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【学科】パルテノン多摩(用途/複合文化施設)

前回からの続き【建築作品を学ぼう♪】シリーズ

今回は,東京都多摩市にあるパルテノン多摩.
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■解説

パルテノン多摩

パルテノン多摩(設計/曽根幸一・環境設計研究所)は,多摩ニュータウンという地域のシンボル的存在の複合文化施設.竣工から35年が経過し,老朽化とともに,各種設備の故障リスクの上昇や,各所の仕上げの劣化が進んでいた.大ホールと貸会議室が隣接するが防音性能が低く,音漏れなどによる使用制限が互いに発生していた.また,大ホールは,クラシック音楽に優れた音響性能をもった劇場であったが,演劇系の利用には向かず,ホールの稼働率は低下していた.

そこで,元の姿に復元するだけでなく,従来にはなかった新しい市民ニーズにも応えられるような保存・再生が求められた.

改修の設計は,古谷誠章+NASCA・東畑・森村設計共同企業体.

改修前は,大ホールや小ホール等が機能別に壁で区画されていたが,構造的安全性を確認した上で,それらの壁をとっぱらい,ワンルームのように連続した一つながりの空間とした.それによって,別々の目的で来館した利用者どうしがさりげなく出会い,互いの様子が可視化されることで新しい関係性がゆるやかに育まれていくような計画となっている.

このように異なる機能を有する空間をつなげることで,利用者どうしの視覚的な繋がりを誘発する手法は,武蔵野プレイス(コチラ)という図書館建築でも試みられ,成功している.

また,大ホールはクラシック演奏だけでなく,音質を維持しながら演劇的用途にも対応できるよう,既存壁の上から木質折板や音響反射版を新設している.

大ホール
客席後方をかさ上げし,客席スペース全体を急勾配にすることで,後方からも鑑賞しやすくなった画像左は,改修の設計者である古屋氏

↑の大ホールは音響性能のさらなる改良に加えて,舞台機構や設備の刷新,舞台を鑑賞しやすいように客席の間隔を広めたり,後方の客席をかさ上げして客席スペース全体の勾配を急勾配にしている.トイレ回りのバリアフリー改良も行い,現代社会のニーズに応えるホールに改修している.

その他,建物全体を全面的につくり変えてしまう改修ではなく,それぞれの空間の要となる場所に,既存空間を活かしながら局所的に新な要素を付加しながら再生されている.新旧の要素の調和が非常に心地よい.

設備などのインフラも完全に隠蔽させず,将来的なメンテンナンス性にも配慮して,デザインされている(↓画像).天井のダクトや配管はむき出しにしつつも,一部,鏡張りにすることで,天井に大ホールに出入りする観客たちが映し出され,鑑賞前後の高揚感が空間全体に広がる工夫がなされている.

ホワイエとロビーを区画していた既存の間仕切り壁を撤去,連続した空間に改修.
↑画像の絨毯と大理石の仕上げの境界にその間仕切り壁はあった.
大ホールの壁は,既存石壁の上から三軸織物で包み込むように仕上げている.

■まとめ【サマリーキーワード】

 ✅多摩ニュータウンのシンボル
 ✅既存壁を撤去し,可視化
 ✅新旧の要素の調和が心地よい


■建物概要(製図試験対策用)

 【建 物 名】多摩市複合文化施設(パルテノン多摩)改修
 【竣  工】1987年 竣工/2021年 改修
 【階  数】地下1階 地上5階(建築基準法:地下4階 地上2階)
 【構  造】鉄骨鉄筋コンクリート造

今回は以上です♪
次の建築作品へ続く.

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