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【競馬】初心者のための2021年下半期の競馬まとめ 芝編

みなさん、競馬見てました?
今年の中央競馬の全日程が終了しました。


ウマ娘から競馬人気が沸騰し、その間に生まれた数多のドラマ。上半期の競馬まとめでも言いましたが、今年から競馬を見られたって相当な幸運だと思います。
(去年から見てた人には負けるけど)

(↑こちら上半期まとめです)

(↑こちら上半期ダート編です)



てことで、今年の中央競馬下半期の名レースをまとめたので、あんまり深く追えてなかった人、知らないレースを知りたい人、ドラマを知りたい人はぜひご覧下さい。


今年の下半期は、一言で表すなら
「復活」と「躍進」
ドラマ尽くめの一年でした。


札幌記念 〜純白の女王、世代の頂点へ〜

前回の上半期まとめでアイビスサマーダッシュまで紹介しちゃったので、今回はここから。

夏競馬のクライマックスを飾るGII、札幌記念。

毎年GI並のメンツが集うこのレース。今年も豪華メンバーでした。
GI2勝のラヴズオンリーユーソダシ
グランプリホースのブラストワンピース
マイルCS勝ち馬ペルシアンナイト

中でも目を惹いたのは純白の女王ソダシ。
2番人気に支持されていましたが、かなりの不安を孕んでの一戦でした。


ソダシの父クロフネはダート2100mで世界レコードを叩き出したやべーやつなのですが、子供たちはなぜか芝の方が適正高め。で、代表産駒はカレンチャンやスリープレスナイトなど、芝ではマイルまでが限界の馬ばかり。ソダシもオークスで沈んでしまいました。


しかし、人馬一体の騎乗が彼女に栄光をもたらします。

かなり強い風が吹いていた札幌。
スタートを上手く出て2番手に付けると、終盤で外から差を詰めてきたブラストワンピースに捉えかけられたところで加速。

ブラストは失速し、ペルシアンナイトが迫るも届かない。道中かなりの不利を受けていたラヴズオンリーユーがなんとか2着に食いこむも、圧巻のゴールイン。
クロフネ産駒初の芝2000m重賞勝利の瞬間でした。


桜色に輝く春の女王が、夏の札幌でも頂点に。
秋へ期待が膨らみました。




北九州記念 〜九州の夢〜

そして奇跡はそこから数分後、小倉競馬場でも。
皆さんは競走馬がどこで生まれているか、ご存知でしょうか?

ウマ娘から入って調べた方は、「みんな北海道じゃねえか!!」となったはず。

その認識は正しいです。ほとんどの馬産は北海道、あるいは青森などの北日本で行われており、GI馬は100%北海道産です。
地方だと青森県産の馬がGII勝ってたりします。(サルサディオーネを応援せよ)


でも、九州産の馬がデカいレースで走ってるとこって、なかなか見たことないんですよね。


その昔(戦前)九州産馬限定で行われていた重賞レースも時が流れオープン戦になり、長い間日の目を見なかった九州産馬。

スポットライトが当たったのは、去年の阪神ジュベナイルフィリーズでのこと。

白馬のソダシと、九州馬のヨカヨカ。
この2頭が大きく注目を浴びたのです。
白毛馬と九州産馬がGIに出るなんてめったにないことですからね。

福永騎手を乗せ、結果は5着と悪くない感じ。その後は鹿児島県産の幸英明ジョッキーに鞍上を替え、何回か勝利を掴みかけていました。


そして、ついにその日が来ました。

九州産馬初のJRA重賞制覇
九州の風を受けて育った人馬が、九州の地でNo.1に輝いたのです。

勝利後、幸さんは涙。馬主さんも牧場関係者も、皆大喜びでレースを終えました。


しかし、喜びは束の間。ヨカヨカは突然暴れてしまい、骨を折り、競争能力を喪失してしまったのです。
幸いにも無事に繁殖牝馬になり、子孫を繋ぐ準備はできましたが、無事ならスプリンターズステークスや、年末の阪神カップでも勝利が期待できた馬。悲しい結末ではありました。


ですが、この悲しみが数ヶ月後の勝利を生んだのです。
(ゴール後に落馬した藤懸騎手は無事でした)




