見出し画像

MS-07B/MQ グフ(マ・クベ専用機)

 マ・クベといえばYMS-15 ギャンの印象が強いが、こちらは珍しいグフの専用機、恐らくオデッサ基地司令時代のもの。とはいえ、いわゆるエースパイロット用のカスタム機と異なり、カラーリングと頭部ブレードアンテナの特徴的な形状を除けば量産型と同じスペックだったらしい。

スペックは量産型と同じ


 デザイン的にはギャンから遡行して起こされたもののようにも見えるが、強引に理屈をつければグフではランバ・ラルの青、ドムでは黒い三連星の黒など、公国軍では初期に搭乗したパイロットのパーソナルカラーがそのまま制式採用される例がある。ギャンがツィマッド社からロールアウトされた時点での機体色は不明だが、もともとマ・クベのパーソナルカラーとして青とダークグレーがあり、ギャンがグフからギャンへ継承されたとい可能性はある。ただしこのグフ自体の出撃は確認されておらず、実機が存在したか疑義もある。

マ・クベ大佐が搭乗したことはあるのだろうか

 慣例的に公国軍では高級将校に専用機が支給されたという説もある。指揮官は最後には自ら出撃すべしという含意らしく、象徴的な意味合いで旧日本軍の軍刀のようなものと思われる。実際にはほとんど実戦投入されることはなく、主に典礼用として用いられる程度だったらしい。確認されている限りではドズル・ザビ中将のMA-06FSザクⅡとMA-09Rリックドム、ガルマ・ザビ大佐のMS-06FSザクⅡ、エギーユ・デラーズ大佐のYMS-09R2 プロトタイプ・リックドムⅡなどがある。

ヒート・ロッドと5連装フィンガー・バルカン


 しかしドズル中将のザクは非公式ながら出撃したという伝聞もあるが、MSのような高価な兵器をほぼデッドストックになる前提で高級将校に一様に支給するような余裕が戦中の公国軍にあったとは考え難い。ドズル中将とガルマ大佐はザビ家の一員であり、またそれぞれ宇宙攻撃軍司令、地球方面軍司令という要職にある。デラーズ大佐は親衛隊長、マ・クベ大佐はオデッサ基地司令と、階級としては少なくとも大佐以上、ポストとしては枢要な任務に就く司令級に限られていたのではないか。

ヒート剣


 さらに推測すると、デラーズ大佐はギレン・ザビ総帥、マ・クベ大佐はキシリア・ザビ少将の側近であり、それぞれ極めてザビ家に近い立場にいる軍人という性格もあった。恐らくは、このような象徴的な専用機の支給は原則的にザビ家の一員に限定されており、ザビ家に近い立場の将校が特別な任務に就く際に、謂わば下賜品のような形で支給されたのではなかったか。

こちらの方がマ・クベに似合う



 そう考えると、テキサスコロニーにおけるマ大佐の「ギャンは私用に開発していただいたモビルスーツだ。キシリア少将へ男としての面子がある」という言葉にも特別な含蓄が感じられてくる。マ大佐にとって専用機の下賜はキシリア少将からの寵愛の証なのである。オデッサ赴任に際してこのグフがキシリア少将から下賜されたとすれば、実用性を欠いた(ザビ家の専用機を模した)過剰な装飾も、自らをザビ家に準ずる存在とする自意識の顕示ともみえるのである。
 それにしてもグフといいギャンといい、官僚的な印象を裏切る格闘戦特化の機体を専用機とするあたりに、公国軍のなかで文弱の徒と看做されがちなマ・クベ大佐の屈折をみるのは筆者だけだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?