。
舞台がふたたびキタカミの里になり、ずっと引っ張ってきたモモワロウに絡むストーリーとなると、DLC後編終盤で休学してしまったスグリと、なぜか同時に行方不明となったゼイユが再登場するのはもはや既定路線だろう。DLCをプレイした人が感じた消化不良感の最たる部分は、4匹目のともっこのこと、そしてその後のスグリの姿を確認できないことだと思うので、この「番外編」の配信は素直にありがたい。来年のポケモンデーを前に、大きな楽しみがひとつ増えた気がする。
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