伝説の新馬戦

一方そのころ。
キタサンブラックの子が伝説を残していました。
ちなみにこれの3着が阪神JF勝ち馬です。
後のGI馬を7馬身ちぎるっていうね。今後に期待です。


札幌2歳ステークス 〜記憶に残る末脚〜

こっちも伝説級でした。
札幌1800mで好走する馬は、翌年GIで好走しがち。ユーバーレーベンとかソダシとか。

1800でこんだけ余裕なので、来年は某2400mGIでも走りそうだな〜と思ってたんですけど、年末にまさかの選択をしてきました。




🇫🇷フォワ賞 〜絆を継ぐ者〜

9月になり秋、もとい凱旋門賞の季節になりました。
おなじみフォワ賞。エルコンドルパサーやオルフェーヴルが勝利し、ナカヤマフェスタが2着になった凱旋門賞ステップレースのあのGIIフォワ賞です。


ここにいたのはディープボンド
凱旋門賞4着、3歳馬限定凱旋門賞トライアルニエル賞勝ち馬キズナを父に持ち、母の父にキングヘイロー、血縁関係には春秋スプリント制覇のローレルゲレイロがいる超良血馬ながら、寸前でGIタイトルに届かず悔しい思いを何度もしてきたディープボンドくんです。


鞍上はエイシンフラッシュの天皇賞、ユーバーレーベンのオークスなどでおなじみミルコ・デムーロの弟クリスチャン・デムーロ。
彼も日本でGIをいくつも勝っており、日本の競馬、日本語を分かった上で騎乗していました。

逃げ切り勝ち。これは日本古来の戦法。
そして、欧州では近代まで悪手どころか勝てないとされていた戦法。(欧州の芝は脚を取られるから相当スタミナ無いと途中で失速して負ける)

その手をここで打てたのは、クリスチャンが乗ってたからなのです。


でも同時に、ここで勝てたことが凱旋門賞への枷となりました。




オールカマー 〜世代の女王へ〜

国内では珍実況が誕生。
内ラチの申し子ウインマリリンがロス無くレースを運び、外から強襲したグローリーヴェイズ相手に粘って1着。2着にウインキートス。
ウインウインだ!」といういかにも青嶋アナらしい実況が飛び出す一戦となりました。

ヴェイズも力はあったんですが、彼の本領はここではなかったようです。




スプリンターズステークス 〜最強の3歳馬〜

いよいよ始まった秋GI。
ヨカヨカが回避を発表し、葵ステークス、キーンランドカップで連勝を重ねていたレイハリアも回避。
3歳馬が軒並み回避で思ってたよりこじんまりした出馬表。

とはいえ高松宮記念勝ち馬ダノンスマッシュに、セントウルステークス1着2着のレシステンシアピクシーナイト、狂犬メイケイエールに出遅れ王ジャンダルムが集い、そこそこ豪華な感じに。

今回も高松宮記念同様、ダノンとレシスの叩き合いになるのかな〜と思ってたら…

3歳馬の猛攻。
ダノンスマッシュは伸びがない。レシステンシアも届かない。あっと驚く覚醒っぷり。
前走セントウルステークスで中京競馬場の女王レシステンシア相手に僅差に迫っていたとはいえ、この展開は予想していませんでした。
鞍上の福永先生曰く、「まだ馬体も完成しきってなくてこれだから、想像を超えた馬になる可能性も出てきた」とのこと。その花が開くことを期待していたのですが…




🇫🇷凱旋門賞 〜大波乱、夢はまだ遠く〜

日本馬の悲願、第100回凱旋門賞。
クロノジェネシスディープボンド、そしてスノーフォール。上位人気に顔を連ねた日本に縁のある馬たちは、全て有力馬。

セントマークスバシリカ、ミシュリフが回避を発表し、少し手薄になったメンバー。勝機は0ではありませんでした。

雨の影響で不良馬場。前人気では最上位だったアダイヤーには厳しい馬場。
反してクロノジェネシスのオッズは上昇。運はこちらに向いているかと思われました。しかし。


エルコンドルパサー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルで勝てなかった凱旋門賞。そんなに甘くはなかったのです。

クロノジェネシスで一瞬夢を見て、順当に1番人気タルナワと2番ハリケーンレーンが上がってきたかと思いきや、まさかの最低人気トルカータータッソ。

とんでもねえ大波乱。単勝万馬券
大荒れの凱旋門賞でした。



そして、クロノジェネシスはここで大きなダメージを負いました。ほぼ初の極悪馬場で本気でダッシュした負荷は想像以上に大きかったのでしょう。
ディープボンドはフォワ賞の疲れで最初から動けず、乗っていたバルザローナ騎手が馬の体調を優先。無理に動かなさなかったことで、ダメージを負うことはありませんでした。
これが年末の有馬記念に大きく影響してきます。




