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【学科・製図】設備の基礎知識

空調方式の解説
空調方式は,「中央方式」と「個別方式」の2つに大別されます.「中央(熱源)方式」とは,「単一ダクト方式」のように専用の機械室があり,そこにボイラー(熱源)や,冷凍機(冷熱源)を設けるタイプで,分かりやすく説明するとボイラによって温水を作り,その温水をコイルに流し(加熱コイルや温水コイルという),その加熱コイル(温水コイル)に取り込んだ外気を送ることで温風を作り,その温風を送風機によって施設全体に送り出して暖房します.冷風を作る場合は,冷凍機で冷水を作り,その冷水をコイルに流し(冷却コイルや冷水コイルという),外気を取り込んで冷却コイルにあてることで冷風を作り,その冷風を送風機によって施設全体に送り出して冷房します.学科試験では,↓のような知識が問われます(3番が正答枝です).

単一ダクト方式の略図

↑のように,空調機の中には,外気(=新鮮空気)と環気(=空調済みのリターンエア)が取り込まれ,エアフィルターで浄化され,冷却コイルや加熱コイルを通すことで冷風・温風を作り,それを送風機で各室へと送り出すという仕組みになっているということだけ理解できていれば十分です(温風を作る場合は,加湿器によって湿度調整してから室内へ送り出します).このように,空調機から温風・冷風のような空気を各室へ送風する方式を「全空気方式」といいます.「全空気方式」の場合,ダクトを通じて施設の各階・各部屋・各部分へと送り出されるため,ダクトスペース(DS)が必要になります.

ちなみに,「全空気方式」のうち,温風・冷風を1本ダクトで送り出す方式を「単一ダクト方式」,温風・冷風をそれぞれ別々の2本ダクトで送り出す方式を「二重ダクト方式」といいます(二重ダクト方式の場合,冷風と温風を別々に送り出さなければならないため送風エネルギーのロスが大きい).

製図試験で求められる知識

尚,単一ダクト方式には,定風量方式と変風量方式(省エネ効果大)の2種類があります.

また,現在は,中央方式でも,機械室のボイラーで温水を作り,圧縮機で冷水を作り,それらを温水コイル,冷水コイルを通して施設全体へと送り出し,各階・各室,各部分にある空調機の中で温風,冷風をつくるタイプがほとんどです.この場合,空気ではなく,温水,冷水を送り出すため「水方式」と呼ばれます.その代表例が,皆さんが学科試験でも勉強する「ファンコイルユニット」です.

機械室で作られた温水,冷水が部屋ごとに設置されたユニット内に送り込まれ,部屋単位で空調します.また,学科試験で勉強するように,「ファンコイルユニット」の場合,新鮮外気を直接取り込めず,部屋内の空気を吸い込んで,それを冷風・温風に変えて冷暖房するため,別途換気を行わねばなりません.

他の空調方式の場合,新鮮外気を吸い込んで,それを温風・冷風に変えて吹き出すため,換気効果もあります.ただし,毎回外気を吸い込んで冷風,温風に作り変えていては非効率的なので,実際は,空調済み部屋の空気(その空気を環気(=リターンエア)という)も一部吸い込み,それを新鮮外気とミキシング(混合)させた空気を空調しています.同じ「ファンコイルユニット」でも,「全空気方式」と「水式」の中間のような方式「空気-水方式」もあり,「ダクト併用ファンコイルユニット方式」と呼ばれています.

上述したように,「ファンコイルユニット方式」は,外気(=新鮮空気)導入が別途必要となりますが,その外気を専用機械室からダクトを通して各階・各室・各部分へと送り込む方式が「ダクト併用ファンコイルユニット方式」です.その場合,外気を直接,ダクトを通じて送り出すだけでなく,多少空調した空気を施設全体へ送り出し,各階・各室・各部分ごとにその空気を「ファンコイルユニット」内に取り込んで空調したりします(コチラ).製図試験では,「外気処理空調機(通称/外調機)+ファンコイルユニット方式(実例は,コチラ)」として課題文で要求されます(平成29年).以上が,中央方式の解説です.

