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【ラジオ】80年代サイケデリック探訪:デヴィッド・ロバックとペイズリーアンダーグラウンドを巡って.mp3 <後編>

ポッドキャスト番組「アーバンぱるNEW」の文字起こし記事です。

前編はこちら

<メンバー>
店長 / ダモリ / ファグ







<デヴィッド・ロバックの活動歴>



ファグ「ダモちゃんはデヴィット・ロバック関連は結構聴いてたりしますか?」

ダモリ「いや、聴きましたよ。一応、今回ひと通り聴いてみたんですけど。」

ファグ「どれが良かったとか、あるんですか?」

ダモリ「いや、まあ全部いいんすけど、うん。全部良くないですか?基本的には。」

ファグ「全部いいと思うね。」

ダモリ「デヴィッド・ロバック、そのホープ・サンドヴァルのソロやとそこまで思わないですけど、マジー・スターとかやとなんかカントリー・ロック、フォーク・ロック要素があるよね。」

店長「俺はですね、まあ、マジー・スターとかは元々好きだったんですけど。今回色々聴いてみて、やっぱりクレイ・アリソン、オパール時代が異常にかっこいいなと思ったな。」

ファグ「あー、クレイ・アリソン。最初のケンドラ・スミスと組んだやつですね。」

店長「そうそう。ケンドラ・スミスがいいんですかねぇ。」

ファグ「クレイ・アリソンは南北戦争の英雄から取られているというとこで、ここにもアメリカーナの精神性が宿っていると。」

店長「そうですね。」

ファグ「で、バンド名がオパールに変わるんですけど、オパールのバンド名の由来はシド・バレットから。」

ダモリ「あー、はいはい。そういう事。」

ファグ「うん、そうそう。"Opel"から取ってるんですね。で、さっきも言ったけどSST Recordsから出てて。なんか店長の好きなクレイ・アリソン、オパール期っていうのは、個人的には結構ドアーズとT.レックスやなって思う。あと、なんか"Happy Nightmare Baby"の1曲目はかなりT.レックスっすよ。」

ダモリ「めっちゃT.レックスやった?」

ファグ「T.レックスを感じる。」

Opal / Happy Nightmare Baby (1987)
SST Records




<ケンドラ・スミス>


ファグ「ちなみにケンドラ・スミスが抜けた後、ケンドラ・スミスは2枚アルバムを出してるじゃないですか?そっちとかはどうなんですか?」

店長「ケンドラ・スミス・プレゼンツ…、なんやったっけ?ザ・ギルド~なんちゃらみたいなやつ。」

ファグ「ケンドラ・スミス・プレゼンツ・ザ・ギルド・オブ・コンテンポラリー・アドヴェンチャーズ。」

店長「それの"Stars Are In Your Eyes"っていう曲が、大好き!」

ファグ「じゃあ、ケンドラ・スミスが好きなんじゃない?」

ダモリ「その可能性はある。」

ファグ「なんかインタビューを見てたら…、それ4ADやんか、確か?じゃないっけ?あ、その次のアルバムかな。95年のアルバムが4ADから出てて。その時に、4ADが今のケンドラ・スミスについて、みたいな事を話してる文章があって。なんかそれによると、ケンドラ・スミスはなんか90年代頭くらいから、北カリフォルニアの森に引っ越したらしくて。電気のない小さな小屋に住んでるそうですよ。」

ダモリ「割と自然派になってる感じですね。」

ファグ「ね。そうそうそう。」

店長「でも、なんか2枚目のソロ・アルバム、その4ADから出たやつポジパンみたいな感じじゃなかった?」

ファグ「あー、なんか俺さあ個人的にやねんけど、ケンドラ・スミスの性質・キャラクターって結構ゴスなんじゃないかなと思ってて。4ADからも出てるし。なんかドローンとゴシックのテイストを結構強く持ってる。イギリスっぽいって言ってもいいのかもしれんけど。」

ダモリ「ちょっとそれに関連して思ってんけど、なんかドリーム・シンジゲートの最近のライブにゲストで呼ばれて歌ってた映像があってんけど、かなり渋い感じの声になってましたよ。ニコみたいな。なんかめっちゃ低い感じで、凄い。」

