MSM-08 ゾゴック
「ジャブロー潜入計画」のために設計された特務MS群のひとつ。地中を掘削してアマゾンの地下深くに存在する地球連邦軍本部ジャブローに潜入し、中枢部を直接攻撃するというかなり大胆な発想で企画されたもので、各機の仕様はこの作戦意図に特化したものになっている。設計のみのペーパープランとされていたが、U.C.0096年にニューギニアのシンプ基地隊の残党軍によって実機が運用されていた例がみられたことにより、少数の試作機が生産されていたか、あるいは後に再現されたレプリカという説もある。
特務MS群は地中を掘削して侵入路を啓開するEMS-05アッグ、砲撃戦型のMSM-04Gジュアッグ、格闘戦特化型とされる本機とMSM-04Nアッグガイで構成される。これは作戦の性質上、高い隠密性が要求され、音や光を発する火器の類の使用を出来るだけ減らすために、前衛を務める2機には高い格闘戦能力が必要だったためとされる。
また特務MS群は高温多湿なアマゾンの環境下で安定した稼働を得るために水陸両用MSをベースとして設計され、本機ゾゴックを除くアッグ、ジュアッグ、アッグガイの3機はMSM-04アッガイの試作機をベースとした設計でアッグ・シリーズと呼ばれるのに対して、本機ゾゴックはMSM-07ズゴックを再設計したらものらしい。アッガイはその高い静音性からステルス機として高い評価を得ていたため特務仕様機の素体に適していたが、本機がズゴックを素体としたのは、やはり水陸両用機として突出した陸戦性能に期待していたと思われる。
特務MS群は水陸両用機をベースとしてはいたものの水中戦を想定してたわけではなかったので、水中巡航能力は備えていたものの武装面は陸戦仕様となっていた。特にゾゴックは白兵戦の主力として期待されていたと考えられ、他に類をみないジオン脅威のメカニズム満載の機体となっている。
水陸両用MSは一般に全周型のモノアイが採用されているが、本機は上体(頭部?)前面に特徴的な大型のモノアイが設置されている。これは光量の少ない地下の閉鎖空間での索敵能力を最大化するために前方への光学観測性能を重視したためと思われる、多分。
主兵装は頭部(?)に装備された10基のブーメラン・カッター。射程距離は不明だが、火器類の使用を制限された条件下で静音性を保ちながら中距離戦闘を行うために考案されたと考えられる。形状を見る限り、ゴッグ系統のアイアン・ネイルとの類似性も感じる。
ただし、これを前方の目標に射出するためには頭頂部をそちらに向けねばならず、姿勢的にはモノアイが地面方向に向いてしまう。カッター自体に推進機構らしきものは見られず、誘導兵器の類でもなかったと考えられ、これでどの程度の命中精度があったのかは疑問。あるいは10基全てを一度に射出して、飽和攻撃のような運用を想定していたのかもしれない。その場合、ブーメランの名の通り射出した後に返ってくるのかわからないが、現実的には戦闘中に回収するのはかなり難しい気がするので、撃ちっぱなし前提だったのかもしれない。なおカッターを撃ち尽くした後の外観は目玉親父となる。
多くの水陸両用機と同様、腕部はフレキシブル・ペロウド・リムと呼ばれる伸縮可能な独特の構造になっており、高速で目標に拳を叩きつけることでガンダリウム合金装甲を貫通する威力があったとされる。腕部形状はズゴックと類似しており、アイアン・ネイルはないがシャア専用ズゴックがジムの腹部をぶち抜いたのと同じ原理である。兵器というよりは戦技の一種に思えるが、一応アーム・パンチという名称が与えられている。
ズゴックと違いネイルがない分マニュピレーターとしての運用が可能で、MS-07グフの標準兵装であるヒート・ソードを携行する例もみられた。またブーメラン・カッターも斬撃や投擲用の武器として使用されることもあったようで、結局その方が実効性のある運用だったのかもしれない。
このように他に類をみないジオン脅威のメカニズムを満載した機体だったが、どれも企画倒れの感は否めず、長くペーパープランしか存在しないと考えられてきたのも、その実用性の低さゆえか。一説には、ペズン計画で開発されたEMS-13ガッシャは本機の運用データをもとに設計されたと言われているが、こちらも試作機のみで制式採用されることはなかった。
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