京都大賞典 〜蘇るダービー馬〜

今年あまり勝てなかった馬たちの祭典みたいな出走メンバーになった京都大賞典。
とはいえ菊花賞2着アリストテレス、菊花賞馬キセキ、大阪杯2着モズベッロ、GII馬券内7回の古豪ステイフーリッシュなど、キャラが濃い人気馬達が顔を連ねました。
筆者はここならキセキも勝てるんじゃないかと胸を躍らせながらもチキって複勝を買いました。
まさかキセキが勝つ以上の奇跡が起こるとは…

キセキとアリストテレスが競り合い、ここまで完璧な騎乗で来たキセキが少し後退。苦しいか…と思った瞬間外から突然飛び込んできたのは、5年前のダービー馬でした。


5年と28日振りの勝利
凱旋門賞から数日経って、5年前の凱旋門賞で1番人気を背負い負けた悔しさを、ニエル賞以来の勝利を、ようやく、ようやく成し遂げたのです。
マカヒキが得意としていた2400m、そして阪神競馬場というコース。そこに阪神大得意の藤岡康太騎手が手綱を取ったことでようやく起きた奇跡。
5年間も勝ち星が無いまま走り続けたマカヒキと、走り続けてコンスタントに上位を取らせ続けた陣営の凄さに感動を覚えました。




毎日王冠 〜本気の叩き合い〜

一方そのころ、5年前の日本ダービーでマカヒキと共にダービージョッキーに輝いた川田将雅は、阪神ではなく東京にいました。

幻のダービー馬と呼ばれ、謎の長期休養から突然復帰しGI制覇を成し遂げたすごい馬、ダノンキングリー
彼の背に川田は跨っていました。

キングリーのライバルと目されていたのはシュネルマイスター。NHKマイルカップで勝ちパターンに入ったソングラインをえげつない位置から差し切り、直後の安田記念でも3歳馬ながら3着に入った、期待のニューホープです。鞍上はルメール。


京都大賞典に勝るとも劣らない感動が、ここで再び走ります。

2頭とも全然良くない出だし。波乱の予感がしましたが、2人とも冷静にレースを進めます。

後ろで脚を溜めることに専念させたルメールのシュネルマイスターと、途中脚を使って位置を上げた川田将雅のダノンキングリー。性格が出てますね。どっちも正しい動きです。


キングリーは2000もこなせる馬なので、多少強引に走らせてもスタミナはある。
対してシュネルはNHKマイルの時にすごい末脚を使ってくれたのをルメールは覚えているから、後ろで溜めた方がいいと判断できた。


2人とも最高の騎乗で出した結果が、上位2頭のアタマ差決着。良いレースだったし、GI馬の矜恃を見ました。




秋華賞 〜最後は譲れない〜

三冠目の季節。
女王の座に翳りが見えた馬がいました。


ユーバーレーベン
。オークスの後に軽い炎症が出た影響もありどうも調整が上手くいっていないらしく、パドックでも見栄えは良くありませんでした。

そして、ソダシ
2000mの壁を克服したとはいえ、斤量は前走から3kg増。そして徐々に浮き出てきた気性難の母ブチコの血。今思えばなんで1番人気だったのかすら分からないくらい不安だらけでした。

そんな彼女たちに立ち向かうのはクラシック上位組のファインルージュアカイトリノムスメステラリア。そして、ローズS勝ち馬アンドヴァラナウト

誰もが勝てる舞台でした。そういう時に勝ちに来るのが…

牝馬の国枝厩舎。
父ディープインパクト、母アパパネ。
クラシック三冠馬の子として、ここだけは譲れなかったアカイトリノムスメ。

大本命ソダシが負けてもアカイトリで勝っちゃう金子オーナーすごい。


三強が見事に三強で冠を分け合い、ファインルージュは三冠全部2着で無事四強。これからもこの4頭はGIで善戦してくれるはず。




菊花賞 〜23年越しの衝撃〜

今年はメンツが薄すぎる。過去最低の菊花賞。そう言われていました。

エフフォーリアが天皇賞、シャフリヤールがジャパンカップを目指し、三冠目の価値が形骸化したような、そんな気になっていたレース前。

ですが、今なら言えます。菊花賞こそ今年のベストレースの一つだったんじゃないかと。

横山武史。彼はセイウンスカイが菊花賞を逃げ切った年に生を受けました。
そして、今。セイウンスカイと同じことをやってのけたのです。

セイウンスカイの鞍上は父、横山典弘。
受け継いだ血が、思いが、彼をクラシック二冠へと導いたのでした。

逃げのラップタイムから何から何までセイウンスカイとほぼ同じ。しかも今回は阪神競馬場開催だからよりタフなレース展開になるはず。
それなのに逃げ切ったタイトルホルダーがすごい馬だってことは後々さらによくわかるようになってきます。




