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来世でも会おう

来世とか前世とかって本当に存在するのだろうか。

自分がこの世から去ってまた何かに生まれ変わっているという事だが今の私には到底知り得ない事だ。詳しく調べるときっと難しい話なんだと思う。


くだらない話の中で「来世なれるなら何がいい?」なんて会話を人生で一度くらいはした事があると思う。なんて答えたかはわからないが今では人とは答えたくない。

特に日本人にはなりたくないなと思う。私が死んだ後の日本なんてさらに悪化している経済状況を思うと、いつぞやの年貢や一揆やいっている時代に逆戻りしていそうで不安でならない。なんなら、数十年後の未来ですら真っ暗闇で恐ろしい。

なんてそんな暗い話をしたいわけではない。

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先日遊園地に夫と2人で行った。今時の大型テーマパークではなく昔ながらの古き良き遊園地。ジェットコースターがあって急流滑りがあって、メリーゴーランドなんかがあるいわゆる普通の遊園地。

その日は雨模様で入園して2時間ほどで雨が降り、外でのアトラクションは安全の為ストップし中止となってしまった。腕に巻いたフリーパス券がまだ活躍しきれていないというのになかなか雨は止む気配がない。

仕方なく雨でもやっているあるアトラクションに行くことにした。雨が降ってしまい、皆が屋内のアトラクションにこぞって入るので混んでいるかと思ったが私たちが向かったアトラクションには前に2人女性がいるだけだった。

前に入った人たちが終わるまでパラパラの雨に打たれながら待った。順番が回ってきたので中に入る。そこには小さな部屋が8つあった。右に4つ、左に4つ。私は左側の一番奥、8番の部屋に入るよう言われた。

扉を開けると思った以上に小さい部屋。いや、部屋なんてものじゃない。公衆電話よりも少し小さめの真っ暗の空間だった。そこにある椅子に扉側に向いて腰掛ける。目の前の扉には穴が二つ開いていた。

扉が閉められる。もちろん鍵などはかけられてはいない。けれど、暗闇の空間に完全に1人になった。こんなに狭く暗い空間に押し込められるとなぜか悪いことをした気分になってくる。

係の人からヘッドホンをして前の穴から手を出してくださいと言われ。言われるがままヘッドホンをし、手を出して置いた。

すると目の前にあるカーナビほどのサイズの画面から映像が流れ出した。なかなか古い映像のようだ。そこには少し怖い系の映像がいくつか流れる。画面と画面の切り替わりに「ピー」という音がして更にレトロ感を醸し出している。古き良き遊園地ええなぁと思いふふっと1人笑った。

数分の映像が終了すると、係の人から呼ばれた番号の人は出てきて下さいと言われた。

私たちの前にいた女性2人が呼ばれ、次に8番の方と呼ばれたので扉を開けて外に出た。すると、係の人から1枚の紙を渡された。建物から出て夫と2人雨の中、手渡された紙を見た。

そこには映像を見た時のビビリ度が星マークによって記されていた。星マークが多いほどその映像にビビっていたことがわかる。ふふと笑って余裕だと思っていたが私は内心めちゃくちゃ怖かったようで紙には満天の星が輝いていた。

そして更にその下に書かれていたのが来世の自分。自分が何で復活するかが記されていた。
次に来たときは変わっているかもしれないともちゃんと書いてある。何の根拠もない事だとわかってはいるが、こういうのは楽しいものである。

私の来世は...ワシ!
まさかの鳥だった。鳥は苦手で動物園の鳥コーナーに行ったら目を伏せて頭を抱える。鳥が飛び上がると「ぎゃー‼︎」と叫んでしまう。昔から鳩やカラスに狙われがちで知らぬ間にトラウマになっているのかもしれない。そんな私の来世が鳥。そして、その中でも強者のワシ。

「広大なユーラシア大陸で自由に飛び回っている」

鳥は苦手だがこの一文を読んで俄然来世が楽しみになった。ワシとなって自由に飛び回る。動物園にいる鳥じゃなくてユーラシア大陸を飛び回るワシ。「自由」というこの2文字が私をワクワクさせる。壮大で雄大で想像するだけで今にも飛んでしまいそうな嬉しい気分になった。

横にいる夫はどうだろう?と紙をのぞく。

世界的に活躍する日本人水泳選手に復活すると書かれていた。夫は再び日本人として復活するらしい。私は密かに日本の未来の行く末が年貢や一揆のない明るいものであることを願った。


来世でもまた会えるだろうか。
日本人水泳選手とワシ...。

雨でなかったら入らなかったかもしれないアトラクションで、楽しい妄想ができたのが案外楽しかった。

私たちはしばらく雨が止むのを待ったけれど、空の景色に変化はなく仕方なく遊園地を後にした。来世でワシになったらあらゆる水泳の大会を空から見物しようと心に誓いながら。

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