店長「でも、元々低めやんか?ケンドラ・スミス。」

ファグ「ニコは結構低くない?」

ダモリ「低い。だから、ホープ・サンドヴァルとは全然方向性ちゃうなあ、みたいな。」

ファグ「あー、ホープ・サンドヴァルはロリボイスやもんな。」

ダモリ「そうそう。どんどんねっとりしていくみたいな。」



<ホープ・サンドヴァル>


ファグ「なんかオパールからマジー・スターになってさ、3拍子の曲が出てきたなっていうのが結構印象的だなと、続けて聴いてて思ったっすね。なんかこの3拍子のテンテンテン、テンテンテン、みたいなのがホープ・サンドヴァルの体のリズム・歌い方のリズムに合うのかなって思ったり。」

店長「なんかホープ・サンドヴァルがシルビア・ゴメスとやってた、ゴーイング・ホームっていう、85年ぐらいにデモテープみたいな作ったユニットの音源が上がってたよね?YouTubeに。それとかを聴いてると、なんか普通にマジー・スターの1stに入ってる曲とかがあって。あ、これホープ・サンドヴァルが作った曲やってんなっていうのとかもあって。その辺はなんか意外でしたね。ソングライターとしてのホープ・サンドヴァル、みたいな側面があったんやっていう。」

ファグ「うんうん。」

店長「ちなみに、その時ケンドラ・スミスのファンで、なんかそのデモテープをデヴィッド・ロバックに渡したら、デヴィット・ロバックも気に入って、みたいな所からの繋がりらしいですけどね。なんで、ホープ・サンドヴァル的には憧れの人、みたいな位置付けやったらしいけどな、デヴィット・ロバックは、一応。」



ファグ「うん、そうね。一応オパールはさ、バンドっていう形じゃないですか?マジー・スターもバンドやねんけど、やっぱり男女二人みたいな印象が
凄く強いんですよね。これって結構不思議というか。デラニー&ボニーみたいなさ。」

店長「アー写も二人のやつが多いもんな、なんか。」

ファグ「そうそう。ジェーン・バーキンとゲンスブールみたいなさ。」

ダモリ「あー、はいはいはい。」

店長「ホープ・サンドヴァルのウィスパー・ボイスもそうやし、なんか男女で男の方が音楽的イニシアティブを取ってるみたいな構造も何となく、90年代的なトレンドの形みたいな風にちょっと見えなくもないな、とは思ったな、なんか。」

ファグ「まあね。確かに確かに。」




<同時代のバンド達>


ファグ「でさ、そういう何て言うか、男女のイメージみたいなのが共時性を持ってるみたいなのもありつつさ。なんかもう1個、ペイズリーアンダーグラウンドがやっぱ完全に思い出されなくなるのが…、90年になったらだいぶ忘れられてると思うんですけど。なんかそこで何となく、やっぱ同時代のバンドみたいなもんが出てきてるような気がするんですよね。
マジー・スターだけが完全なオリジネーターっていうわけじゃなくて、あのムードみたいなのが結構色んな所から出てくるのって、ちょっと不思議やなと思ってて。どういうことやと思います?。例えば、ギャラクシー500とかね。カウボーイ・ジャンキーズとかさ、サンデーズとかね。」

ダモリ「うんうん。」

ファグ「なんかこう気怠い、物憂げな…、メランコリーかな?メランコリーななんか田舎っぽさっていうか、郊外のムードみたいなの。こういう音楽をこう全然…、カウボーイ・ジャンキーズはカナダじゃなかったかな?サンデーズはイギリスやし。なんかバラバラやけど、出てきたっていうのは何なんやろな?と思ったり。」

ダモリ「結構、同時代性がそういう音楽に。」

店長「そう。でもなんか90年代になると、サッドコアとかスローコアみたいに言われる音楽とかも出てくるけど。なんかその辺はグランジに対する反発やみたいな記事を読んだことがあるけど。そうですね、不思議な現象やなあとは思うけど。」