天皇賞(秋) 〜三強対決〜

タイトルホルダー菊花賞でノリにノった横山武史は、エフフォーリアで無敗の三冠馬とマイル古馬GI完全制覇の最強牝馬を蹴散らしてしまうのでした。

いやちょっと待てよと。
さすがにそこまで強いのは聞いてないぞと。

もちろんエフフォーリアが強いのは強いんですが、並の若手騎手なら出来ない騎乗をやってます。

コーナー回ってすんなり外に出して、さらにちょっとだけ右に進路を取ってコントレイルの邪魔をした後、爆発的な加速で1着をもぎとっているのです。

パトロールビデオで見ても「馬がヨレてんのかな?」って思うシーンだったんですけど、有馬記念見て確信に変わりました。多分彼は意図してやってます。馬体を併せられるとコントレイルの根性凄いんで、あえてそれを避けてるんだと思います。最強です。(※個人の見解です)


先行の位置取っときながら差し馬並の加速するエフフォもエフフォで頭おかしいんですが、先輩騎手相手に、それも歴史作って今後も決まってる無敗の三冠馬さん相手にそんな乗り方できます???
横山武史はすごい。今年はこれに尽きます。



このレースで沈んだカレンブーケドールは故障が判明し、引退。GIどころかGIIも勝てないような強さでは無かったために、かなり悔やまれる引退となりました。



🇺🇸BCフィリー&メアターフ 〜愛の軌跡〜

今年の競馬を振り返るってなった時に真っ先に出てくるのはこのレースでしょう。


過去の岩田騎手や蛯名騎手の「トントン追い」と違い、自分の身体の重心移動を上手く馬に伝えることで最後の一伸びに繋げる、川田将雅オンリーの騎乗方法。その集大成が、このレースに詰まってます。


まず、川田騎手らしくスタートからすぐ好位置を取りに行き、3コーナーから徐々に…加速したかったんでしょうが、徹底マークを喰らいます。現地でも3番人気くらいの実力馬でしたからね、ラヴズは。

それでも、冷静に待って開いた隙間を逃さず、すかさず例の追い方で異次元の伸びを見せるラヴズオンリーユー。
最後は追いながら勝利を噛み締めていたらしいですね。


日本人初のBC制覇。届かないんじゃなくて届こうとしてこなかった舞台。
矢作先生と川田騎手、そして仲良しラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの2頭で遠征できたこと、アメリカ現地にいたポニーちゃんが2頭と仲良くなってストレスなく遠征できたこと。
全部が重なっての最高の勝利でした。




福島記念 〜爆速の逃げ切り〜

今年は矢作厩舎の年。
ここでも矢作厩舎の馬が魅せました。

令和のツインターボ
既に彼はそう呼ばれつつあります。
理由はご覧の通りです。

逃げ馬の聖地福島とはいえ、1000m57秒台で通過して勝てちゃうパンサラッサ。
あまりにもスターホースすぎました。




エリザベス女王杯 〜想いを繋ぐ赤い糸〜

秋華賞が終わり、迎えたエリ女。地獄でした。

どういうことかと言いますと、上位人気が全頭ヤバい状況にあったんです。
レイパパレは2200mは距離が長すぎるし、ウインマリリンは脚の腫れから来る発熱があり調整不足、アカイトリノムスメも国枝先生の調整力で秋華賞にピークを合わせすぎたためエリ女は微妙な感じに。


筆者はこの日現地にいたのですが、パドックを見て思いました。「これは荒れるぞ」と。
レイパパレ、アカイトリが2人に曳かれてパドック周回。明らかに調子が悪い。マリリンは熱発明け。他馬もあまり調子が良さそうに思えない。


そんな中、毛艶、歩き方が抜群に良かったのがステラリア。そしてもう一頭あげるならアカイイト、2頭には劣るけど次点でランブリングアレーって感じでした。これはマジです。
で、結果はご覧の通り。

