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カンヌライオンズ2024 速報 - フィルムクラフト、エンターテインメント、エンターテインメントforゲーミング部門

2024年6月17日~21日にかけて受賞作品が発表されるカンヌライオンズ2024。昨年に引き続き、各部門のグランプリ受賞作品について、速報的にまとめていきます。

2日目は
・デザイン
・デジタルクラフト

・フィルムクラフト
・インダストリークラフト
・エンターテイメント
・エンターテイメント for ゲーミング

・エンターテイメント for ミュージック
・エンターテイメント for スポーツ

の部門の受賞作品が発表されました。

この記事では
・フィルムクラフト
・エンターテイメント
・エンターテイメント for ゲーミング

のグランプリを簡単にまとめます。


フィルムクラフト部門グランプリ
HORNBACH「THE SQUARE METER」

フィルムクラフト部門のグランプリに輝いたのはヨーロッパのDIY・ガーデン用品のチェーン店であるHORNBACHのムービー。

ヨーロッパでは家賃が上昇しており、狭い家に住むことを余儀なくされる人々が増えている。HORNBACHはムービーを通して「すべての1平方メートルは、世界最高の空間に値する。(Every square meter deserves to be the best in the world.)」、すなわち、どんなに狭い家でも自由なアイデアさえあれば自分にとって最高の空間にすることができると伝えた。

動画の舞台は、一部屋一部屋は狭いけれど、床が90度回転したり、趣味専用の部屋があったり、壁の中に朝食が用意されていたりとワクワク詰まった家。主人公が朝目覚めて、アイデアが詰まった様々な小部屋を次々と訪れながら充実した一日を過ごす様子が描かれている。

起きたとたん、ベッドが90度回転し壁に
狭くてじめじめした梯子ではキノコ栽培
天井がとても高い部屋で家族みんなで食事
狭いけれどアイデアが詰まった部屋で過ごす住人たち

動画内に登場する個性的な部屋の数々や、部屋が90度回転する動きはCGではなく実際にセットを作って撮影しており、サブカテゴリ―はProduction Design/Art Directionでの受賞となっている。

エンターテインメント部門グランプリ
WHATSAPP「WE ARE AYENDA」

エンターテインメント部門のグランプリに輝いたのはプライベートメッセージアプリのWhatsappが公開した短編ドキュメンタリームービー「WE ARE AYENDA」。

2021年にタリバンがアフガニスタンの政権を握ったことで、同国の女性たちはスポーツを禁止される可能性があった。「WE ARE AYENDA」では、アフガニスタンの女子ユースサッカー代表の選手たちがWhatsappを駆使してタリバンの目をかいくぐりながら国内外と連絡を取り合い、他国へと脱出するまでが描かれている。この動画はサッカー女子ワールドカップの時期に合わせてAmazon Prime Videoで配信された。

↓こちらの動画はケースムービー

↓こちらの動画は「WE ARE AYENDA」本編

Whatsappは暗号化によってメッセージや通話の内容が送り手と受け手以外には分からないようになっている。そのため、海外にいる協力者と選手たちの暗号をタリバンに盗み見られることなく、安全に脱出についてのやり取りをすることができた。

動画内では、カナダに住んでいるアフガニスタン女子サッカー代表チームの元キャプテンで人道活動家のファルクンダ・ムフタジ氏がアフガニスタン国内にいる選手とWhatsappでコミュニケーションを取りあい、安全に国外への脱出を成功させるまでが語られている。

Whatsappで送られたメッセージ
選手たちはポルトガルに難民として受け入れられサッカーをプレイしている

Whatsappのプライベート保護機能が、選手たちがタリバンの恐怖から逃れることにいかに貢献したかをドキュメンタリー映画というエンターテインメントのかたちで描き切ったグランプリ作品でした。

エンターテイメント for ゲーミング
XBOX「THE EVERYDAY TACTICIAN」

エンターテイメント for ゲーミング部門でグランプリに輝いたのは、自身がサッカークラブの監督となりチームを導くサッカーシミュレーションゲームFootball Manager 2024の施策。

着目したのは「小規模で潤沢な予算が無いクラブチームは、経験豊富な戦術スタッフを雇うことができない」という問題。Football Manager 2024は、イングランドの最上位であるプレミアリーグから数えて4つ下のリーグに属するBromley FCというチームとタイアップし、同ゲームで優秀な成績を残したゲーマーをBromley FCの戦術スタッフとして採用する求人プロジェクトを実施した。

↓プロジェクト告知のためのWEB動画広告

求人への応募の手順は3つ。
①ゲーム内で国内リーグのタイトルを獲得する
②1分の自己PR動画を応募フォームにアップする
③Bromley FCのスタッフとの面接を受ける

最終的に、ウェンブリーのツアーガイドであるネイサン・オウォラ氏(Nathan Owolabi)が戦術スタッフに採用され、クラブと5か月の契約を獲得した。ネイサン氏をスタッフとして迎え入れたシーズン、クラブは史上最高の成績を残し、132年の歴史で初めて2部リーグにまで昇格した。

ネイサン氏が実際に戦術スタッフを務め、チームを勝利へ導く姿を追った動画も公開されている。

カンヌライオンズのグランプリ作品に何度も登場しているサッカーゲームといえばFIFAシリーズ。カンヌライオンズ2023のブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門グランプリを獲得した「FIFA 23 X TED LASSO」(EA SPORTS & APPLE)、カンヌライオンズ2022のチタニウム部門グランプリの「Long Live the Prince」(Kiyan Price foundation)、カンヌライオンズ2021のダイレクト部門、ソーシャル&インフルエンサー部門の2冠を達成した「STEVENAGE CHALLENGE」(BURGER KING)などがあります。
特に「STEVENAGE CHALLENGE」(BURGER KING)は現実の小規模クラブチームを救うという点では今回の施策と似ています。

上記の3つのFIFA事例が「現実の人物やサッカーチームをゲームに落とし込む」というアプローチだったのに対し、今回の「THE EVERYDAY TACTICIAN」は「ゲームのプレイヤースキルを現実のサッカーチームの勝利のために活かす」という逆の発想で企画されている点が新しいと感じました。

その他の部門

今回ご紹介した部門と同日に発表された残りの
・デザイン
・デジタルクラフト

・インダストリークラフト
・エンターテイメント for ミュージック
・エンターテイメント for スポーツ

のグランプリについてはこちらをご覧ください。


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