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なにかが変わる弟子屈暮らし vol.21

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。

桜が咲くのは例年5月半ば

2023.05

エゾヤマザクラは、開花と同時に葉も出てくる

「まだ桜咲いてるんですね」と言われることもあるが、ゴールデンウィークに桜が咲くのはこちらでは異例の早さらしく。
その花も散る頃、今度はスモモやエゾノコリンゴの白い花が目立つようになり、樹々の芽吹きも一斉に始まった。
新緑の時季は短く、気温も月の後半には25℃を越える日も出始めた。
大地は力強く緑色に輝いていて、さながら夏のようだ。

5月末ごろ、雨の翌日

残雪の藻琴山へ

ゴールデンウィーク途中、午後休みができた。
「疲れが溜まるから休むといいよ」という意味での計らいなのは分かっていたのだが、風のない快晴を寝て過ごすなどできず、気がつくと藻琴山登山口へ来ていた。

入り口にきてびっくり。思っていた以上のグチャ雪。

シャーベット雪で怪我をしそうなので途中で撤退するも、心洗われる美しさだった。こんなに風のない藻琴山も珍しい。

屈斜路湖、硫黄山、摩周岳
残雪と知床方面の山々

採取できる月

地面を突き破るようにして、こごみが生えてきた。山菜は興味がなかったが、友人が調理している様子をSNSでみて、それが素敵だったので自分もやってみようと思った。
ゴールデンウィークの連勤を終え、片付けて「さあ帰ろう」という頃、傾いているけれどまだ高い陽の下でこごみを採取した。

アイヌ民族資料館に屈斜路コタンのカレンダーがあったのだが、それでは5月を「採取できる月」という意味で【モキウタ チュッ】と呼ぶらしい。

採取したこごみはマヨネーズと昆布醤油で適当に和えた。その他、おひたしにしてみたりもした。
それからというもの、地面から次々と食べ物が出ているように見える。
タラの芽も見つけたが、ヤマウルシのそれに似ているとのことで、初心者なので念のためやめる。来年はもっと採取できる月にしたい。

マヨネーズと賞味期限切れの鰹節で
クサソテツの若芽を「こごみ」と呼ぶ

摩周屈斜路トレイルを歩く

5月中ば、連勤明けに摩周屈斜路トレイルを歩いた。コースは1日目は川湯温泉から和琴半島まで、2日目は和琴半島から美幌峠まで歩く計画だ。
自称健脚もずいぶん鈍ってしまったので、体力に自信がなかったが、意外に負けん気があるので気力で乗り切るつもりだ。
スルーハイクと呼ぶトレイルを通しで歩く機会はそうそう無いし、なによりこの辺りの植生や歴史を知っている方々と歩けるので、参加しない理由はなかった。

川湯温泉から和琴半島までは実は去年も歩いていて、自然の道と舗装路が交互に続く道だ。
途中の仁伏半島の登山道を歩くのがとても楽しい。誰もいない湖に、カワアイサの親子がいた。

背中におんぶなんて可愛すぎる

仁伏半島は「仁伏オヤコツ」とも呼ばれるが、地面から時折蒸気が噴出している様子が、和琴半島の「オヤコツ地獄」を思わせる。
オヤコツというのは、アイヌ語で「オ(尻が)ヤ(陸地に)コッ(くっついている)」という半島を意味する言葉のようだ。

2日目は和琴半島から美幌峠まで進んだ。
途中から、摩周屈斜路トレイルとしては未整備のルートとなっている。
普段であれば、車で通過するところをじっくり歩きながら、そして車では通れない道を使うのだが、それは同じ場所を違うレンズで見ているような感覚だ。
終着地、美幌峠から自分のきた道を眺める。

ちょうど指差している方角から湖沿いを時計回りにまわってきた

川湯温泉からずっと進み、半島を通って峠を登ってきた。それに、和琴半島ではいろいろな植物を見つけるのが楽しすぎて2時間も経っていた。
トレイルなのに進まないなんて。

イヌエンジュ、ヒトリシズカ、クジャクシダ、ツクバネソウ、ミヤマハンショウヅル、オククルマムグラ

屈斜路湖を背にその先へ目をやると、この日は大雪山まで見渡せるほどの見事な快晴だった。
「そうだ、こういうことがずっとやりたかったんだ」と改めて思わされる。

和琴半島のカツラの木と

浦山 夏帆
1993年生まれ 
横浜市立東高校、日本宝飾クラフト学院卒。
宝飾業界8年目で、ずっと住んでみたかった北海道弟子屈町に住まいを移す。地域おこし協力隊として地域観光のプロモーションに携わった後、現在は宿泊施設のスタッフとして奔走中。夢は森の中にアトリエを持つこと。ときどき指輪を作ります。デザインとライティングは勉強中。鉄道とか山歩きも好き。

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