さすがに驚きました。

これは現地で見てたから分かるんですが、レイパパレの位置取りは完璧でした。道中掛かっても折り合いを付かせて、内ラチのスレッスレ、ギリギリ馬場が綺麗なところを上手く立ち回ってました。さすがルメール騎手。ただ…

その内ラチゾーン、午前の内に池添騎手が使いまくって微妙に荒れてたんですよね…


それが無かったらもうちょい上に行けてたのかな?なんて思ったりもしました。普通に坂で失速もしてましたけどね。


ところで、アカイイトの幸騎手の勝負服を見てください。これ実は、ヨカヨカと同じ馬主さんの勝負服なんです。

アカイイトは普通に北海道産なのですが、ヨカヨカで目指せなかったGIの舞台を同じ馬主さんと目指せたことは何より大きかったと思います。

幸騎手はスティルインラブで牝馬三冠を勝利し、エリ女を狙ったもののアドマイヤグルーヴに連覇され届かなかった舞台。十数年越しに悲願を果たしたのです。
生で見られてほんとよかった。




武田尾特別

運良く2週連続で競馬場に足を運ぶ事ができたのですが、その2週間の中でも強く印象に残ってるGI以外のレースはカレンマックナイトの新馬戦とプログノーシスの武田尾特別です。
マックナイトはその後惨敗しちゃったのでこっちだけ紹介。

プログノーシスはシャフリヤールがレコード勝ちした毎日杯で3着になってた馬。弱いはず無いんです。
中内田厩舎特有のローテなのか、馬の体質が弱いのか、ゆるゆるローテで3歳秋、ようやく2勝クラス。

出遅れ最後方からすんごい脚で追い上げ1着。
出た馬が不憫に思えるほどの強さ。

来年は色々すっ飛ばしてGIII直行でいいんじゃないですかね?




マイルチャンピオンシップ 〜女帝の意地〜

頭をよぎったのは、安田記念のことでした。
ヴィクトリアマイルで圧勝した後、馬が変わったように伸びなかったあの日のグランアレグリア

中距離路線への挑戦。大阪杯、天皇賞(秋)と並以上の好成績を残した彼女。

天皇賞から中3週。本当にやれるのか。
そんな不安と共にファンファーレが鳴りました。

道中も包まれたままじっとしているグランアレグリア。次第に強くなる歓声。伸びるグレナディアガーズ。しかし…

なんと言うか、“格が違う”ってこういう事かと思わされる走りでした。


すんなり外に出して後ろの有力馬をブロックすると、そこからは倍速かよと思うほどの速度で頂点へ。
終わって欲しくない切なさと、1着で終われた安堵とで、誰もが感動を覚えたでしょう。


馬場の荒れた内から挑まざるを得なかったシュネルマイスターやインディチャンプ、そして最後に川田騎手の好騎乗で差し込んできたダノンザキッド。誰もが勝利を狙っていました。
でも届かない。上がり32.7。女帝の意地。


正直、パドックではあまり良く見えませんでした。
毛艶も、歩き方も。既に全盛期は過ぎている感じがしました。
それでもここまで爆発的な脚を使えたのは、天皇賞で先行策を取ったことが大きいんじゃないでしょうか。

末脚に賭けず位置取りと持続力で挑んだことで、ラスト一戦をほぼ万全の体制で挑む体力を残すことができた。多分ルメール騎手と藤澤先生はそこまで考えてたんだと思います。


最高のラストランでした。
そして、ここでも。




ジャパンカップ 〜ラストフライト〜

コントレイル
最弱の三冠馬だのなんだの言われ続け、そんな批判の嵐と向き合い続けた福永祐一。
種牡馬入りが決まっている馬を傷付けずに勝たせなければいけない重責。

その結果が天皇賞(秋)。エフフォーリアが強すぎるというのは何回も言っておきたいですが。

しかし、引退レースだけは負けられない。
この日のコントレイルは、今までの比じゃないほどに完璧な馬体でした。
画面越しで見てても伝わるくらいの迫力。生なら尚更だと思います。
この日のコントレイルでエフフォーリアに挑めてたら…と思いもしましたけど、最後に照準を合わせるのは当然。

そして、コントレイルはようやくコントレイルになれました。

すっと外に出してシャフリヤールと馬体を併せ、前にいたオーソリティの方に馬を寄せてシャフリヤールの進路を潰し、あとは伸びるだけ。
福永騎手にしては無難すぎる騎乗なんです。


