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最近見た、美しいものたち。

ふと、行きつけの歯医者で診療台に座り目の前の壁を眺めていた。
扉の大きさに凹んだ壁の角、間接照明と通常の照明とでなんとも美しい三段階の影が出来ていた。
同じ濃度の不透明度30%くらいのレイヤーが見事に三段階、目に見えるようだった。

単純に、美しかった。

医療機関によくある真っ白ではない白基調、の例に漏れずそこも目に刺さらない白をしている。
輪郭の柔らかな、それでも確固たる直線を輪郭にもつ影のなんと美しいことか。

オフィス街のビルによくある、屋根がガラスで中庭のような中空がエントランス上部まで突き抜けていて、雨風は防ぎながら陽光は取り入れるタイプの天井。
その直下の床にできる、窓枠の直線。

艦船の舷に搭載された救命具やボートなどの支柱が通路に落とす影。

単純な色名に落とせない、夕焼けの空の色。

隣の人の緩やかな弧を描く爪。

丁寧にビニール袋へ入れられた傘の隣で、雫を宿したままの傘の先、濡れた金属のきらめき。

東京タワーを塗りつぶす逆光を伸ばして、写真に撮るにはあまりに不利な、だからカメラを置いてただただ見つめ続けるお台場の、いつもの船だまり。

考え抜かれた先に現れる、もうそこにしか引けない一本の線。

これらのものを、もう二度と見ないでいいと思えたら。

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