次に,「個別方式」について解説しましょう.
「中央方式」と「個別方式」の違いを一言でいえば,中央方式は,「熱源が集中して設置される方式」であり,個別方式は,「熱源が分散配置される方式」となります.

個別方式の代表といえば,「パッケージ方式」で,次の2種類があります.

ダクト接続型
→階ごと,ゾーンごとに空調機械室を設け,そこに置いた空調機よりダクトを通じて,各室へ温冷風を送り出す方式.

天井カセット型(通称/天カセ型 こんな感じです
→分かりやすく言えば業務用エアコンのようなものです.家庭用エアコンのように,室外機と室内機で構成されます.1台の室外機に,複数の室内機を接続するマルチユニット方式があります(10台程度接続可能).室ごとの個別制御に適しており,室外機と室内機だけで空調するため,機械室も不要です.

※ダクト接続型も,天井カセット型のいずれも,バルコニーや屋上などの屋外に,室外機置場が必要となります.尚,天井カセット型は天井高が4mを超える部屋には,吹出し到達距離不足が生じるため不向き.尚,現在は,「空冷ヒートポンプパッケージ方式」が採用されるケースが多く,ぶっちゃけ,個別方式=空冷ヒートポンプパッケージ方式(ダクト接続型と天井カセット型の両タイプあり)と覚えておけばよいでしょう.以上が,空調方式の解説となります.

最後に,冷却コイルへと送り出す冷水は冷凍機(圧縮式と吸収式があり)によって作り出すわけですが,そのしくみは,こちらを参照して下さい .

【ここからは余談です.参考程度に読んでみて下さい.】
○アネモ(吹出口)について
軸流吹出し口とふく流吹出し口の違いはコチラ

○プールの空調実例について
温水プールの空調計画の実例はコチラ

圧縮式冷凍機について
→圧縮器の方式によって呼び名が異なる. ターボ式は,遠心力により圧縮する(=回転式).往復式は,ピストン運動による圧縮する(=容積式).スクリュー式は,往復式(=容積式)でありながら, ターボ式(=回転式)の特徴もあわせ持ち, 高効率,コンパクト,長期連続運転性などの特徴がある. スクリュー式の解説は,こちら

ヒートポンプの種類
→ヒートポンプには,大きく分けて次の2種類がある.
 1.ヒートポンプエアコン 
  →家庭用エアコンのように冷風や温風をつくる.
 2.ヒートポンプチラー
  →冷水,温水をつくる.
※両者の違いは,凝縮器,蒸発器の中を水が通るか,空気が通るかの違い. 水が通れば冷水・温水をつくり,空気が通れば,冷風・温風をつくれる.

水冷式,空冷式って何?
→早い話,クーリングタワーを使って外気に熱を放散する(捨てる) のが「水冷式」,室外機などのファンを使って空気(外気)へと熱を放散するのが「空冷式」. ちなみに,「水冷式」の場合は,冷凍機のみです(=冷水しか作れない).

さらに余談
→空冷式の場合,冬は室外機から冷風が吹出す(夏は温風が吹出す). その際,室外機が冷えて内部の蒸発器に霜がついて冷凍能力が低下する.そこで,今は自動的に霜取運転(デフロスト運転)を行うが, その間は,部屋の中が暖かくならないのが問題となる.

中央管理方式と個別方式の違い
近年,中央管理方式と個別方式の形態は多種多様にわたっており,両方式の境界が判然としなくなっているが,一般的に,中央管理方式とは,各居室に供給する空気を中央管理室等で一元的に制御することができること方式を言う.個別空調方式とは,中央熱源を持たずに,熱源と空気調和機とが一体となっているか,室内ユニットと熱源ユニット(室外機や室外ユニットと呼ぶことがある)を冷媒配管で接続して,各々の機器単体で運転制御が可能な空気調和設備をいい,パッケージ方式と呼ぶこともある.

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