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故郷にて④

 5回目のコロナワクチンを受けた。

 今日、ロシア人の友人と、日本人とロシア人のメンタリティについて少し話をした。日本人の間には条文化されていないルールがあり、時にルールよりもその場の雰囲気が重要視されることなどを説明した。興味深そうに聞いてくれた。

 ロシア人の場合、「自分の特にならないルールは基本的に無視する」らしい。これはモスクワで確かにひしひしと感じていたことではある。行儀良くはないが、非常に自由で、時にうらやましく思う。それに、モスクワでは、無秩序な感じは全くしなかった。ほとんどの人に常識があるように感じたし、基本的に快適だった。

 ロシア人と日本人の精神構造は、アメリカ人と日本人、中国人とアメリカ人、のくくりと比較すると、より似ているような気がする。もちろん全く違うところも多いけれども。時間に圧倒的にルーズなところとか、約束を頻繁に忘れるところとか、あまり自分が悪いと思わないところとか。

 今回の戦争についても少し話をした。私が「今回のロシア=ウクライナ戦争を日中戦争に重ねて見てしまう」という話をすると、彼は「確かに似ているところはあるかもしれない」と賛同してくれた。戦争開始直後、容易に攻略しうると考えていた点、そしてそれがうまくいかなかったときの次の「勝利」の目標が定まらない点…

 とはいったものの、第一次世界大戦もそのような感じであったような気もする。つまるところ、短い期間で終わる戦争の方が珍しいのだと思う。始めるのは容易かもしれないが、終えるのは簡単ではない。歴史上どの戦争を振り返っても、簡単に、あるいはきれいに終わった試しなどない。損をすればするほど後に引けなくなるのは、なにも会社や個人に限った話ではない。

 彼には、「もし大統領選挙の後になにかもっと悪い変化がロシアで起こったら、どんな手段を使ってもあなたを日本へ連れて行きたい」と伝えた。彼は「ありがとう。でも、私は祖国から逃げたくない」と言っていた。彼はまだ22歳と非常に若い。今回の戦争がいつ終わるか(悲しいことに)不明だけれど、この戦争で背負わなければならない罪過は、70代の大統領でも、彼を支持している層であるといわれる60代以上の人間でもなく、彼ら10、20代の若者が背負わなければならないということだけは確かである。彼らが選んでわけではないのにもかかわらず。そのことに、吐き気がするくらい、怒りを感じる。

 いまは祈ることしかできない。
ロシア大統領選挙まであと二日。

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