それもこれも、命を繋ぐという重さの枷。


コントレイルの父、ディープインパクトは2019年にこの世を去りました。
ディープインパクトは様々な名馬を生みましたが、牡馬は正直パッとしませんでした。サトノダイヤモンドもキズナも強いは強いんだけど、オルフェーヴルやキタサンブラックのような圧倒的なポテンシャルがあった訳でもない。
その中で出てきたコントレイルは、凄まじい安定感で一気に世代のトップに立ちました。



明らかに馬体はマイル〜中距離寄り。それでも菊花賞の距離をこなす根性。
馬産をやっている関係者の方なら、「すぐにでもこの馬の子が欲しい」と思ったはず。
我々の知らない秘密裏で、4歳で引退させること、社台スタリオンで種牡馬入りすること、シンジケートを組むことが決まっていました。
これから未来に生まれる数十億円の重みを背負い、福永先生は騎乗していたわけです。


もしもディープインパクトが亡くなっていなければ、ドバイターフや香港、矢作厩舎だからそれこそBCに挑戦することだってあったはずです。
しかし、彼は時代に囚われてしまった。
そして大阪杯では馬場に恵まれず、宝塚記念も馬場の悪化と敗北を避け、迎えた天皇賞で次代の史上最強馬とぶち当たってしまった。

史上最も不運な三冠馬だと思うんですよ。


せめてもの救いは、ジャパンカップで無難に走って無難に強い競馬で勝てたこと、そして絶対にコントレイルが種牡馬として成功する(させられる)ことです。


ディープインパクトが社台グループの手によって数百の優秀な繁殖牝馬と交配され、ジェンティルドンナやサトノダイヤモンド、グランアレグリアやラヴズオンリーユーといった名馬を生み出したように、コントレイルも無理やりにでも名馬と交配され名馬を産まされます。コントレイルの血は今後百年日本競馬から消えないのです。


つまり我々は歴史の転換点を垣間見ていたのです。


なんか話が変な方向に行ったんで戻しましょう。
とにかくコントレイルおめでとうって話でした。




チャレンジカップ 〜クラシックの先へ〜

クラシックが終わって2ヶ月。
3歳馬の戦いの終幕は、このレースにありました。

クラシックに出られなかった3歳馬と伸び悩んでる古馬との戦場ってイメージが付きつつあるチャレンジカップ。レイパパレが快勝して大阪杯を無敗で勝ち切ったように、勝ち馬は翌年の好走も期待できるレース。


1番人気は菊花賞で馬券内は確実と思われていたが筋肉痛で回避したオルフェーヴル産駒ソーヴァリアント
2番人気は秋華賞で馬券内は確実と思われていたが賞金足りなくて出られなかったジェンティルドンナの娘ジェラルディーナ
完全にクラシックの続きしに来てます。


厳しかったのがジェラルディーナが最内枠になったところ。気性的に揉まれ弱いところがあるジェラルにこれはマイナス。
一方のヴァリアントは大外枠。狙ったとすら思うほど極端な枠順でしたが…

全く問題にしませんでした。
先行でレースを進めながら、差し追い込みで詰め寄ってきた馬たちとほぼ同じスピードの末脚で3馬身半引き離して快勝。

オルフェーヴル産駒なんで晩成なことは間違いないですし、来年にはGIで何回かお目にかかると思います。




🇭🇰香港国際競走

この日も名馬たちのラストレースの日でした。
まずは芝2400mGI、香港ヴァーズ
グローリーヴェイズ。メジロ牧場亡き今、貴重なメジロの血を繋ぐGI馬。
この舞台で、彼は期待に応えてくれました。

香港最強ジョッキーのモレイラの手で導かれた勝利。
坂の無い直線。父ディープインパクトから受け継いだ末脚。絶好の舞台設定。2年振りのヴァーズ制覇で引退を飾りました…

と思ったらまだ現役続行の模様。来年には7歳だぞ?
ディープインパクトの血が飽和しすぎて種牡馬になれないんですかね…マカヒキワグネリアンルート…?




