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なにかが変わる弟子屈暮らし vol.14
東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。
弟子屈町はここ!
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窓からエゾヤマザクラが見える。
最近気がついたのだがツルウメモドキが巻き付いていた。他の木に絡み這い上がる蔓の様相に反し、色づいた果実は可愛らしい。
そう言っている間にもはらはらと落葉が進み、早速、氷点下になる日も出てきた。
先月買ったばかりのウールのセーターに毛玉ができていた。当たり前のようにダウンを羽織る。風が冷たい。
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欣喜雀躍
疲れた時に川湯温泉に行きがちだ。
寒くなり始めたこの頃、左膝が痛くて庇う様な歩き方になった。
「川湯に行ったら?」
そう言われてプチ湯治。
すずめ食堂でごはんを食べてから欣喜湯に。
欣喜湯の欣喜はすずめが小躍りする様子、欣喜雀躍からきている。
雀といえば、このまえ暖炉を覗いたら雀がいてびっくりした。調べると北海道では煙突の5本に1本は雀の死骸がいるとのこと。
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湯治の最後に硫黄山の駐車場に寝っ転がる。
絶対に誰も来ない。星が広がって、噴気のシューシューという音が心地よい。ここでみる星が一番好きだ。
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はじめてパトカーに止められる
釧路から帰る途中、パトカーにすれ違う。
バックミラーで見てるとなんとUターンしてこちらに向かってくるではないか。
ロックオン。
しばらくして案の定「運転手さん停まってください」と言われ、覚悟を決めて止まる。
横浜にいた頃、原付でよく違反金を払ったことを思い出した。
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「ナンバー灯がついてないんです。でもみんな普通気がつかないので、今回は注意です。」
なんと。
神奈川県警と違う。
「いいんですか、ありがとうございます。」
ナンバー灯については本当に気が付かなかったというか知らなかった。
「一応、免許証いいですか?」
免許証を渡すと、こちらを見て
「どうして弟子屈に引っ越されたんですか?」と聞かれる。毎度の質問だ。
その免許証には3つの住所が書かれている。
もう少ししたらできれば地元民だということにしたい。
ナンバー灯は翌日ネットで調べてニコットで購入して無事、付け替えることができた。
旭川で待ち合わせする
本州から車で北海道へ友人が来ていた。
札幌からそっちへ行くので、旭川方面で待ち合わせして観光とハイキングをしよう、という。
友人は「そっち方面に行っている」という感覚と思われるが、意外にも弟子屈からだと旭川も札幌もそんなに変わらない。(札幌5時間、旭川4時間)
話を詰める暇も無くその日はやってきて、仕事終わり、ロングランを決行する。
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夜10時。ようやく旭川に着くと友達が待っていて、一緒にお風呂に入りに行ったり1000円も払っていないのにグダグダとチェーン店で話し込んだ。
「かほ氏、どうしたの?凄い青クマ。それに肩も巻いてるよ。」
きょうの労働時間と運転時間を考えれば当然だ。
だが確かに、この頃左肩が何かに取り憑かれたように上がらなくなっていた。こうやってだんだんガタガタになっていくのか…と半ば他人事だったが、ここまではっきりと言われるとすこし見直すかという気にもなる。
友人は肌つやがよくとても幸せそうだった。エステにはまっているらしい。やはり他人の力は必要なようだ。安心した。
旭山動物園へ
前々から旭山動物園には行きたかったが、せめてここには誰かと行きたいと思っていた。
友人が誘ってくれてその機会を得る。
アザラシ、カバ、ペンギン、キリン、レッサーパンダ。
北海道の動物と題されたゾーンも多く、ヒグマ、エゾフクロウ、キタキツネ、エゾタヌキ、モモンガ、そしてエゾシカもいた。
旭山動物園の展示はかなり興味深かったが、北海道の動物がみたいのであれば、弟子屈に呼べばよかっただろうかと思った。
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「エゾシカの森」
あんなに毎日ぶつからない様に気をつけているのに。わざわざ見に行く。
こちらに来てからというもの、エゾシカは身近な動物だ。草原を走り森に入り川を渡り、そして道路を横切る。
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そう考えると柵に覆われた「エゾシカの森」はかなり手狭に思えた。彼らがこの森の中で生を全うできるだろうかと、動物園に来ておいてお節介なことを考えたりする。
エゾシカ達にとって冬前のこの時期は発情期真っ只中だということを私は知っている。雄が雌を呼ぶ声が森にこだましているのだ。(物凄い鳴き声。)
夕方、もう一度この森という名の柵の前を通った。
ガシャーン!!!
