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佐藤春夫「殉情詩集」より。

「なみだ」

あるは のきばゆ たつけぶり、
あるは をゆく たにのみづ、
あるは わが目に わくなみだ。
これをさだめと さとるゆゑ、
ぜひなきものと 知るらめど、
とめてとまらぬ ものなれば、
せつなや あはれ ほそぼそと、
ひとすぢにこそ ながるらし。

佐藤春夫「殉情詩集」二○頁(詩には適当に空白を挿れております)


眠れぬ夜に雨が降っています。
谷崎の妻に恋をした佐藤春夫。
詩集にはかの人を思うたであろう詩が見られます。
この涙もそういった類いでしょうか。

訳のある涙は、まだ幸せだと思うのです。
人を恋う涙はなお。

こんな夜は、本があって良かったと思います。
さて。
もう少し読みますか。

それにしてもよく降る雨です。
誰が哭くやら。


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