国際新秩序構築への関与

 仰々しいタイトルですが日本がいつまでも放置できない、取り組まなければならないテーマです。
 自立に向けた自国のカタチを再構築すると同時に国際社会の再構築への眼を向けるべき時期だと思います。これにより日本の評価が高まり、国土の資産価値も上昇します。

世界レベルのコロナ禍パンデミックそしてアフガン政権の崩壊等は国際秩序再構築の大きなきっかけになると思われます。

 いうまでもなく日本は戦後ずっと敗戦国として米国の傘下に留まってきました。これまで多くの議論はありましたが基本的には変わりませんが、世界はベルリン壁の崩壊後は米中対立構造となり、また、中東等での混乱も続いています。経済的にはこの間、世界の大国となり社会文化経済面ではG7の一画を占めてきました。しかし、中国のさらなる野望は加速する中で近年、ようやく、新たな動きの芽が出てきました。
 このひとつが安全保障への取組み「自由で開かれた太平洋」です。野党はもちろん、メディア、識者?の評判は芳しくないですが必要な動きです。
 さて、長年にわたり支援してきたアフガンから米国が撤退しました。民主主義サイドと中国、ロシアとの軋轢は世界を分断してきた大きな課題ですが、イスラム諸国との関係も深刻です。イスラム諸国自体が一枚岩ではないことがさらに複雑化していますが、今回の撤退でアフガン首脳部が逃避し、タリバンが制圧したことは混乱が長引くことを示唆しています。
 日本相変わらず米国依存であり、独自の情報や行動が無いため多くの関係者が取り残されています。米国の傘下にあってもしたたかに独自の安全保障策を保持してこなかったことがここにも出ています。
 コロナ禍により安全保障問題がトーンダウンしています。本来はコロナ禍パンデミック対策も安全保障の重要な課題です。
 今後は安全保障保障政策ととも新たな国際的秩序の再構築にも重点を置く必要がありますし、これが安全保障そのものでもあります。これまでほとんど国際関係には関与してこなかった日本が再構築に何かできるのか?という疑問は当然ですが出来るか?を問うのではなく、どのようにやるのかを課題とすべきです。

その前に、本件に強くかかわる前安倍政権での取り組みを概観してみます。


■安倍政権での取組み(2013年以降)

 第2次安倍政権は7年8カ月におよぶ成果として外交があります。国内では過小評価されているようですが、国際的にはかなり評価されています。新政権はこの成果を踏まえて新たな外交そして国際的な地位向上を図ることが期待されます。
 第1次安部政権時代では「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」そして集団的自衛権の承認を政府解釈の変更と平和安全法制により実現し、2006年の第1次安倍内閣の行政改革として、既存の安全保障会議に替えて国家安全保障会議(日本版NSC)を創設することを提唱しましたが体調不良を原因として辞任したため福田内閣では白紙とされました。
 その後、第2次安倍政権において2013年に改めて国家安全保障戦略(NSS)を策定し、国家安全保障会議(NSC)を設立させました。
 また、安全保障面でも米国・トランプ大大統領との親密関係による日米同盟の深化は特筆されます。各国首脳も扱いにくいトランプ氏と同調しつつ、世界を俯瞰する外交や積極的平和主義を掲げ、民主党政権下で悪化した日米同盟を深化させました。これらにより。G7、G20のまとめ役のポジションを得て、先進国間での発言権を高めました。TPPも当初の米国離反後、関連諸国をまとめてCPTPP(太平洋連携協定)、その後、米国とは日米貿易協定を締結しました。
 さら第6回アフリカ開発会議では「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱しましたがこれも重要であり、これまでに無い積極的な世界戦略の提案であり、関連諸国とのさらなる連携を強めています。

画像1


■日本の新・国際秩序再編への貢献

 これまで民主主義を先導してきた欧米諸国の内、米国・英国・独国は中国との関係も含めて体を成していませんし、仏国だけでは不十分であることは明らかですので、海外諸国からは日本の積極的な関与が期待されています。EU自体も再編が問われている状況です。
 日本は江戸時代からしたたかに欧米諸国と一定の距離を置いて外交をし、国力を高めてきました。明治以降、欧米からの圧力により戦争に巻き込まれましたが、第二次世界大戦終結後は世界の欧米による植民地は無くなり、新たな統治体制になりました。しかし、戦後の国際関係は複雑化しており戦勝国による国連ではすでに国際紛争を解決するすべはなく、10年ごとの目標設定(現在はSDGs)の提示が役割となってしまっており、その改革が問われています。


■国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場

 これまでも多少は動いていましたが、改めて、茂木外相が国連創設75周年記念にビデオ演説で「国連安全保障理事会の常任理事国入りを目標にする」ことを表明しました。アフタ―コロナの世界が模索されている中でこれまでの国際秩序を再編する良い機会であり、安定した信頼できる民主主義国として新たな責務を果たすべきチャンスと考えられます。
 昨年に就任した菅首相からはこれまでにない新たな国際秩序についての発言はまだありません。コロナ禍で忙殺される中ですが国内向けの対応だけでは期待外れです。
 本年8月15日のタリバンによるアフガン制圧によりアフガン前政権は崩壊し、撤退した米国はもとより自由主義諸国も自国民の撤退に追われ、今後の対応策は模索中です。
 中国覇権主義のさらなる展開とその米中対抗が大きな課題の中、イスラム諸国とのキリスト教国との対立、イスラム諸国間の対立、EUの弱体化、テロ対策等の構造的な課題が顕在化しており世界地図は大きく変動しており、新たな国際的秩序が模索されています。
 その中で米国は今回のアフガン撤退に象徴されるように世界の警察機能を果たさず、果たせないことが明確になりました。もちろん、改めて、警察機能を拡充するポテンシャルはあると思います昨今の国内情勢ですぐに可能とは思えません。
 その中で日本への期待が寄せられています。
 日本はこれまで国際間の紛争などには全く口を出さない、出せない状況でした。とは言え、経済面、文化面等では相当な貢献をしてきおり、その信頼性は高いものがあります。また、自衛隊も関与しやすくはなってきました。
 日本の国際的な視点での特徴・強みは多様性宗教のしがらみが無いため宗教所以の差別が無いこと、植民地支配から解放したこと、従前の支援政策等によるイスラム諸国・アフリカ諸国等からの信頼、製品・文化への信頼・敬意を持たれていること、中立的に高い議論と行動が出来る素地があること等であり、本来は国際的な紛争での仲介機能としては最適なポジションです。
 急に仲介機能や国際再編に口を出し始めるのも唐突感があるかもしれませんが上述したようにジャブは出し始めていますし、改めて、戦後の総括を表明しても良いかもしれません。
 従前からの国際的な課題である「戦勝国による戦勝国のための国連の改革」も同時に行うべきです。常任理事国になることもさることながら、国連自体を改革して、一定のポジションを得る方向が重要です。
 そのためにはやは人材がポイントです。日本が持つ本来のポテンシャルを活かすのは政府の確固たる表明とともに国際的機関等での人材配置とそれぞれの個々の活躍が重要です。政府も民間も若い世代は国内の内向きではない世界に向けての活躍を期待したいところです。
そのための試金石として秋の自民党総裁選挙と総選挙を見ていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?