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映画『REDLINE』公開時 石井克人&小池健インタビュー

『REDLINE』公開から10周年なので10年前に書き、今はなきタブロイド紙に掲載された記事の元原を引っ張り出して再掲。

 宇宙最速の座をかけて、レーサーたちがが荒野を猛スピードで突っ走る。10月9日公開の『REDLINE』は、CMディレクターや映画監督として活躍する石井克人の感性と、アニメ大国の日本でも他に類を見ない小池健の描く絵が、がっちりとタッグを組んで生まれた究極のアニメーション。ハイセンスなビジュアルと熱血のストーリー、SMAPの木村拓哉ら人気者たちが勢揃いしたキャスティングで、映画の世界に新たな道を切り開く。

 トム・マクナブの小説『遥かなるセントラルパーク』は、大恐慌に見まわれたアメリカで、2000人もの男女が賞金をかけてロサンゼルスからニューヨークへとマラソンをする物語。この壮大さに、「アメリカで見た、砂漠を車で自由に突っ走る人たちの姿が重なって生まれたのが『REDLINE』と、原作・脚本を手がけた石井克人は振り返る。

 大馬力のエンジンを積んだレーシングカーが、爆音をとどろかせて突っ走る。巨大なリーゼントヘアを突きだしたJPをはじめ、レーサーはみなくせ者ばかり。妨害も攻撃もお構いなしのレースの中で、JPだけはひたすらに速さを求め、ソノシーという美少女レーサーの愛を得ようと、前だけ向いてアクセルを踏む。

 「子供でも分かる冒険ストーリー。美少女系のアニメとは違う匂いをかぎつけて、アニメから離れていた人や、小学生が見に来てくれたら」と期待する石井。加えて「絵や動きにショックを感じて、アニメーターをめざす人が出てきてくれれば」とも話す。

 CMディレクターとして活動するかたわら、映画『鮫肌男と桃尻娘』(1999年)などを監督し、独特の映像センスを見せていた石井。もともとは「アニメスタジオにセル画をもらいに行っていた」ほどのアニメ好きで、中でも金田伊功(1952-2009)というアニメーターの大ファンだった。映画『PARTY7』(2000年)の冒頭にアニメを付けようと考えた時、「ニュースタイルの金田さんといった、誰も見たことがないアニメを見せられたら、観客も興味を持ってくれる」と考え、業界を探して小池健監督を探り当てた。

 その小池監督は、「『銀河鉄道999』や『幻魔大戦』での金田さんの仕事に憧れ、アニメーターを目指した」ほどの金田チルドレン。入社したマッドハウスでは、「妖獣都市」などの作品が海外でも有名な川尻義昭監督の下で腕を磨き、『PARTY7』のアニメパートで演出家デビューを果たした。

 「自分を思い切り出して良い仕事だった」と小池。そこで見せた絵柄とアクションを気に入った石井と組んで、いくつかの作品をこなしたあと、7年をかけて『REDLINE』を作り上げた。「アニメにとってのシズル感(興味をそそるポイント)を考えたとき、スピード感があった」という小池監督が描き出した映像は、見ているだけでF1マシンやラリーカーに乗せられている気になる。劇場の大スクリーンで味わいたい迫力だ。

 格好いい映像に加えて格好良い声が映画の魅力を増す。「イメージするのはタダだから」と、IP役に木村拓哉を思い浮かべ、ダメもとで依頼したところ快諾を得た。「もうびっくり」。ソノシー役に蒼井優、JPの相棒に浅野忠信と主役級がそろう。聞き所だ。(タニグチリウイチ)

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