物凄い音がした方を見ると雄鹿が雄鹿に突進して、フェンスは歪み、ぶつけられた方の雄鹿は右の後脚を負傷して殆ど歩けなくなっていた。雄鹿はなおも執拗に追いかけ回し、その目はすわっている。
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雌が足りないからだという言葉が聞こえたが、どうだろう。
係員さんは「いつもと全然顔が違うんです」と慌て、後ろで飼われているオオカミは模造の岩山のてっぺんに上がる。女たちは悲鳴と「もうやめてあげて!」と口々に言うも何故か一番齧り付く様に見ている。柵越しのカップルは手を繋いだまま固まっていた。
雄鹿たちの真意はわからないが、他の鹿も後から攻撃に加わっていて男同士の決闘というより、狭い社会で起こるイジメのようだった。ただこうなってしまっては柵の外で眺めることしかできず、残酷だ。
翌日、旭岳に行く。
正面から國分さんがやってくる。
お互い屈斜路にいるのに旭岳で鉢合わせ。お願いして写真を撮って頂いた。
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コースタイム1時間くらいのハイキングだが、私は写真、友人はYouTube用の撮影に忙しく結局倍以上の時間がかかった。
これからYouTuberと旭岳行く人 pic.twitter.com/VPzCIqjC0L
— kaho | 北海道 (@urayama_doto) October 13, 2022
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移住系ではない私
移住2年目にも関わらず、気がつくと「何かが楽しいからここにいるという訳ではなく、ただここで生きているだけだ」という感覚になっていた。
その土地その土地で楽しみ方というものはあるものだ。
だから、超楽しい、弟子屈サイコーみたいな言葉はなんだかしっくりこない。だって私は地元横浜サイコーとか言ったことがないし。
とか言って、なんだかこの頃いじけている。
今更そんなに尖らなくたっていいと思うのだが。
旅や移住には夢という名の空想がある。
対してここで暮らしを紡いでいくということ。
それをなんと表現すればよいだろうか。
だんだんとここでの生活が日常で、当たり前で、転居癖のある私がずっと憧れてきた「普遍性」を手にし始めている。
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私がここ弟子屈での生活で感じたことを書き記す事は、自分が1ヶ月を振り返って心を整えるということの他に、もしかしたら私と同じように「ここに住んでみたらどんな生活になるんだろう」と思っている人に寄り添えるものであったらいいなと思い、書いていた。
当初は道東の自然の変化を取り上げたり、やはり都市生活との対比を書く事でわかりやすくしてしまう事も多かったが、それすら素朴な表現だったと思う。
同じことを今やるとどこかわざとらしい感じがして、躊躇いがある。
それでもここで暮らしていく中で出会うふとした時の喜びや発見、人との関わりで生まれる感動、そして違和感をどこかに書き記すことに意味があるのだと思う。それにやっぱりサイコーなことはサイコーだと笑い飛ばしたい。
また書こう、自分のために。
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私は散っていく様が好きだ
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浦山 夏帆
1993年生まれ 東京都出身
横浜市立東高校卒業後、日本宝飾クラフト学院でジュエリー制作のふわっとしたところを学ぶ。宝飾業界8年目で、住んでみたかった北海道弟子屈町に住まいを移す。夢は森の中にアトリエを持つこと。鉄道とか山も好き。
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