ファグ「うん。」

店長「分からないっすね、その辺はまだ。」

ファグ「うん。こういう所にもやっぱりデヴィッド・ロバックのキャリアの長さがなんか、影響を与えてるのかもしれないなと考えたりもしますね。」

店長「うん。だし、ベルベッツの影響力のデカさ、とも言えるのかもしれないですけどね。」

ファグ「あー、まあ再発されてるもんな、90年やと。」

店長「カウボーイ・ジャンキーズとかも、なんか"Sweet Jane"とかカバーしてたもんな、確か。」

ファグ「してた、してた!ルー・リードが褒めてたやつやんな?」


店長「で、マジー・スターがヒットして、なんかペイズリーアンダーグラウンドが出自として、一応また注目されるようになったみたいな事もあったんですよね、確か。」

ファグ「うん、そうなんですね。まあ、でも確かに自分が知った段階では、ペイズリーアンダーグラウンドっていう言葉はマジー・スターと紐づいてて。バングルスとか、のちに知るみたいな感じやったね。」

ダモリ「うんうん。」

ファグ「だから、音楽好き向けにはやっぱり、マジー・スターがペイズリーアンダーグラウンドの顔的なニュアンスを持つようになりましたね、90年代以降は。」

店長「うん。」



<マジー・スターについて>


ファグ「マジー・スターはどうなんですか、お二人は?」

店長「ダモちゃんはどうですか?」

ダモリ「やっぱマジー・スター、個人的に好きなのはなんかブルース・ロックみたい曲が入ってるのが凄い…」

ファグ「あ、入ってる!」

ダモリ「ブルース・ロックって言うよりかはスロー・ブギみたいな。ブギーなやつ。そういうのがめっちゃいいなと思って。」

ファグ「ブギーね。やっぱT.レックスなのでは?」

ダモリ「お、そこでT.レックス。」

ファグ「うーん、ブルースじゃないのよね。あんまり長尺インプロビゼーションみたいなん無いし。」

ダモリ「そうそう、そういうのは無いねんけどね。あとマジー・スター、1stの"She Hangs Brightly"。なんかスラップ・ハッピーのカバーしてるじゃないですか?なんかこういうのどういう経緯やったんかなみたいなのは、ちょっと気になります。」

店長「スラップ・ハッピー好きやもんね、ダモちゃんは。」

ダモリ「別にそういうわけでもないけど。」

ファグ「(笑)」

ダモリ「どこから持ってきたんかな?みたいな。そうそう。あと、なんかケンドラ・スミスもCANのカバーとかしてたじゃないですか?シン・ホワイト・ロープもカバーしてたんですけど。なんかその辺のどういう受容をされたのかな?みたいなのは、ちょっと気になりましたね。」

ファグ「結構でも、音楽的エリーティズムじゃないのかな、と思うけどね。ケンドラ・スミスのファーストキャリアのサスペクツとかでも、1st EPで"All Tomorrow's Party"をカバーしてたりするし。あとは、スリー・オクロックの前史のサルベーション・アーミーでも"Lucifer Sam"をカバーしてたり。」


Mazzy Star / She Hangs Brightly (1990)
Rough Trade Records


ダモリ「まあ、あのLOVE好きな僕からすると、アーサー・リーを取り上げているのもよかったです。93年のアルバム、"So Tonight That I Might See"。2ndか。で、その取り上げてんのが、アーサー・リーがソロになってからのアルバムで。なんかマジー・スターのその93年に出たアルバムの、前年に出たアーサー・リーの復帰作からっていうセレクトがなんか…。」

ファグ「泣けるやん。ロサンゼルス愛やね。」

ダモリ「ロサンゼルス愛なんすかね?」

ファグ「え、ロサンゼルスでしょ、LOVEは?」

ダモリ「あ、そうか。ロサンゼルスやね。」

ファグ「そう。LOVEがだって、ドアーズをエレクトラに紹介したみたいな話があるやん。アーサー・リーが。」

ダモリ「あー、はいはい。やっぱ、祝・復帰みたいな感じなんすかね?」

ファグ「やっぱりあるのでは?その郷土愛みたいなのが。デヴィット・ロバックの郷土愛!」

ダモリ「デヴィッド・ロバックの郷土愛 (笑)」

店長「いや、なんかマジー・スターのカバーで言うと、メンフィス・ミニーのカバーとかもしてて。結構その、アメリカの古いブルースとかフォークとか。で、なんかその辺の楽曲のチョイスは、俺は割とホープ・サンドヴァルの好みだったんじゃないのかな、と個人的には思ってるんですけど。」

