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偽書・2020年5月29日の日記

自室の網戸に長年こびりついていた大量の埃をホッコリンに食べさせていたら動かなくなってしまったので、仕事のあとジャスコに行った。

むかしにくらべるとホッコリンを取り扱うお店も少なくなってしまった。家電量販店でも売り場が縮小している。基本的にホッコリンが動かなくなるのは最低5年の寿命か過度の詰まりによるものなので、買い換える人も少ないし、メンテナンスにも手間がかかる。ダイソンの掃除機やルンバみたいなロボット掃除機が人気な昨今そりゃニーズはあまりないよなという感じ。

ジャスコの3階、生活用品売り場をくまなく探すと掃除機やルンバの近くではなく、本当に端っこの方にホッコリンの売り場があった。ベストを着用したアドバイザーもいる。ホッコリンは優秀だけれど、メーカーから送られてくるアドバイザーは関節から常に蒸気を漏らしているのですこし苦手だった。これも人気がなくなってきてる理由のひとつかもしれない。

アドバイザーがギコギコ言うには大手メーカーはもう全然製造していないらしく、国内で製造・販売を行っているのは2社だけらしい。どちらも全然知らないメーカーだった。
スウェーデン製もあった。欧州で「TABE-TABE」という名前で流行ったときに参入したメーカーがいまも作っているらしい。ほこりキャッチ毛並みがきれいだったけれど、でもこれは高すぎた。
意外なことに中国製はないらしい。倫理的な理由で禁じられているという。[※1]

大小さまざまなケージの中から、モルモットぐらいの大きさのやつを見つけた。
まん丸になって微睡んでいるホッコリンのふわふわした毛を撫でてやると、ぴたりと手のひらに吸い付いてきた。目をぱちりと開け、何度かうぬうぬと呟くと、そのまま這って手の甲まで来た。
ぼーっとそれを眺めてたら手の甲に生えていた毛は食べられてしまった。一瞬焦ったけれど、アドバイザーさんが甲高く蒸気を噴射させて慌てているのを見たらなんだかかえって冷静になってしまい、どうでも良くなった。これぐらい別にいいかなという気もする。

そいつを購入した。3000円ぐらいだった。ついでにたて笛も新調した。むかしみたいなオカリナ[※2]はなかった。

帰宅して試しに自室のフローリングにはなしてやると、転がったり這いまわったりして床に落ちた髪の毛や小さな埃をむぐむぐと食べはじめて良かった。PS4のコントローラーやPCのキーボードの上に置いてやったら、アメーバみたいにびゃーっと体が伸びてあっという間に包んで埃が取れた。

放っておいたら棚の裏に行きそうになったので、そこはまた今度にしようと思い、説明書を見ながら笛を吹いて大人しくさせた。ケージに入れて、もう一回笛を吹いてスリープモードにした。ヘビーユーザーみたいに指笛や口笛で制御できるようになったらかっこいいなだろうなと改めて思う。

週に一度は掃除機をかけたりしたいし、こまめにホッコリンも使って網戸とか本棚の上とかをきれいに保ちたいなと思った。

そんな感じでした。


※1 何者かが流布した悪質な譜面による死亡事故、また改造版による犯罪組織間での謀殺事件が多発したことにより、1983年に製造及び販売を禁止とする法令が施行された。

※2 ホッコリンの外観が『となりのトトロ』に登場するまっくろくろすけに酷似しているため、制御装置としてオカリナを使用するのがブームとなった。しかしオカリナの音色・波長に対応していないホッコリンが多数あったため、ホッコリンとオカリナ双方の大量破棄や野生化が社会問題となった。

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