7月15日(土)

弁明の余地のないことが、ずっと恐ろしかった。表に立つということは、矢面に立つということで、だからずっとちいさく痛い。ちいさな痛みを逃そうと、大きな盾を揺らすけれど、そのせいで地球が揺れて数千万人が死んだらしい。海の水が大地を包み、人間たちは空っぽになった海の底で暮らし始めた、と聞いた。わたしはもう、「痛い」とすら叫べなかった。わたしの声は、おおきな凶器となって隣の村や町を薙ぎ倒すのだろう。それならと小さくうずくまっている、こともできないわたし。どうすればいいのって、野良犬に聞いたけど、野良犬はわたしの体をすこし食んで、ちぎって、走り去ってしまった。それで、彼らの家族が生きていけるのなら仕方がないかと思った。矢面に立ち続けることしかできないわたしは、大きな言葉でしか話せず、大きな体を今日も持て余す。弁明の余地が欲しい。わたしの、この愛情を、だれか、わかってくれますか。

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