7月19日(水)

誰かがあなたへと書いた手紙の内容を私は知ることがなく、ただあの白い封筒と明記された宛名と、封をする小さくて丸い蝋の形を覚えている。
「愛を、渡しました」と誰かは言った。あの封筒の中身は固く、分厚く、重かったので、私はそれが何だったのかをいつまでも考えている。あいしている、と渡された愛の中身が愛じゃないことが多すぎるこの世界で、あなたが封を開けたとき、その細い指先が傷ついてしまわないかということを、わたしは絶えず気にしてしまう。どうか、そんなことで傷つかないで、と思う。あなたの花園に雨が降り、土が濡れて、新しさが芽吹くとき、それこそがあなたにとっての愛であればいい。なにも受け取らなくたっていいよ。あなたには、あなたの庭があるのだから。だれにも、わたしにだって、そこに立ち入る権利などないのだ。草花を踏み躙り、土を掘り返し、醜く下品な薔薇を植えるようなことを、私は私に許さない。
あなたは、あなたの強かさと儚さをたずさえながら、歩いていけばいいと思う。わたしはただそれを眺めていることにする。

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