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【日本建築史】妙喜庵待庵「侘びの精神」と「寂びの心」

前回からの続きです.室町時代に金閣寺に代表される北山文化,銀閣寺に代表される東山文化が起こり,その特徴は,公家と武家,さらに,禅宗とが融合されたものでありました.それが,今の日本の美意識と原点となっており,いわゆる「侘(わ)び寂(さ)び」の精神として今に受け継がれています.

「侘び」は貧しさや,自分の思い通りにならない状況を受け入れ,そのプロセスを楽しもうとする精神的豊かさを表しています.

「寂び」は「古さや静けさ,朽ちていく姿に美しさを見出す心」です.僕が幼い頃から影響を受けてきた画家の稲邑嘉敏(いなむら よしとし)先生が以前,クシャクシャにした英字新聞の上で,朽ちていく玉ねぎの姿を絵画表現されている作品を見て,大きく心を揺さぶられました.英字新聞が消費社会を表し,その中で朽ちていく玉ねぎの姿に「生命力の清々しさ」や「周りに流されることなく懸命に生き抜く植物の愛おしさ」を感じたからです.その絵からは「生きる」ということの本質的な美しさが描かれていました.

六本木にある国立新美術館で毎年,開催される「光風会展」を訪れ,稲邑先生の作品を鑑賞することが年に一度の楽しみでしたが(コチラ),コロナ禍になってからその感動も奪われてしまいました.

話を戻して,この「侘びの精神」と「寂びの心」は,その後の安土桃山時代に千利休の茶の湯によって一世を風靡し,建築にも大きな影響を与えることになります.それが一級建築士「学科」試験に出題される茶室建築です.

【計画科目/問題コード27021】
妙喜庵待庵(大山崎町)は,16世紀に造立された,利休好みの二畳の草庵茶室である.

【解説】
「妙喜庵待庵(1582年頃安土桃山時代,京都府)」は,千利休が建てた茶室であり,現存する最古の茶室でもある.茶室の入隅柱を塗り消し,床の間は壁も天井も入隅を塗り回した「室床(むろどこ)」を持つ利休好みの二畳の草庵茶室である.草庵(そうあん)とは,茅葺(かやぶ)きや藁(わら)葺きの屋根を持つ,粗末で小さな家のこと.

【解答】〇
 続く

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