7月10日(月)

雨の降る夜、ひたすら歩く。傘はない。傘は、遠くの誰かに引き取られていった。ドナドナ。皮膚が、雨合羽代わり、になって、臓物を守り抜く。守り抜くって気概が聞こえる。雨粒の、肌に降り注ぐ時の小さな痛み。多数の痛みが、打鍵する。ソシラファド、ミのシャープだ、ってあなたは言う。「ソシラファド、ミのシャープ」。ここで雷鳴ずどーんと鳴って、ふたりでけらけら笑う。打鍵されるだけの生き物です、わたしたち。雨に打たれる打楽器のように間抜けな音をだせる。音階で喋ってみようって、言って?言葉なんかじゃなくて、音楽を鳴らして欲しいって、言ってくれさえすればわたし、ずっと楽器のままでいられる、いつまでも。

誰かがいれば、雨の夜はこんなだろうなって思う。窓の外を眺めながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?