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誘う者・誘われる者

前回、闇鍋人狼では野良マッチを実装せず代わりにゴーストマッチを実現したという話をしました。既に知っている人同士で遊ぶものと割り切ってしまった以上、遊ぶ相手を探すのが大変という問題は依然として解決していません。

ゲームの内容さえ面白ければ勝手に卓は立つのかといえば、そんなことはありません。ゲーム側でできることに限度はあるものの、少しでも助けになるよう工夫を凝らすべきです。

卓が立たない、あるいは一緒に遊ぶ友達がいないというのはそもそもどういう問題なのかを掘り下げ、それに対し闇鍋人狼がどうアプローチしたか(またはできなかったか)を紹介します。

なぜ卓が立たないのか?

闇鍋人狼に限らず、マルチプレイのゲームを皆で遊ぶ状況は成立しにくいです。原因は主に2つあります。

  • きっかけがない

  • 誘う側がリスクを負いがち

きっかけがない

よくマルチプレイのゲームで言われることとして「一緒に遊ぶ友達がいない」という話がありますが、真意が別で隠れているのではないかと思います。

正確には「誘ったらギリ一緒に遊んでくれそうな友達はまあいるっちゃいるんだけど、ノーコンテキストでいきなり声をかけられる温度感ではない」という場合が多いのではないでしょうか。

例えば学校で同じクラスだった友達とか前職で一緒に働いていた同僚とか、昔よく遊んだ友達を今急に何かの遊びに誘うことは可能なはずです。連絡先さえ分かれば「面白いゲームあるけど一緒に遊ばん?」と一言送るだけです。

これを送るだけ

ただ、いきなり何の文脈もなく送るのはちょっとハードルが高いですよね。送られた側の立場に立ってみても、もし実際にもう何年も合ってない友達から何の脈絡もなくこういうメッセージが送られてきたら怪しい勧誘とか営業ノルマか何かを勘ぐっちゃいそうです。

急に来たらちょっと怖い

これがもし、「共通の友達の結婚式で久しぶりに会って、二次会でゲームの話で超盛り上がった翌日」に送られてきたものなら全然怖くない。この場合、たまたま結婚式で会ったことがきっかけになりますね。

誘う側がリスクを負いがち

一般的に、卓が立つときは誰かが誰かを誘う、というところから始まります。また、これらの人数比は誘う人の方が誘われる人より少ないでしょう。図にするとこんな感じです。

正確に計測したわけではないので勘ですが、おそらくこんな感じでしょう。自分から誰かのことを遊びに誘うっていうのは、誰かに誘ってもらって遊ぶのよりハードルが高いですよね。

この「ハードルが高い」というのは「内包しているリスクをなんとなく予測できる」という状況だと思います。誘った相手がもしかしたら

  • このゲームに興味ないかも

  • 最近忙しいかも

  • いま金欠かも

  • 虫の居所が悪いかも

  • 返事が来ないかも

など予測できます。

誘っても断られるかもしれないうえに、仮に良い返事があってもそこから日程調整したりその他諸々のすり合わせが発生したり、もしかしたらドタキャンされるかもしれません。またこっちから誘った手前、自分が途中でやっぱやめたをできないという暗黙の責任もあるでしょう。

誘う側の方が圧倒的に大変なのは明確なので、多くの人が誘われ待ちになるのも自然なことですね。結果的に誘う人の数が少なくなり卓が立たなくなります。

ゲーム側でできること

上記2点について、ゲームを提供する立場でできることを考えます。

まず、きっかけについては新発売やゲーム内イベントなどがそうでしょう。新しいゲームがリリースされたらしいんだけど一緒に遊ぼうぜ、というのはとても自然な誘い文句です。

次に、誘う人が大変という問題ですが、こちらに関してはゲーム内容で解決できることは特にない、というのが正直な結論です。誘っても断れるかもしれないリスクはあらゆる状況で起こり得るし、ズボラだった人が「あまりもゲーム内容が素晴らしすぎてドタキャンしなくなった!」というのも考えにくいです。

直接解決することはできないので、闇鍋人狼では誘う人を支援する・負担を軽減することを考えました。

誘う人の負荷を軽減することでまた誰かを誘ってもらう、または今まで誘われていた人が自分でも誰かを誘ってみようと思ってもらえる状態を目指します。

基本無料

日夜大量のコンテンツが無料で消費できる昨今、せっかく買ったゲームがあんまり面白くなかったというのはできれば避けたいです。これは、自分自身が消費するものはもちろんのこと、他人に勧めるものについてもそうです。

闇鍋人狼はモバイル版を基本無料+アイテム課金で提供しています。これにより、誰かを遊びに誘うとき「無料で遊べるモバイル版もあるから試しにやってみない?」と言いやすくなります。

デザイナがプレイヤを勧誘するための施策は、プレイヤが他プレイヤを勧誘するという視点でも重要な役割を持っています。

ズルオプション

マルチプレイで遊ぶときのオプションで「部屋を立てた人が必ずスパイになる・店員になる」という項目があります。これを使えば、本来ランダムで配役されるはずのスパイを強制的に自分に割り振ることができます。

闇鍋人狼は誰でも簡単に遊べるようなゲームを目指してはいるんですが、正体隠匿系ゲームではあるので、初めてのプレイでスパイを引いてルールもよく分からないままボコされるという状況は起こり得ます。

ズルオプションを使うことで、おそらくゲーム経験が他の人より多いであろうホストの人が一旦スパイを引き取って一通りの流れを見せるといったことが可能です。

また、このオプションがあること自体もゲストの人からは見えていないため、使ったかどうか・それを伝えるかどうかもホストの裁量に委ねられます。

練習モード

闇鍋人狼はストーリーモードがチュートリアルを兼ねているんですが、それとは別に練習モードもあります。ストーリーを読みながらだとどうしても長くなってしまうので、ゲームルールだけをパッと理解したい人のためのモードです。

これはもちろん1人でも遊べるんですが、同じものをマルチプレイの部屋で皆と一緒に遊べます。

実際のゲームでは誰がスパイか秘密で遊ぶんですが、練習モードでは先にそれをオープンにして通しで数ラウンド遊んでみます。これは、よく初めてのボードゲームを遊ぶときにやることを模していて、一回全員で1ラウンド分の動きを手を動かして通しでやってみるというのは理解の助けになります。

誘ってくれてありがとう

卓が立たない状況を整理し、ゲーム内でやったことを紹介しました。どれも多少の助けになってはいるかもですが、やはり誘ってくれる人の存在に比べたら微々たるものです。

もしここまで読んでくれた方で、普段よく誘ってくれてる人に思い当たる節があるなら、改めて感謝を伝えてはいかがでしょうか。

またこれを機に、たまには誰かを誘ってみようかなと思ってもらえたら幸いです。もうすぐ闇鍋人狼のSteam版がリリースされるので、ぜひきっかけとして使っていただきたく、ウィッシュリスト登録お願いします。

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