見出し画像

手術台にのぼった後に、手術中止になった

手術をする予定だったものの、中止になるという変なことがありました。
病院に行く上での教訓があるような気がしたので共有します。

経緯

まず、ことの始まりとして顎下にニキビができました。2年前くらいのことです。普通はすぐ治るのですが、なぜか非常に治りが悪く、3ヶ月くらい炎症が続きました。その後皮膚科に相談して、なんか強めの塗り薬をもらって使ったところ、炎症は治りました。

しかし、ニキビがあった場所にしこりのようなものが残り、半年くらい経ってもそのしこりが取れませんでした。
そのことを再び皮膚科に相談すると、「定義上腫瘍なので手術で取ることができる」と言われました。手術という言葉の響きが怖いので躊躇してましたが「腫瘍が大きくならないとも限らない」と言われ手術することに決めました。

とはいえ、一抹の不安も。メスを入れるって本当に大丈夫なのかなと。
そこらへんのリスクを丁寧に説明してほしいと思い、皮膚科の先生に相談をしようとしたものの、忙しそうな先生は時間を使って説明はしてくれませんでした。「手術の痕が残るのでは?」と質問した時の回答は「必ず残ります。でも首は目立ちにくくなります。」とだけ淡白に説明されました。
「まあ、そんなもんか」と思い、手術の日程まで悶々と過ごしました。

そんなわけで手術当日。
手術の担当医は、普段の皮膚科の先生ではなく、大学病院から来た(おそらく)外科の先生。精神安定剤的な薬を飲んで、手術用の服装に着替え、手術台に寝ました。

なんとなく空気か変だなと、感じたのは外科の先生が腫瘍の位置を確認した時。「ここが腫瘍であってる?」と聞かれました。口には出しませんでしたが、先生的には「なんか小さくね?」という感じだったのでしょうか。

その後、先生が「今から麻酔を注射します。大丈夫ですか?」と僕に聞きました。YES以外の回答は誰も想定していないはずなのですが、ずっと悶々としていたので、せめて納得してから手術を受けたいと思い。

「なんで手術することになったのか、自分でもよくわかってないんですよね。」と切り出しました。看護師の方々も、外科の先生も、僕も「何言ってんだコイツ???」という感じでしたが、そんなことを言う患者に注射を打つのはいろんな意味でキツいので、先生が色々説明をしてくれました。

以下、戯曲風に外科の先生と僕の会話を記述します。

手術台でのやり取り

患者(僕)は手術着一枚で、手術台に仰向けになっている。
ゴム手袋をつけた先生は患者の首元の小さなしこりにマジックペンでマーキングをしている。その様子を、看護師2人が見守っている。

先生「今から麻酔を注射します。大丈夫ですか?」
患者「なんで手術することになったのか、自分でもよくわかってないんですよね。」

何言ってんだ・・・? という空気が手術室に満ちる。

先生「どういうこと?」
患者「皮膚科の先生に手術した方がいいって言われ、なんとなくOKしてしまったんですけど。本当に手術した方がいいのかなって。」
先生「うーん。なんで手術しなくてもいいと思うの?」
患者「メスを入れるってことはそれなりにリスクがあるじゃないですか。別に腫瘍が大きくなっているわけでも、痛くなってるわけでもないので、わざわざ取ることのメリットがちゃんと理解できてなくて。」
先生「うーん。でも段々大きくなってくるかもしれないよね。」
患者「でも、少なくともこの半年間は大きくなってないんですよ」
先生「え、そうなの?」
患者「そうです。」
先生「うーん・・・あなたのケースの場合”粉瘤”っていう腫瘍のケースが高いと思ったけど、粉瘤だったら大きくなるんだよね。」
患者「あ、そうなんですね。でも、少なくとも僕の体感では小さくも大きくもなっていないですね」

そこから、顎下のしこりができた経緯を先生に説明した。

先生「なるほど・・・そういう経緯ね。でも、状況的には粉瘤の可能性は否定できない。本当にほぼないけど、悪性腫瘍つまり癌の可能性とかも全くないわけではないから、取ってしまうのも手だと思うけど。」
患者「なるほど・・・」
先生「なにか気になることがあるの?」
患者「・・・僕、ケロイド体質なんですよね」

一気に空気が変わった。物分かりの悪い患者を説得しないといけないという気だるいシチュエーションではもはやなく、事情を聴取しないといけない空間になった。

先生「なんでそう思うの?」
患者「たとえば、ここ、手にある傷とか、全然治らないんですよ。」
先生「たしかに。ここだけ?」
患者「あと、こことか。こことか。」

患者は自分の腹や足の傷跡をいくつか指差す。

先生「この傷は元々あった傷と同じ大きさなの? 大きくなったりしてない?」
患者「あ、ケロイドって言いましたけど、厳密に言うと肥厚性瘢痕ってやつだと思います。大きくなったりはしてないです。」
先生「そうだね。」
患者「メスを入れたら結局それがまた瘢痕になるわけじゃないですか。リスクとコストとメリットが釣り合ってないような気がして。」
先生「よくわかります。・・・じゃあ、この首のしこりも瘢痕なんじゃないかな?」
患者「・・・え、そうなるんですか?」
先生「ないことではないです。そういう体質の人は、皮膚の炎症に対してコラーゲンを過剰に生成してしこりとして残ったりしてしまうことがあります。若い人だと、例えばニキビとかでも肌の痕が大きく残る人がいるでしょう。」
患者「なるほど」
先生「だから、このしこりも瘢痕の疑いを強く見ることになります。」
患者「だとすると、手術をすると瘢痕を取るために瘢痕を作ることになって全く意味がないのでは。」
先生「全くその通りです。」
患者「・・・瘢痕ではないって可能性は」
先生「あります。これから大きくなったら瘢痕ではなく粉瘤の疑いが強くなりますし、そうだったら取らないといけません。瘢痕であれば小さくなっていきます。」
患者「半年間大きさは小さくなってないので、瘢痕ではないってことにはならないんですか」
先生「瘢痕は半年ぐらいで消失すると一般には言われているけど、私の体感的には若い人だと2年くらいかけてゆっくり消失していくケースもあります。体質によりますけど。万が一、2年経っても大きさが全く変わらなかったら今度は瘢痕でも粉瘤でもなく繊維腫を疑います。」
患者「繊維腫」
先生「ニキビのように見える腫瘍です。今の話を聞いていると可能性は低いですが・・・」
患者「・・・」
先生「手術、延期しましょうか。」
患者「延期って、具体的には」
先生「半年くらい様子を見ましょう。小さくなっていたら瘢痕だから手術しません。大きくなっていたら粉瘤だと判断して取りましょう。」
患者「わかりました。そうしましょう。」
先生「瘢痕の改善に効果があるヘパリン類似物質を処方しておきます。」

まとめ

と、こんなやりとりを手術台の上でマジでしてました。
どんな医療行為もリスクとコストをメリットとの天秤にかける必要があると思いますが、素人ではその天秤に何を乗せればいいのかよくわかりません。
お医者様と丁寧に相談して、納得感を持って医療行為を実施するべきだなと思いました。
流れと雰囲気に流された治療はやめましょう。
正しく天秤にリスクとコストが乗っていないかもしれません。

とにかく、(親身な)医者に相談!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?