なにはともあれ、ここまではよかった。ここまでは。


香港スプリントであんなことがあったのでその後は気が気じゃなかったんです。
何があったかはご自身で調べてください。
倍速みたいにハイスピードで回転する馬の脚。高速馬場。キツいコーナー。今回じゃなくても、いつかこうなる時が来たんだろうなって思ってしまいました。
ただただ、苦しいレースでした。
ナブーアタック号とアメイジングスター号のご冥福をお祈りします。

馬に関しては取り返しのつかないことになってしまいましたが、騎手は全員無事で良かったです。本当に。




そして香港マイル
絶対王者って、いるんですよね。

10000回やり直しても絶対勝てないような圧倒的な能力差。恐ろしい。
これが来年安田記念に遠征予定なんですよ?
日本馬も強いとはいえ勝てるのか本当に…


そんな衝撃の裏でしれっとサリオスくんは3着。今後に期待が持てる走りでした。
インディチャンプは福永騎手負傷のため乗り替わりで5着。マイルチャンピオンシップから間隔詰めてのレースで、乗り替わりでも5着だったあたりやっぱり能力は高かったんだなと。今後は種牡馬として活躍してほしいですね。

ダノンキングリーは調子が良くなかったのか8着。そして引退。あまりにも唐突な引退で衝撃を受けたのは自分だけじゃないはず。



香港カップは感動をくれました。
19世代の名牝として戦い続けたラヴズオンリーユー。
彼女のラストレースは、まるでBCフィリーの再現のようでした。

ロシアンエンペラーが抜け出し、塞がれたと思った進路から飛び込むラヴズオンリーユー。しかしヒシイグアスが尋常ではない速度で上がってくる。


ヒシイグアスか、ラヴズオンリーユーか。

最後の最後で川田将雅の秘技が炸裂してもうひと伸び。最高の終幕。


海外GI年間3勝、日本、香港、アメリカで3ヶ国GI制覇、どちらも日本馬史上初。
最上の名牝として輝いたラヴズオンリーユー。
陣営の、ファンの、一途な思いが実った瞬間でした。




阪神JF 〜3番手とは言わせない〜

香港スプリントでてんやわんやになる直前、ここでも波乱が。
前走から間隔詰めてレースしてた1番人気ナミュールが世紀の出遅れ。2番人気ステルナティーアは馬体重-10kgとレース中に不利受けて失速。
3-8-4番人気でレースが決着しました。

アカイトリノムスメのようにガッチガチで仕上げて、なおかつ馬体重±0で臨んできた国枝厩舎のサークルオブライフ。しかも馬場は内荒れ。外から差すサークルにとって最高の環境。

勝利を上げたのはミルコデムーロ騎手。
いつもの謎(?)ジャンプで競馬場は大盛り上がり。
来年もこの馬で勝ってジャンプしてほしいですね。




朝日杯FS 〜22度目の悲願〜

そして奇跡はもうひとつ。
武豊、復活のGI制覇。

朝日杯22度目の正直。
何度も何度も2着になった舞台で、ようやくの制覇。
これで武豊は自分がデビューした頃から存在したGIレースは全制覇。あとは2017年から昇格になったホープフルステークスのみですが、GII時代、GIII時代に勝ちまくってるんでもう完全制覇みたいな感じでいいでしょう。ええ。


勝ち馬は馬名の由来がイマイチピンと来ないドウデュース。1番人気セリフォスを競り落としての勝利でした。

ジオグリフは4着。マイルが合ってなさすぎました。
コマンドラインをこっちに出してジオグリフをホープフルに出してたら結果が変わってたかもしれません。



勝ち馬ドウデュースは皐月賞を目指すようで、そこでの活躍も期待できますね。イクイノックスとの叩き合い、楽しみに取っておきましょう。




中山大障害 〜すべてを越える王者〜

まさか年の瀬にこんな名レースを見られるとは思っていませんでした。
オジュウチョウサン
障害の絶対王者として君臨していたものの、ようやく世代交代が来たって話を上半期まとめでしたかと思います。
あの話、撤回させてください。
オジュウの時代、まだ終わってませんでした。

それはまるでイチローのように、身体面での衰えを技術で補う走り。
今まで障害スレッスレを強引に走っていたオジュウ。(それで勝ちまくるんだからすごい)
グランドジャンプで軽く骨折し、以降フォーム改善に注力した陣営。


その結果がこのレース。見違えるように綺麗なフォームでの飛越。
以前の不滅の日本レコードを叩き出していた頃のオジュウではない。けれど、王道のレースでしっかり勝ち切ることもできるという、王者が王者である所以もわかった中山大障害でした。


