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医師は裏切らない

パーキンソン病になる予定がある方がいたら、参考になるかもしれないのでお教えしましょう。「私って、ひょっとしたらパーキンソン病かもしれない」と思った時の対応。

まず、予定がある方は、日ごろから「神経内科」という診療科を標榜している医療機関の情報を集めておくことをお勧めします。収集方法はいろいろありますが、お勧めはアナログな方法。こればっかりはGoogle先生よりも有効と思われる。

「誰誰ちゃんのお父さん(またはお母さん)がそうらしいけど、どんな感じの先生?」「仕事ぶりはわかんないけど、お嬢さんはキチンとしていて成績もよくて、おんなじ塾に通ってるのに家の子とは大違い。授業料同じなのかしら?」なんて情報に埋もれている人となり。皆さん、心当たりあるでしょう?

ところで皆さん、B先生を知っていますか?

私が初めて「手足の震え」が発症した時に、働いていた病院に勤務していた神経内科医のB先生ですよ。患者さんに優しくて、話をよく聞いてくれる先生と、上々の評判。ところが看護師の評判は真っ向真っ二つ。「穏やか、優しい、丁寧」と、「時間にルーズ、仕事が遅い、なあなあですまそうとする」。と、まあ、いい医師ではある事は間違いないけど、一緒に働くと無駄に仕事が増えるタイプ。

そして皆さん、T先生を知っていますか?

B先生と一緒に働いていた先生ですよ。T先生同様、患者さんの評判は上々。ところが、看護師とは挨拶もしない人。皆さんの多くはT先生と一緒に働かないから関係ないとお考えでしょうが、念のために注意しておきます。

T先生に挨拶をしてはいけません。無視されて、朝から気分が悪くなります。更に「T先生、おはようございます。」なんてことを言ったら、鍛え上げたガン目で睨まれます。更に、「指示まだですか?」なんて、うっかり聞こうものなら、眼も合わさずに腹式呼吸の深いため息とともに長い指で「指示簿」を指されます。こちらが「まだですか」を言いたくなる絶妙のタイミングで指示を書く能力を備えています。

電子カルテが導入された時に、異様なくらいに盛り上がり狂喜乱舞したのは神経内科のスタッフご一同様。T先生の隣に居ても、全てのやり取りはPCの中で終了。その病棟だけがなぜか「コメント」のやり取りが多くて、使用制限がかかったが大ブーイングで即却下。

その時、スタッフが口々に言っていた「T先生は何で臨床やってんだろう。検査好き。診断確定好き。人嫌い。基礎研究に行けばいいのにねえ」。私はその言葉を聞き逃さなかった。



わたしが「あらあ?この症状って、ひょっとしてパーキンソン病かしら?」と思って受診したのは、も・ち・ろ・ん、B先生。

B先生は、それほどたいした検査もしないで「これは、パーキンソン病じゃないね。本態性振戦だよ。効くかどうかわかんないけど、薬飲んでみる?」

いただきました!その言葉。そうそう、その言葉が聞きたかったのよ。B先生。

言ったよね!今、言ったよね!「パーキンソン病じゃない」って、言ったよね。診察室で思わずハグしそうになったがそこは我慢。スキップして帰宅した。

その言葉に背中を押され、20年近く勤めた公務員を辞めて北に越し、新しい生活を始めることができた。

それから2年。ろくに効かない薬も「気は心」で何となく効いている気がしていたが、それも限界と察した。

当時の院長に紹介してもらった神経内科センターの医師は、私が診察室に入り数歩歩くのをみただけで「星野さん、残念ですが、99%パーキンソン病です」と言った。

犯罪者が逃走に疲れた時の気分ってこんな感じかな。「ホッ」とした。

そして大倉山のジャンプ台に立ってスッキリ!



パーキンソン病の診断はとても難しいです。初期症状では診断がつかないこともあります。誤診ではありません。私は自分の意思でT先生に受診しなかった。

「人は聴きたいことしか聴かない」なんてフレーズをエッセンシャルマネジメント・スクールを学ぶのは、それから15年後のお話。


パーキンソン病になる予定があるみなさーーん。「医師は裏切りません」。でも、その前に自分を裏切ることはもっとできませんから。マジで。


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