ファグ「あー。じゃあ、デヴィット・ロバックはそんな大した奴じゃねえよ、っていう事ですか?」

店長「いや!そのマジー・スターの曲の作り方的に言うと、なんかホープ・サンドヴァルがインタビューで言ってたのは、デヴィット・ロバックが曲の元を書いてきて、ホープ・サンドヴァルがメロディーと歌詞をつけるみたいなやり方が、一応ベーシックやったらしいねんけど。なんで、そのギタリスト、サウンド・プロデューサーとしてのデヴィット・ロバック、みたいな仕事っぷりはあるんじゃないですかね、非常に。」


ファグ「なるほど。まあ、なんか映画の、オリヴィエ・アサイヤスの『クリーン』(2004)のサントラに入ってるデヴィッド・ロバックの曲もめちゃめちゃデヴィッド・ロバックやな、って感じするもんね。ちなみにその『クリーン』の楽曲提供でさ、ギャラクシー500のディーン・ウェアハム…」

店長「うん。ルナの方ね。」

ファグ「そうそう、ルナの人ね。ルナの人も提供してますよね。なんかアメリカ・ドリームポップ人脈、みたいな。」

店長「うん。」

ファグ「で、この流れで話すと割と面白いなと思ってるのが、マジー・スターの"Blue Flower"っていう曲があるじゃないですか?"Blue Flower"さ、途中に"Sunday Morning"のメロが入ってくるやん?」

店長「"I'll Be Your Mirror"ね。チャーンチャチャチャチャチャーンって入ってるね。」

ファグ「そうそうそう。あれ面白くない?なんかさあの感じと、やっぱり90年代になるとサンプリング・カルチャーみたいなのと接続するような感覚がちょっと出てくるというかさ。単純なカバーっていうよりはモロにそれを使うっていうのがさ。」

ダモリ「本歌取り的な?」

ファグ「そうそうそう。って思って。で、だからそういう想像力から、ホープ・サンドヴァルがマッシヴ・アタックにボーカルで参加したりとかさ。なんかだから、もうちょっと電子音寄りのアーティストの方にもホープ・サンドヴァルがボーカルとして顔を出す、っていうのが。なんかそういう所からの接続があるのかな?と思ったり、したりなんかしたりして。ま、ジザメリもそうか。あれ、めっちゃ打ち込みやもんな?あのアルバム。ジザメリに参加した時のホープ・サンドヴァル。なんかその両軸がある、っていうのが結構面白いなと思ってて、ホープ・サンドヴァル。」

ダモリ「うん。なんかバート・ヤンシュともね、共演してるし。」

店長「まあ、ホープ・サンドヴァルはなんかゴマ油みたいなもんやから、何にでも合うんじゃないですかね?結構あのボーカルは。」

ダモリ「ホープ・サンドヴァルがゴマ油 (笑)」

ファグ「えー、そうかな?ナポリタンに合わへんやん?ゴマ油は。」




<デヴィッド・ロバックとはどんな人だったのか?>


ファグ「もう1個話したい事あんねんけど、あのマジー・スターとかオパールをYouTubeで検索すると、すごい量出てこうへん?」

店長「あー、でも上げてるチャンネル2つぐらいしかないなって思ったけど。2~3個かな?」

ファグ「あー、そうなんや。なんかライブ音源とかもめっちゃ上がってるし。個人的に連想したのが、これP2Pでめちゃくちゃシェアされてたんじゃないかな?っていう邪推をちょっとしてしまって。なんかだから、ラリーズ的なカルトさがやっぱりバンド中にあるのかなぁ、みたいな事を思いましたね。」

店長「あー、そうね。デヴィッド・ロバックのちょっと謎めいた感じとかも、ちょっと共通する所はあったのかもしれんな。」

ファグ「ね。なんかペイズリー・アンダーグラウンド振り返り記事みたいなんに、みんなとまとめてデヴィッド・ロバック出てくる事、全然ないっていう。」

店長「なんか変人扱いされてるみたいな記事が多かった気がしたけどな、なんとなく。」

ファグ「うん。才能ある変人って感じですよね。」

店長「ちょっと面白かったのは、ロング・ライダースの人がなんかマジー・スターのメンバーオーディションみたいな受けに行ったら、なんか何回も対バンしてて絶対知ってるはずやのに、初めましてみたいな態度を取られて凄い傷付いたみたいエピソード喋ってたけど (笑)」

