【学科】ぎふメディアコスモス
前回からの続きです.
まずは,コチラ↓のYou Tube動画(約19分)をご覧ください.1.5倍速や2倍速での視聴で構いません.
ぎふメディアコスモス(岐阜県,2015年,伊東豊雄)は,岐阜市の中心市街地に建つ図書館を主とした複合施設.周囲に圧迫感を与えることを避け,地上2階建てとして建物のボリュームを抑えている.1階には,書庫や展示ギャラリー,多目的ホール,市民活動交流センターがあり,2階は図書館部門の開架閲覧エリアとなる.平面図は,コチラ.
2階の開架閲覧エリアは壁のないワンルーム空間となっており,波打つ木造の格子屋根で覆われ,天井高は約6m.木造格子屋根からは複数の「グローブ(直径8〜14m)」が吊り下げられ,その中は明るく快適な空間となっており,同時に,様々な閲覧コーナーや受付カウンターといった領域をつくり出している.
開閉式の換気口と,天窓,グローブといった独特の構造により,快適な読書環境と省エネを目指している.近くに流れる川から地下水を取り込み,床下を循環させて冷暖房に利用し,室内の空気は壁のない内部空間(各階ともほぼワンルーム空間)をゆっくりと循環する.暖まった空気は夏場は換気口を開いて外に逃し,冬場は換気口を閉じ,グローブの中を自然循環させることで,快適な温度を保つ.湿度調整は,別途,デシカント空調により,行っている.
天窓から外光を取り入れ,照明は極力,少なくし,ソーラーパネルや集熱パネルを利用することで,従来の同程度の施設に比べ,消費エネルギーを1/2に抑えるシステムとなっている(1990年比).
これまでの公共建築では,断熱性や空調効率を高めるため,内部空間を壁や天井で囲い,外部に対して,閉じることが常識だった.この施設は,その常識を覆し,外部に開かれたテラスを3方向に設け,外気と緩やかにつなげている.そのため,来館者は,新鮮な外気の中で読書を楽しむことができる.外気に開かれた大きな家の中に,グローブを中心とした小さな家があり,その小さな家を輻射冷暖房する構成となっている.小さな家には,壁がなく,上部に吊り下げられたグローブしかないため,誰もが気軽に出入りできて,かつ,その中にいると優しい一体感を感じられるような空間となっている.それが,人と人とのゆるい交流を誘発しやすい雰囲気をかもし出している.
令和2年の一級建築士「学科」試験で問われた知識です.
【解説】
ぎふメディアコスモス(岐阜県,2015年,伊東豊雄)は,施設最大の特徴の一つといえる木製格子屋根を持つ「市立中央図書館」や,活動・発表の場となるスタジオ等を備え,岐阜市の市民活動を積極的に支援する「市民活動交流センター」,展示や発表会,講演会やセレモニーなど多様な使い方ができる「みんなのホール」,「みんなのギャラリー」の他,国際交流の場となる「多文化交流プラザ」等からなる複合文化施設である.
【解答】○(正しい記述である)
続く
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