こんな名馬あと半世紀は出てこないと思うんで、楽しんでおくなら今のうちですよ。



有馬記念 〜世代交代の一戦〜

コントレイル、グランアレグリア、ラヴズオンリーユーときて、クロノジェネシスの引退レース。
もう絶対勝ったと思ってました。
絶対勝ったと思ってたのに。

強すぎんだよエフフォーリア。
強すぎんだよ横山武史。


凱旋門賞で負った見えない疲れ。緩やかに衰えが来ていたクロノジェネシス。
4コーナーでキセキにブロックされ、外に出したくても出せない状態。
元気があればここで強引に進路を取って大外からぶっ差すこともできたんですが、それが出来ないのが今のクロノ。



それを見抜いてかどうなのか、なんとクロノの後ろからレースを進めたエフフォーリア。脚質自在とか聞いてないって。
そして少しずつ位置を上げ、最終コーナーでクロノの前に立ち、完全に進路を塞いだのです。
そしてコーナー回り切ってからもっかいちょっと外に膨れさせてまだクロノの末脚着火を遅らせたんです。
怖いよ…ほんとに23歳ですか…?


こうなったら普通は着外に沈むんですが、クロノはギリギリまで加速して3着。やっぱり強かった。


そして、このレースで最もヤバいことしてるのがディープボンドくんなんです。

なんか中盤からずっと強めに追ってるんですよね、和田ジョッキー。

で、4コーナーで馬群が開いたから無理やり進路を内に取り、前にタイトルホルダーとアリストテレスがいたため、そのままではラチが開かないと思った和田さんが進路を外、つまり左に取ります。

ところがタイトルホルダーが右ムチ打ってんのに左にヨレて右が空いたんですよね。なので左に進路を取ったボンドはタイトルホルダーに挟まれる形に。


外からはエフフォーリアも来ていて、接戦になりましたがエフフォーリアが勝利。
追い出すタイミング待っとけばワンチャンあったんじゃないかな…って思う2着でした。でも瞬時にあの判断できるジョッキーも貴重。あれは仕方ないですね。


勝ったのはエフフォーリア。
横山武史騎手は前日にエフフォーリアの弟ヴァンガーズハートのデビュー戦で油断騎乗してしまい、1月の愛知杯の週は騎乗停止処分。
鹿戸厩舎は前日に所属馬ベストアクターが予後不良になり、苦しさの中の勝利となりました。




ホープフルステークス 〜英雄の後継者へ〜

前々日に有馬を制しノリにノっていた横山武史は、その勢いで年の瀬のGIを2連勝してしまうのでした。

何者なんでしょうね、ほんとに。


まあ、このレースは1番人気コマンドラインがディープインパクト産駒の良さを潰すレベルのドデカ馬体重だったことと、サトノヘリオスが中1週で疲れてたこと、キラーアビリティがそもそも能力が抜けてたことが勝因ですが、にしても騎乗のそつがなさすぎる。

あとスプリンターズステークス勝てば中山競馬場のGI完全制覇らしいですよ。来年には制覇してそう。


有馬の時はヴァンガーズハートの油断騎乗の件もあって申し訳なさそうにインタビューしていた横山武史騎手でしたが、今回は笑顔。良かったです。


キラーアビリティ自体も、父ディープインパクトから受け継いだ強さを発揮していました。このまま行けばクラシックでも本命候補になるかも。


ルメールに始まり、福永に終わるかと思いきや横山武史だった一年。
これから日本競馬界の勢力図がどう変化していくのか。そしてエフフォーリアはどこまで勝ち続けられるのか。今後も期待したいです。



あとがき

いざ書き出すと止まらないですね。
これでもセントウルステークスと京都ハイジャンプと阪神カップとなんやかんやを削ってますからね。


自分もここ1年で競馬にハマった者ですが、ここまで奥が深いスポーツでありギャンブルだとは思いもしませんでした。9割スポーツとして見てますしね。


今後も売上が落ちないまま、もっといい馬が生まれ続けて、引退馬も伸び伸び過ごせる環境が作られていったら嬉しいですね。

そして、今競馬を見ている皆さんが、数年後も変わらず競馬を楽しんでいて、ふとした瞬間にこの記事を思い出して、「こんなことあったな〜」と振り返る場所になっていたらいいなと思います。


来年も弊noteならびにウマ娘で学ぶ競馬史シリーズやら色々なんやかんやをよろしくお願いします。


企画段階ではありますが、YouTube進出も考えつつあります。編集技術ある方は御指導御鞭撻よろしくお願いしたいです。お待ちしてます。
それでは。 

(↑プレイリスト作ったんでよければ)

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