ファグ「(笑)。いいですね。やっぱ美意識によってこう作ってるっていう。なんかペイズリーアンダーグラウンドの精神性みたいなのを一番凝縮した人がデヴィッド・ロバックっていう感じがしますよね。」

店長「あと、なんかデヴィッド・ロバックでちょっと不思議やったのは、結構なキャリアがあるのに、なんかソロアルバムとかは作ってないよなっていう所が結構不思議で。なんか普通にインタビューとかでも、常にホープ(サンドヴァル)の事を考えて僕は作曲してるんだ、みたいな事を言ってたけど。なんかミューズが必要なタイプやったのかな?とかって思って。」

ファグ「うーん、なんかケンドラ・スミスもだって、付き合ってる時やもんな?ユニット組んでたの。」

店長「うん、そうそうそう。」

ファグ「ミューズって言うか、まあ、付き合ってる人と音楽やるタイプのヤツ!60年代の黒人のピンプと歌い手みたいなさ。あの感じかもしれないっすね。」

店長「うん。」

ファグ「スケコマシ的な。でも、やっぱり男女2人組っていうと、結構フランスのスケコマシ感、ゲンズブールのスケコマシ感がね。」

店長「あと、マジー・スターの音楽性について思った事やねんけど。90年代に出したアルバム3枚も、再始動してから出たアルバムも基本的にはほぼほぼ一緒やなっていう印象で。」

ファグ「うんうん。」

店長「なんかちょっとラモーンズ的というか。なんかデヴィッド・ロバックの美意識が完成したのマジー・スターやったのかな、っていう印象を持ってるんですけどね。ま、キャリア的に言うとレイン・パレードが立ち上げというか、まだ駆け出しの段階で。レイニー・デイでなんかちょっと実験してみたいな。クレイ・アリソン、オパールで発展させて、なんかマジー・スターで完成する、みたいな音楽的な変遷やったのかなと思ってるんですけど。」

ダモリ「うんうんうん。」

店長「で、なんかその美意識がね、ドリームポップっていう形でなんかずっと…。まぁ、そうですね。シガレッツ・アフター・セックスとかその辺にも、デヴィッド・ロバックの美意識というのが受け継がれてるんじゃないかと思ってるんですけど。」

ファグ「うん。まあ、"Fade Into You"がむっちゃ売れた後に消えていくというかさ、表舞台から消えようとするみたいなあの感じも、なんかこう消費されたくないみたいな感じが強く出ているなと思いますね。」

店長「うん。」

ファグ「美意識とは何なんですかね?言葉にしてみると。」

店長「うーん、そうですね。なんか難しいけど。でも、ちょっとインタビューで面白かったのは、なんか冒頭にもちょっと話に出たけど、デヴィッド・ロバックはL.A.からなんか1回、半年ぐらいニューヨークに行ってて。で、なんかその時に見た、テレヴィジョンとかパティ・スミスに結構影響を受けたけど、なんか自分がやろうと思ってもそういう風にはならない、みたいな事を言ってて。なんて言うのかな?僕は僕でしかないんだ、じゃないけど。そういう形にしか出来ひん人やってんやろうなっていう。」

ファグ「うんうんうんうん。」

店長「なんで、なんか割と独自の世界観に籠って、外界をシャットアウトして、一人で作り上げるタイプの人やってんやろうなって思ってるんですけど。」

ファグ「うんうん、確かにね。その時代的なムードに比べて、凄いモダニストやったっていう事かもしれないね。」

店長「うん。」

ファグ「だから、彼らがこう崇めていたのは、60年代ロックのオリジナリティっていうのに憧れを持ってキャリアをスタートさせる訳ですけど。そういうものを再現したいという欲望を、最後まで貫徹したのがデヴィッド・ロバックだった様な感じがしますね。」

店長「うん、そうっすね。ちなみにレイン・パレードの由来も、"Don't rain on my parade"(俺達の楽しみを邪魔しないでくれ)、みたいなところが由来らしいですからね。」

