いろんなことに疲れた日

 今日は何もしなかった。正しい言い方をすれば、できなかった。午前3時にバイトから帰り、着替えすらせずそのまま寝てしまった。体が動かなかった。いつもならシャワーを浴びて、歯を磨いて、その日きた服くらいは洗う。洗濯機がないから手洗いで。

 どうにも体が動かないから、正規の手順で翌日のアルバイトを休むことにした。人生で初めてだった。これほど動けない日は。体調が悪いわけでもない。特別大きな悩みがあるわけでもない。ただ体が動かない。それだけだった。

 何もしないのも暇だったから、映画でも見ようと思った。契約しているサブスクのアプリを開いて映画を漁る。一本決めて再生する。いつもなら面白いと思うはずだが、何も感じなかった。さらに疲れが溜まった気がした。いつもなら疲れた日には銭湯にでも行って、ゆっくり湯船に浸かろうと考えるが、その準備も億劫だった。15時間食事をしていなかったが、空腹にもならなかった。とりあえず、立ち上がって、歯を磨いて、重い体にシャワーを浴びせた。気は変わらなかった。リフレッシュなんてなかった。どうやら外は雨が降っているらしく、窓には次々と水滴が重なる。ガソリンスタンドで洗車するときの車内にいる気分。小さいときは怖かった。

 シャワーを浴びて、少し腹が鳴った。一束だけ残っていたパスタを茹で、同じく一人前だけ残っていた、たらこソースと絡めて食べた。味がしなかった。食べ終わったらまた暇になった。

 布団の上に横になって、読みかけの小説を開いたが、一行さえ読めなかった。

 外が静かになったので、ベランダへ出て、ショートピースを咥えて、マッチを擦った。力が入りすぎて、マッチが折れて、咥えていたタバコを灰皿に乗せ、部屋の中へ戻った。

 たまに何をしてもうまくいかない日はある。今年はそれがたまにではなかったが。でも何もできない日は、初めてだった。最近は大学の実習に、アルバイトにと神経を多方面に使った。アルバイトは掛け持ちしているから、掛け持ちしている本数分内容も違うし、その分神経をすり減らす。午前にアルバイトをしたら、その足で大学に行き、大学の閉館時間まで作業をして、そこからまた深夜のアルバイトへ向かう。そして終電のない中、5km歩いて帰る。その生活が、想像以上に自分の体に負担であったらしい。久しぶりに休みの今日は、今までにないほど動かなかった。

 たまにはこうして何もできない日もあっていいと思った。いつもはいろいろなことを考えてこなそうとして、大きな荷物を背負いすぎていたのかもしれない。パンクして初めて空気を入れすぎていたことに気がついた。今日はそういう日。別の角度から自分を見つめた日。体力ゼロってこういうことを言うんだな。3年前、過労死寸前まで働いてもこうはならなかった。今よりも心の羽が軽かったからかもしれない。今は重いんだな。重すぎるんだな。車が夏タイヤとスタッドレスタイヤに切り替えるのと一緒で、僕もアルバイト時の羽、大学時の羽、プライベートの羽と切り替えられるようにしていきたい。ギアの変更もできるようになって、ある程度行ったらギアを上げて、力を抜いても加速できるような練習もできたらいいな。そう思う日であった。

 何もない文章をこうして書いた今も、思い出すばかりで考えていない。いつも「なんとかする」といろいろ考えて生きていたが、たまにはこうして「なんとかなる」を味わうのもいいと思った。本当は今日もアルバイトを2つして、明日もそうして、それでやっと回せるような状態なのだが、一旦全て忘れることにする。考えないことにする。未来の自分に任せることにする。今の僕は、積載オーバー。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?