ファグ「えーー」

ダモリ「その反応は (笑)」

ファグ「カッコ悪いな。」

店長「(笑)」

ファグ「終わり、終わり。」



前編はこちら






【REFERENCE】

○The Paisley Underground: Los Angeles's 1980s psychedelic explosion

https://www.theguardian.com/music/2013/may/16/paisley-underground-history-80s-los-angeles-psychedelia

英Guardian紙の記事。ペイズリーアンダーグランドについて始まりから成功、その終わりまでSyd Griffin、Steve Wynn、Vicki Petersonなど、当事者の言葉を交えながら群像劇的に年代を追って書いている。社会に対して強く反抗する程のバックグラウンドが無くパンク・シーンには馴染めなく、仲間意識の強い集まりだった。またペイズリーの面々による成功も、90年代に入る前には終わりを迎えたことを語っている。


○Paisley Underground: the 1980s LA psychedelic scene that inspired Prince

https://www.theguardian.com/music/2013/may/16/paisley-underground-history-80s-los-angeles-psychedelia

上の記事と被るところもあるが、プリンスとの関連にもう少し詳細に触れている。Dream Syndicateやペイズリーアンダーグラウンドのやっていた事が、『Around The World In A Day』期のPrinceに影響を与えるほどファッショナブルだったことが書かれている。


○The Last Reminisce on L.A.'s Late '70s Punk Rock 'Explosion'

https://clrvynt.com/the-last-interview/

Three O’ClockやBanglesも影響を受けた、LAパンクのレジェンドThe LastのJoe Nolteへのインタビュー。ペイズリーアンダーグラウンドみたいな音楽もあれば、Black Flagのようなハードコアパンク、Christian Deathのようなデスロック(ゴス)もあったという、混在する80年代前半のLA音楽シーンが語られている。


○Rain Parade's Matt Piucci: Paisley Underground Royalty

https://www.popmatters.com/rain-parade-matt-piucci-2022-interview

Rain Paradeの2nd『EXPLOSIONS IN THE GLASS PALACE』リイシュー時の、David Roback、Steven RobackとともにRain Paradeの共同設立者であるMatt Piucciのインタビュー。DavidのRain Paradeへの貢献を語り、またペイズリーアンダーグラウンドという呼び方を(ムーブメントの最も有名な人物でありながら)あまり好んでいなかった事などを語っている。


○Mazzy Star, Out of the Fjord

https://www.interviewmagazine.com/music/mazzy-star-seasons-of-your-day

米Interview誌による『Seasons of Your Day』(2013)発売時のMazzy Starへのインタビュー。インタビュー自体が少ないバンドだが、ここではDavid RobackがTom Verlaineを好きなギタリストとして触れ、Hope SandovalがGreen on Redのライブを素晴らしいものとして挙げている。


○Kendra Smith | The Disappearing Art of Living

https://www.kosmosjournal.org/kj_article/kendra-smith/

アート系ジャーナルKOSMOSの2019年の記事。Kendra Smithの来歴やインタビューを掲載。都会を離れ、田舎で自給自足的な生活をしていた事が書かれている。また、最近の音楽活動として、The Dream Syndicateのライブへのゲスト参加、The Magicians’s Orchestraとしての活動がピックアップされている。


○グレッグ・ギンはなぜGrateful DeadのTシャツを着ていたのか その1

https://inthemiddle.jp/archives/2788

音楽系サイトin the middleの記事。直接関係はしないがパンクスとサイケの(ヒッピー嫌悪だけではない)関係性とも言える、Black Flag/SST RecordsのGreg GinnがGreateful Deadへのリスペクトを公言していた事を書いている。またデッドとの共通点をアメリカ的な探究・再定義行為(アメリカを探す旅)とし、それはペイズリーの面々とも通ずる行為に感じられる。


○Remembering David Roback and L.A.’s Paisley Underground Scene

https://www.lapl.org/collections-resources/blogs/lapl/remembering-david-roback-and-la-paisley-underground-scene

ロサンゼルス公共図書館のページ。David Robackが亡くなった時期の記事で、ペイズリーアンダーグラウンドに関する文献を紹介している。


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